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  • Weekly Report (6/5):高値警戒感高揚の中でも、根強い上昇圧力は継続
    吉岡 豪麿
    この記事の著者
    トレーダム 取締役CAO

    国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

    マーケット分析

    テクニカル分析判断  

    サマリー:

    月足こそ“確認”にまでは至らなかったかったものの、日足/週足という中短期

    時間軸では「強力な上値抵抗帯の上限」を“終値で明確に上回った”

    『根強い上昇圧力は我々の想定より遥かに強靭であり、そのモメンタムもまた

    俄かには衰えそうもない』。高値警戒感あるも、上値模索の展開が継続しやすい

    先週は「寄付140.58:138.42~140.92:終値139.98(前週比▲0.63円の円高)」の推移

    となり、週足は4週ぶりの陰線を形成。日足での『RSI70超え』等に現れた上昇の過熱

    状況が高値警戒感を招き、短期的な調整が具現化した模様。しかし、こうした状況下

    においても「上昇圧力がしぶとく残存している証」とした「前週比での上値/下値の

    切り上がり」は3月最終週から10週にもわたってほぼ継続しており、本年初来、特に

    3月下旬からの「(緩やかな)上昇トレンドの継続」を市場参加者に印象付けた

    なお、前週も3.23円と再拡大傾向を維持していた週間レンジは、先週2.50円とやや

    縮小し、更なる上値模索の一方で相応の抑制圧力を受けたことを示唆した

    先週の短期的な調整によって月足こそ“確認”にまでは至らなかったかったものの、

    日足/週足という中短期時間軸では我々が注目していた「強力な上値抵抗帯の上限」

    を“終値で明確に上回った”ことは事実であり、これに伴って我々が中短期見通し

    の本格的な修正を実施したことは先週ご案内したばかり。

    各時間軸での結論は後述するが、総じていえば『根強い上昇圧力は我々の想定より

    遥かに強靭であり、そのモメンタムもまた俄かには衰えそうもないことを再確認』

    したことで「当面は『上値トライが主流』となる蓋然性が高い」となろう。

    以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな

    視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/06/02のNY市場終値をベースに実施)

    <以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>

    ➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記

    短期(1週間~1か月程度)の方向性過熱ゾーン突入で一旦調整も再び上値トライへ

    USDJPY D 20230602 1

    チャートは先週までの1年強の期間を半年強に短縮しスケールを拡大したもの。

    黒い〇は下落、エンジの〇は上昇のサイン今年に入ってからはエンジの〇が大半

    であり過去1年で形成されていた『中期的に強力な上値抵抗帯』(137.75~139.20:

    青い□の帯)も前週半ばには遂に終値で明確に突破していた。

    ●先週こそ『RSI 70超え』等に現れた上昇の過熱状況が高値警戒感を招き短期的な

    調整が具現化したものの、週末には既述『抵抗帯』の中で再び大幅な反発に転換。

    上昇モメンタムの強さから今週も「上値トライが主流」の展開が想定される。

    ●前週4週続伸して“上昇の過熱”ゾーンである 72.9まで上昇していたRSIは、

    先週速度調整的な反落を経たことで64.1に軟化して上昇余地を形成。

    >>>想定レンジ=今週:138.60~142.80 、今後1ヶ月:137.55~144.30 =

    ➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド」&「52MA」、RSIを付記

    中期(1か月超~半年程度)の方向性速度調整的下落をこなして再び上値トライへ

    USDJPY W 20230602 1

    チャートの黒い〇は下落、エンジの〇は上昇のサイン今年に入ってからは

    エンジの〇が優勢であり過去1年で観測されていた『中期的に強力な上値抵抗帯』

    (137.70~139.20:青い上部の□の帯)も遂に先週終値ベースで明確に突破した。

    ●上昇モメンタムの強さから今週も「上値トライが主流」の展開が想定される。

    当面のターゲットは[21MA]と共に上昇中の[21MA+7.41%](現在144.39近辺)。

    ●RSIは、前回ピークアウトした4月第4週や2月第3週、さらに昨年急落した

    11月第2週の水準で一旦はね返された格好も、依然として中立的領域に位置に

    あるため今後の上昇余地は残存。ただ、更なる上昇でその余地は次第に縮小へ。

    >>> 今後6か月間の想定レンジ = 127.800~145.50 ⇒ 127.80~145.50 =

    ➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記

    長期(半年超~年単位)の方向性上値抵抗帯突破で2015~16年の推移想定は遠のく

    USDJPY M 20230602 1

    ●5月の終値は139.32と上値抵抗帯上限(139.35)とほぼ面合わせ。このため、既述の

    中短期時間軸とは異なり『中期的に強力な上値抵抗帯』を“終値で明確に突破”する

    までには到達することができなかった。

    ●従って、当面は上値模索が見込まれるため想定していた「2015~16年の軟調推移」は

    遠のいたものの『(傾きをマイルドにした)緩やかな下落トレンド』の可能性が残った

    ●昨年10月は20MA+18%と60MA+30%を同時に上回るという未曽有の異常な過熱状態

    ●一時85超まで過熱のRSIは中立領域に位置(63.5)を維持も低下余地は大きく残存

    異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA⇒60MA」に向け次第に下落する展開へ

    <現在131.20円の水準にある[20MA]は来月以降も約1.3円/月に上昇する見込み>

    >>> 今後1年間の想定レンジ = 125.10~145.50 ⇒ 125.10~145.50 =

    ファンダメンタルズ分析判断:簡略版

    先週の欧米の経済指標は週後半まで若干軟調なトーン優勢で金利も緩やかに低下

    ◎ただし、週末に発表された注目の米5月の雇用統計(内容は以下)で流れは反転

    ・非農業部門雇用者数:+339,000人増(⇔市場予想:+190,000人を大幅超過)

    ・一方、失業率は3.7%に上昇し7カ月ぶりの高水準を記録

    ・時間当たり平均賃金:前月比+0.3%、前年比+4.3%上昇

    ⇔ 市場予想よりともに前月から伸びが鈍化

    ◎これを受け「6/13~14のFOMCで利上げが停止される」との週初来の見方に拍車

    がかかる一方で「事前予想を大幅に上回る雇用の伸びはFRBがまだインフレを

    抑制しきれていないことの表れ」だと指摘する声も多い

    >>政策金利先物市場では「FRBが6月のFOMCで金利を据え置く確率を71.3%」

    前日までは80%超の水準だった

    ◎6/1からFOMCを控えたブラックアウト(発言禁止)期間に入ったため、週末の5月

    雇用統計に対する当局者の見解やガイダンスを見極めるのは難しいものの、それ

    までの欧米の金融当局者の発言は相変わらず「タカ派」的色彩の濃い発言が圧倒的

     (「比較的良好な経済活動・想定より高止まりするインフレ」が背景)

    ◎要注目だった「米債務上限問題」:6/1に米上院は債務上限停止法案を63対36の

    賛成多数で可決。 懸念されていたデフォルト(債務不履行)を土壇場で回避

    >>>これらを材料に金融市場ではリスク選好的な動きが目立ち株価・金利が上昇

    □【短期~中期的視座】当面「USD/円相場の上昇」をサポートする要因

    〇欧米の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)

    〇米債務上限問題が「解決に向けて大きく進展」債務不履行は回避された

    〇相対的な割安感を背景とする「海外勢の“日本株買い/ヘッジの円売り”」

     >>日本との短期金利差を考慮すれば、円売りは経済合理性の高い投資行動

    〇「本邦投資家による“(外貨建て資産保有に伴う)円買いヘッジ外し(解消)”」

     >>内外短期金利差を考慮すればヘッジ外しの円売りは経済合理性の高い投資行動

    ■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因

    ●銀行セクター不安から顕在化し始めた“信用逼迫”への懸念は燻り続ける可能性

    「一連の銀行破綻を受けもう一段の銀行合併が必要に」~イエレン財務長官(5/18)

    ●米債券市場での『逆イールド』が示唆する「米景気後退」の蓋然性

    >>>将来の景気後退を示唆する米債券市場での『逆イールド』は一向に解消せず

    >>>『逆イールド』幅はピーク時より縮小も、足許で再び拡大傾向にある

    >>>将来的に「FRBは“金融緩和(利下げ)”に向け漸進せざるを得ない状況

    ●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無

    >>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない

    >>>いずれにせよ金利に低下余地はほぼ無く変化としては「上昇」するしかない

    >>>欧米の利上げが終われば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)

    ●【日本】通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が上昇

    >>>為替相場には「“内外のファンダメンタルズを反映”した“秩序ある動き”」が

    求められるものの、足許ではそれに逸脱気味の推移が展開中

    >>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな

    かった日本にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態

    >>>昨秋、現在と類似した状況で行われた過去最大規模の『円買い介入』は140円台

    半ばから始まり、徹底的に水準を押し下げる強い意志を伴って実施された

    >>>円を取り巻くファンダメンタルズや円安進行の速度、さらにその絶対水準を考慮

    すれば、本邦通貨当局による『円買い介入』の蓋然性は着実に上昇している

    お詫び:今週のファンダメンタルズ分析判断も、簡略版のみと致しました。

    なお、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を

    中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート

    (Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。

    TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい

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