「自民圧勝」期待と不安―株高・円安「織り込み過ぎ」への注意
関口 宗己
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

1987年商品取引会社に入社、市場業務を担当。1996年、シカゴにて商品投資顧問(CTA)のライセンスを取得。
市況サービス担当を経て、1999年より外国為替証拠金取引に携わり、為替ブローキングやIMM(国際通貨先物)市場での取引を経験した。2006年2月にマネーアンドマネー(現・DZHフィナンシャルリサーチ)記者となる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CTMA2)。日本ファイナンシャルプランナー協会AFP。

為替の仕組み

衆院選で自民党が大きく勝利し、「これで政治が落ち着きそうだ」「景気対策が進むかもしれない」といった期待が広がっています。その流れを受けて株価は大きく上昇し、為替市場では円安が進みました。明るいムードが広がる一方で、期待が先行しすぎないよう、どこかで冷静さも保っておきたいところです。相場が勢いづくときほど、慎重な視点が欠かせません。



「自民圧勝」による高市政権への期待が強く、円を売ってドルを買う動きが目立ちました。日米の金利差を意識した流れもあってドル円は157円台まで上昇し、週明けも157円後半まで買いが続きましたが(図表参照)、期待が先行しすぎたことで次第に上値が重くなりました。

東京休場前の2月10日には、日経平均株価は史上最高値圏の5万8000円台をうかがう場面もありましたが、ドル円は伸び悩み、翌11日のアジア時間には152円台まで一気に調整しました。短期間で円安が進んだ反動に加え、米金利の低下を受けたドル売りや、テクニカル要因による売りが重なったとみられます。もし株価にも調整が入れば、円の買い戻しがさらに加速するリスクもあります。

与党が大きく勝つと、「政策がスムーズに進みそうだ」という安心感が広がりやすくなります。先行きの見通しが立てやすい局面は投資家に好まれ、株が買われやすくなる傾向があります。

今回も海外からの資金が流入し、株価は高い水準まで上昇しました。「景気対策が進み、企業業績も改善するのではないか」との期待を背景に、内需関連や設備投資関連を中心に幅広い銘柄が買われています。マーケット全体に楽観ムードが広がりました。

一方、為替市場では円安が先行しました。財政出動が増えれば国債発行も増えやすく、「日本の財政は大丈夫なのか」といった見方が意識されやすくなります。こうした観測が円売りを誘い、ドルを選好する動きにつながった面もあります。

さらに、株高でリスク許容度が高まる局面では、安全資産とされる円は売られやすくなります。ただし、為替は海外要因にも敏感で、米国の金利動向や景気指標をきっかけに円高へ振れる場面も少なくありません。国内政治だけで相場が動くわけではない点は、意識しておきたいところです。



選挙直後は「これから良くなりそうだ」という期待が先行しがちですが、政策が実際に動き、経済に効果が表れるまでには時間がかかります。思ったほど成果が出なければ、「期待しすぎだった」との失望が広がり、株価が調整に向かうこともあります。

期待が大きいほど、反動も大きくなりやすいのが相場の特徴です。円安も一方向に進み続けるわけではなく、海外景気の変化や米金利動向をきっかけに円高へ振れる局面もあり得ます。

円安は輸出企業にとって追い風となる一方、輸入物価の上昇を通じて家計の負担を高める側面もあります。メリットとデメリットが併存する点は、冷静に見ておく必要があります。

マーケットを見るうえで大切なのは、短期的な値動きに過度に振り回されないことです。選挙のような大きなイベントは相場を押し上げやすい反面、その分だけ浮かれたような「織り込み過ぎ」の反動も出やすくなります。

いまの株高や先行した円安が、「実体経済の改善に裏打ちされた動きなのか」、それとも「期待が先に走っているだけなのか」。この違いを意識するだけでも、相場の見え方は変わってきます。盛り上がる局面ほど、一歩引いて眺める冷静さが重要になるでしょう。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2026年2月11日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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