Weekly Report(1/19)「日米協調レートチェック観測で、ドル円は上値基調から反転」
安田 佐和子
この記事の著者
トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

マーケット分析
トレーダムソリューション会員限定コンテンツです。

―Executive Summary―

  • ドル円の変動幅は1月19日週に3.62円と、その前の週の1.94円から大幅に拡大した。前週比では、2.37円と4週ぶりに反落し、2025年5月23日週以来の大幅下落に。年初来では0.6%安と年明け3週目にしてマイナスに転じた。週前半は、懸念されていたグリーンランド領有問題をめぐり、トランプ大統領がルッテNATO事務総長との会談後に欧州8カ国への関税見送りを発表し、ドル円は買い戻しが優勢となった。しかし日銀金融政策決定会合後の植田総裁会見を受け相場は乱高下。早期利上げ示唆なしとの見方から一時159.23円まで上昇したが、すぐに157円前半へ急落。介入・レートチェック観測が強まるなか、NY時間にはNY連銀によるレートチェック報道で158円前半から下値を探る展開に入った。日米協調レートチェック観測が強まるなか、引け際まで売り込まれ155.61円と約5週間ぶりの水準をつけた。
  • ドル円は1月23日に、日銀金融政策決定会合後の植田総裁会見を経て急落。レートチェックや介入が取り沙汰されるなか、NY時間もNY連銀のレートチェック観測が飛び交い、第2波の売りが直撃した。植田総裁会見後のドル円の急落が介入だったか否かは、1月26日公表の「日銀当座預金増減要因」で確認できるほか、1月30日に発表される「外国為替平衡操作の実施状況(介入実績、2025年12月29日~2026年1月28日)」によって、最終的な検証が可能となる。
  • 一方、NY連銀のレートチェックは米財務省の指示とされ、ベッセント財務長官の存在があることは間違いない。ベッセント氏は1月20日、日本の債券市場の急変動について「6シグマ」級と発言。その際、日本の当局と連絡を取り合っており、日本からの対応を確信すると述べていた。ベッセント氏がレートチェックに応じた背景には、米国の利益を優先した判断が垣間見える。
  • 日銀金融政策決定会合では、市場予想通り金利据え置きを決定。高田審議委員のみ、利上げ票を投じた。展望レポートでは、2026年度を中心に成長率と物価見通しを上方修正。一方、植田総裁は引き続き円安による物価への影響に目配せしつつ、3月利上げ示唆など明確なタカ派シフトを控えた。ただ、総選挙前の政治状況を踏まえ、植田氏がタカ派色を抑えた可能性がある。次の利上げは4月が有力だが、円安が進めば3月も選択肢として意識される。
  • FOMCは据え置きでサプライズは見込まれない。一方で、1月30日にはつなぎ予算が失効する予定である。足元ではミネソタ州で移民・関税捜査局(ICE)と抗議デモ隊が衝突し、これまでに2人が死亡する事態となっている。こうした混乱の中、つなぎ予算が期限内にまとまらなければ、米1月雇用統計を含む重要指標の公表が再び遅れ、市場に不確実性をもたらす可能性がある。
  • ドル円のテクニカルは、1月23日の急落を受け三役好転が消滅したほか、21日移動平均線、50日移動平均線、一目均衡表の雲の上限を破り、弱気に傾いた。今週はつなぎ予算の期限切れを1月30日に控えるほか、介入の実績状況を確認することになり、ドル円は引き続き不安定に推移しそうだ。
  • 1月26日週の主な経済指標は、26日に米2年債入札、27日に米1月消費者信頼感指数、米5年債入札、28日に豪12月消費者物価指数(CPI)、日本40年債入札、29日に米新規失業保険申請件数、米7年債入札、30日に日本12月失業率と有効求人倍率、日本1月東京都区部CPI、ユーロ圏と独Q4GDP速報値、米12月生産者物価指数(PPI)を予定する。
  • その他、政府・中銀関連では、26日に日本の党首討論会、28日に日銀12月会合の議事要旨公表、FOMCとパウエルFRB議長の会見、30日に日本の財務省による「外国為替平衡操作の実施状況(介入実績、2025年12月29日~2026年1月28日)」の発表、ボウマンFRB理事とセントルイス連銀総裁の発言、米つなぎ予算期限切れを予定する。また、米大手企業決算として、28日にマイクロソフト、メタ、テスラ、29日にアップルが控える。
  • 以上を踏まえ、今週の上値は21日移動平均線が近い157.30円、下値は25年10月6日安値と1月14日高値の38.2%戻しが近い152.80円と見込む。


【 1月19~23日のドル円レンジ:155.61~159.23円】

ドル円の変動幅は1月19日週に3.62円と、その前の週の1.94円から大幅に拡大した。前週比では、2.37円と4週ぶりに反落し、2025年5月23日週以来の大幅下落に。年初来では0.6%安と年明け3週目にしてマイナスに転じた。週前半は、懸念されていたグリーンランド領有問題をめぐり、トランプ大統領がルッテNATO事務総長との会談後に欧州8カ国への関税見送りを発表し、ドル円は買い戻しが優勢となった。しかし日銀金融政策決定会合後の植田総裁会見を受け相場は乱高下。早期利上げ示唆なしとの見方から一時159.23円まで上昇したが、すぐに157円前半へ急落。介入・レートチェック観測が強まるなか、NY時間にはNY連銀によるレートチェック報道で158円前半から下値を探る展開に入った。日米協調レートチェック観測が強まるなか、引け際まで売り込まれ155.61円と約5週間ぶりの水準をつけた。

19日のドル円は、売り先行後に買い戻し。トランプ大統領が前週末にグリーンランド領有に反対する欧州8カ国に2月1日から関税を課す方針を表明した余波から、リスクオフの展開を迎え窓開けでスタートした。ドル円は一時157.42円まで下落し、衆院解散報道直後の1月12日以降の上昇を打ち消し。もっとも、NY市場が休場のなか動意に乏しく、その後は買い戻され一時158.17円まで本日高値を更新した。

20日のドル円は乱高下を経て売り優勢。ドル円は東京時間から買い戻しが入り、衆院解散総選挙で与野党の公約が消費税減税で横並びのなか、インフレ加速・財政悪化の懸念が燻った。ロンドン時間には一時158.61円まで本日高値を更新。不調な20年債入札の結果も嫌気され日本の超長期債の利回りが急騰した結果、債券安・株安・円安のトリプル安を迎えた。もっとも、すぐにドル円は急落。逆に、グリーンランド領有をめぐる問題で米欧の対立が激化するなか、ドル売りで参入したとみられ、下値を探る展開を迎えた。「デンマークの年金基金が米国債投資から撤退との報道もあって、米国もトリプル安に。もっとも、ベッセント財務長官が2025年4月の相互関税発表時のように混乱する市場に落ち着きを取り戻すよう促したほか、ダボス会議でトランプ大統領と欧州首脳が対話する可能性もあり、その後のドル売りは限定的。NY時間入りにドル円は一時157.47円まで本日安値を更新したものの、米債売りが一服したこともあって158円台へ切り返した。なお、同日は米連邦最高裁が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠とした関税措置に判断を下す可能性が取り沙汰されたが、見送りとなった。なお、この日にベッセント財務長官が日本の超長期債利回り急伸につき「6シグマ級」と発言、日本当局の対応を確信していると述べ、話題になった。

21日のドル円は、もみ合いを経て買い戻し。ベッセント財務長官による日本債券市場への発言を受け、政府への対応が意識され、10年債利回りなど超長期債ゾーンは落ち着いた動きを示し、ドル円も158円挟みを中心とした推移が続いた。韓国の李在明大統領が韓国ウォン安をけん制すると、ウォンが対ドルで上昇した影響を受け、一時157.86円まで本日安値を更新した程度に。ダボス会議でのトランプ大統領演説を控え、様子見ムードが続いたが、その後のルッテ北大西洋条約機構(NATO)事務総長との会談を経て、トランプ氏が欧州8カ国向けの関税発動見送りを発表し、ドル円は一時158.53円まで本日高値を更新した。

22日、ドル円は堅調。トランプ氏が欧州8カ国への関税発動見送りを受けた買いが入り、ロンドン時間には一時158.89円まで本日高値を更新した。その後は、日銀金融政策決定会合を控え様子見モードに。NY時間に発表された米新規失業保険申請件数、米Q3実質GDP成長率・改定値は市場予想より強い内容だったが反応薄で、市場予想通りだった米11月PCE価格指数への影響も限定的だった。

23日、ドル円は乱高下を経て急落。東京時間に日銀が金利据え置きを発表すると、買いで反応したが、158.70円台にとどまった。会合後の植田総裁の会見内容が3月利上げを示唆しなかったと受け止められると、会見終了後に買いが加速し、159円を突破し一時159.23円と約1週間ぶりの水準へ上昇。しかし、その後に突如、157.30円台へ急落。介入とレートチェックの観測が飛び交いつつ、ロンドン時間は158円前半での推移が続いた。ところが、NY時間の昼前から売りが再燃し、正午過ぎには真っ逆さまに落ちる展開。米財務省の指示でNY連銀がレートチェックを行ったとのニュースを受けて売りの流れは続き、引け際に一時155.61円と約5週ぶりの安値をつけた。

関連記事

ようこそ、トレーダムコミュニティへ!