南アフリカランド円相場予想、一目雲下限を維持できるか注目
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。

外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。

国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

為替の仕組み

今回解説していく通貨は南アフリカランド円です。2024年11月にトランプ米大統領が就任以降、じりじりと上値を切り下げる展開となっていましたが、2025年4月に米大統領が相互関税の詳細を発表すると一気に下げ幅を拡大。今後は一段とランド円の下押し圧力が強まる可能性も出てきました。ドル円など他の通貨に振らされる可能性もあり、今まで以上に慎重な取引が求められる場面が増えそうです。では、チャート上でもランド円の状況を確認していきましょう。



下図のチャートはランド円の週足チャートになります。前回の分析(2月5日)からどのような動きとなったかを見ていきますと、4月以降の急落によって前回指摘していた昨年9月安値の7.86円や8月安値の7.60円(いずれもチャート上の丸で囲った部分)をいずれも下抜け。一時は7.26円まで下押す場面も見られました。

同時に2020年4月安値を始点とする上昇トレンドライン(チャート上の黄色実線)も下方向にブレイク。2020年来の上昇トレンドの終了も示唆されています。

次の注目ポイントは2023年5月と2021年11月に下げ止まった7円割れ水準(チャート上の四角で囲った部分)となるでしょう。これ等の水準を下抜けてしまうと2020年からの上昇トレンドの起点となっていた5円台までの下押しも視野に入れた動きとなる可能性があります。

なお、チャート下部に追加した「DMI」でも現在はDI>+DI(下落トレンド)を示唆。また、前回の時点ではトレンドの強さを示すADXが2020年以来の水準まで低下していましたが、足もとでは再び上昇しつつあり、週足ベースではいよいよ下げトレンドが始まったと判断してもよさそうです。



では、今度はより長期的な視点でもランド円の相場状態を確認していきます。下図のチャートはランド円の月足チャートになります。チャート上の黄色実線は週足分析で紹介したものと同じトレンドラインです。

週足分析で今後視野に入る可能性があると述べた2020年の安値ですが、これはランド円の史上最安値でもあります(2020年4月安値の5.61円)。ということであれば過去最安値までの下押しを警戒すべき局面ということになりますが、それを阻止するためには「一目均衡表の雲」が重要なサポート水準になるでしょう。

一目均衡表でみると現状の遅行スパンは価格線とほぼ同水準に位置。転換線は基準線を上回って推移していますが、ここから昨年高値を超えるような反発がなければ夏頃に転換線が基準線を下回る可能性が高まります。さらに価格線は抵抗帯(雲)の下限手前で辛うじて踏みとどまっている状態です。

実は2023年の下落局面時も雲下限がサポートとして機能したことにより、強い売りシグナルとされる「三役逆転」の点灯をぎりぎりで回避したという経緯があります。今回も同様に雲下限が最後の砦となるのか、今後の推移を注目しておきましょう。なお、雲の下限ですが今年いっぱいは7.21円付近での横ばい推移となっています。



最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は日銀の金融政策となります。米国の関税政策を巡って市場全般で先行き不透明感が強まっているものの、市場では日銀の早期利上げ観測もくすぶりつつけています。

南アフリカ準備銀行(SARB、中央銀行)は前回(3月20日)の金融政策決定委員会で政策金利の据え置きを決定。ただ、6人のメンバーのうち2人が0.25%の利下げを支持していたことが明らかになっています。今年のインフレ・経済成長率見通しについても小幅に下方修正されており、5月29日開催の次回会合での判断も注目されます。

一方で、両中銀の金融政策以上に注目しておきたいのが米政権の動き。トランプ米大統領の相互関税によって外国為替証拠金取引(fx)市場全般に動揺が広がりましたが、その後も米大統領の暴走はとどまるところを知りません。

日本に対しては今週開催される予定の日米財務相会談で円安是正がつきつけられる可能性があるほか、自身が第一次政権で指名したパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長に対しても、早期の利下げ要求に応じないとみるや解任を検討しているとの報道が伝わっています。

今後も米大統領の言動次第で価格の大幅変動に見舞われる可能性があり、現状は相場予想も難しい状況です。しばらくは最新の情報などを常に確認しながら慎重な投資判断が必要となるでしょう。

その他のイベントは以下の通りとなります。

今後1カ月の重要イベント

4月23日 南ア 3月消費者物価指数(CPI)

4月24日 日本 日米財務相会談(執筆時点では予定)

4月30日-5月1日 日本 日銀、金融政策決定会合

5月21日 南ア 4月CPI

5月23日 日本 4月全国CPI


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2024年4月23日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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