「州知事選の意味を知らないで信じてやってはいけない」
松井 隆
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットを担当。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたる事業に従事する。

為替の仕組み


先週11月4日に米国のニュージャージー州とバージニア州で、それぞれ州知事選が行われました。

またニューヨーク市では市長選が行われました。

州の知事選や大都市NYの市長選とはいえ、なぜこれほど注目されたのでしょうか?

州知事選ですが、この2つの州について少し記載しましょう。

まずはニュージャージー州ですが、ニューヨークからも近く、日本人にとっても馴染みのある州でしょう。

今回の選挙の前の知事は民主党でしたが、その前は2012年の大統領選挙にも出馬したクリス・クリスティという共和党知事でした。

それ以前も共和党と民主党知事が入れ替わっています。

ただ、大統領選挙戦は1992年以後は民主党が勝ち、ここ最近は民主党が圧勝しています。

バージニア州は、州知事が1期しか務めることができないことで、州知事もかなり移り変わりがあります。

今回の選挙前は共和党の知事でした。

大統領選挙に関しては、オバマ氏以後は昨年を含め民主党が勝っていますが、接戦が多くスイングステートと呼ばれています。

州議会でも共和・民主両党の勢力は均衡しています。

NY市長選は、急伸左派とされ、富裕層への増税と、それを財源にした社会主義的政策を掲げる民主党候補マムダニ氏が勝てるかが注目されました。

マムダニ氏は、更に現イスラエル政権に批判的な立場をとっていることで、トランプ大統領は「反ユダヤ主義」とのレッテルを張っていました。

(注・ユダヤ教徒の中でも現イスラエル政権のパレスチナ侵攻に対して批判をする人も多く、現政権への批判が「反ユダヤ主義」ではありません)



州知事選では、今回特にバージニアの州知事選が注目されました。

オバマ元大統領が応援に駆け付けるなど民主党は知事の再獲得に躍起になっていました。

両党とも今回の選挙に力を入れていたのは、1年後に行われる中間選挙の前哨戦と捉えていたからと言えます。

知事選直前に行われたトランプ氏に対するCNN/SSRSの調査では、回答者の68%がトランプ政権後に経済等の状況が悪化していると回答し、大統領の人気が低下していることが判明していました。

反トランプ色が強いCNNですが、これほどの落ち込みはかなり大きなものでした。

そして、選挙結果も州知事・市長選挙すべてを民主党が勝利を収めたわけです。

富の41%を世界で最も裕福な1%に集まり、下位50%にはわずか1%しかながれない構造が問題になり、トランプ政権後はインフレが高止まりしたままなことで、明確に米国民が第2次トランプ政権にNOとの判断を下したとも言えます。



ここからは、今回の選挙の結果を受けてトランプ政権がどのような動きを見せるかが注目です。

今回の敗北は政府機関閉鎖が継続されていることも要因とされたいます。

オバマ大統領を毛嫌いしているオバマケアを再び取り入れることは、トランプ大統領は避けたいことでしょう。

しかしながら、更に政府機関の閉鎖が続けば、経済的な悪影響は必至です。

おそらく、自分の手柄としてどこかで妥協することを目指すでしょうが、民主党からすれば知事選で勝利を得たことが経済的にも良い方向に向かったとしアピールすることもありそうです。

市場の動きを予想すると、政府閉鎖が終わった場合は、一時的でも為替市場はドル買いに反応すると思われます。

また、他の政権運営の進展も気になるところです。

ここまで明確にNOとされたことで、このままでは中間選挙で共和党が敗北する可能性が高まっています。

移民政策、通商政策等で変化がおきるとは、なかなか考えにくいですが、仮に中間選挙で共和党が敗北を喫するとトランプ政権の残り2年は大統領が行いたいことがほぼすべてとん挫しそうです。

今回の米選挙が、それだけ大きな意味を持っていたといえます。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2025年11月10日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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