「7月上旬…大きなリスクがあるのを知らないでやってはいけない」
松井 隆
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットを担当。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたる事業に従事する。

為替の仕組み


第148回「この後の6月の重要スケジュールを知らずにやってはいけない」

でも記載しましたが、6月には様々なイベントがありました。

また、一大イベントの一つでもあった先進国首脳会議(G7)サミット時にはイスラエルがイランを攻撃するなど、予想外の出来事も起こっています。

市場も関税相場だけではなく、地政学リスクを見ての取引にになったわけです。

この地政学相場も、これまでとは違い、リスク回避の円買いではなく、有事のドル買いに動くなど異例の相場になりました。



イスラエルとイランの争いが今後はどのような展開を迎えるかということは、読み解くのが難しい状況です。

仮に再び攻撃が開始された場合に、今月のように有事のドル買いでドル円が上昇するのか、またはリスク回避の円買いに動くかも定かではありません。

特に、米国がどの程度戦争に参入するかも不透明です。

米国が参入した場合は、9000万人のイラン国民が米国に向けて報復攻撃をする可能性すらあるでしょう。

読み解けない中東情勢を置いておいた場合でも、7月の上旬は大きく相場が動く可能性があります。

特に米国発で2つの大きなイベントが控えています。

その中で、おそらく世界中が注目しているのが7月9日に米国の相互関税の上乗せ分の停止期限です。

中東情勢でサミットでの話し合いも中途半端で終わったこともあり、各国ともに交渉があまり進んでいません。

そのような状況であることで、トランプ米大統領はやはりTACOになっているようです。

TACOは「Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビってやめる)」という略語ですが、先週ベッセント米財務長官は9月初旬のレイバーデイまで関税賦課期限を延期する可能性を示唆しています。



関税問題が延期になったとしても、非常に重要なイベントが控えています。

それは、米国では下院で可決された「大きく美しい法案(big, beautiful bill)」の上院での審議です。

同法案を7月4日の独立記念日までに可決をしようと、トランプ大統領は動いています。

下院で可決した通りの法案が上院でも通過した場合は、歳出削減規模が縮まり、財政赤字がさらに拡大することになります。

下院で可決されたときは、米債売りから米トリプル安を引き起こしています。

再び同様の動きになるリスクもあるでしょう。

6月もイベントリスクが高い月でしたが、7月上旬も大相場になることを覚悟しないでやってはいけないでしょう。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2025年6月30日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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