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  • Weekly Report (5/8):上値での抵抗帯の強さと下値での底堅さを再確認も下落トレンド優勢へ
    吉岡 豪麿
    この記事の著者
    トレーダム 取締役CAO

    国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

    マーケット分析

    テクニカル分析判断

    サマリー:

    ●上昇力の根強さは続くも、ダブルトップ的な当面のピークアウトを確認 (日足)

    ●上値抵抗帯の強さを再確認。強弱拮抗の中ダブルトップの形成が漸進へ(週足)

    中長期では上昇中の20ヶ月MA⇒60ヶ月MAに向け漸進的な下落が継続 (月足)

    先週は「寄付136.11:133.50~137.76:終値134.82(前週比▲1.47円の円安)」の推移

    となり、4週ぶりの陰線を形成した。また、予想した上値抵抗帯でのピークアウトも

    示現し、上ヒゲの長さと共に『上昇抑止力の強さ』を再確認する格好となっている。

    ただし、「反発(上昇)圧力がしぶとく残存している証」としてきた「前週比での下値

    上値の切り上がり」は先週も見られ、上値の切り上がりは6週連続まで延びている。

    なお、前週3.56円と再拡大に転じた週間レンジは先週も4.26円と拡大が加速した。

    結果的には、(先週若干修正した)以下の見通しに沿うような展開とはなったものの、

    かつて強力な上値抵抗線として作用していた[週足での21MA]を終値ベースで下抜け

    できていないこと等を考慮すれば『下値の強靭さ』もまた強く認識せざるを得ない。

    (先週実施した)再修正の結論:

    ➊短期的な時間軸では当初想定を上回る上昇が継続する可能性があるものの、一段の

    上値トライは『過熱状態を醸成』し『中期的に強力な上値抵抗帯に急接近』を意味。

    ➋一方、中長期的な下落圧力が俄かに減退したとの兆候もまた観測されていないため

    今後も「更なる上昇を阻み・押下げる力が次第に強まってゆく」との想定を継続。

    以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな

    視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/05/05のNY市場終値をベースに実施)

    <以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>

    ➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記

    短期(1週間~1か月程度)の方向性当面のピークアウトを確認。ダブルトップ形成へ

    USDJPY D 20230505

    ●チャートの黒い〇は下落、エンジの〇は上昇のサイン。先週、鉄壁と想定した

    [200MA]付近の領域(青い□の部分)に突入直後に急落に転換。この上値抵抗帯では

    3月上旬にもピークアウトを観測しており『ダブルトップ形成』の可能性が浮上。

    ●ただ、ここ4週はかつて強力な上値抵抗線だった[21MA]と[52MA]を終値ベースで

    (同時に)下抜け出来ておらず、上昇圧力もまた強力に継続していることを示唆。

    ●先週の下落に伴いRSIは急伸後再び低下(55.4⇒65.1⇒53.4)。やはり上昇過熱を

    示す70超の水準(紫の細い水平線) 突破には相当の困難あり。下値余地は依然残存。

    >>>想定レンジ=今週:132.75~137.55 、今後1ヶ月:131.10~137.55 =

    ➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド」&「52MA」、RSIを付記

    中期(1か月超~半年程度)の方向性上値抵抗帯の強さ再確認。ダブルトップ形成へ

    USDJPY W 20230505

    ●チャートの黒い〇は下落、エンジの〇は上昇のサイン。先週は「突破には相当の

    上昇エネルギーが必須」とした上値抵抗帯(青い□の部分)の直前で下落に転換。この

    抵抗帯では3月もピークアウトを観測しており『ダブルトップ形成』の可能性浮上。

    ●ただ、終値ベースで先週漸く[52MA]を下回り中期下落トレンドを確認したものの、

    依然としてかつては強力な上値抵抗線だった[21MA]を下抜け出来ておらず、上昇圧力

    もまたしぶとく継続していることが強く示唆されている。

    前週まで続伸していたRSIは前回ピークアウトした2月第3週や昨年急落した11月

    第2週の水準 (紫の細い水平線) に面合わせ後に軟化(51.4)も下値余地は依然残存。

    >>> 今後6か月間の想定レンジ = 127.50~138.60 ⇒ 127.20~138.30 =

    ➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記

    長期(半年超~年単位)の方向性下落傾向に著変なし。2015~16年に近い推移を想定

    USDJPY M 20230505

    ●昨年10月は20MA+18%と60MA+30%を同時に上回る未曽有の異常過熱状態だった

    ●一時85超まで過熱のRSIは現在中立領域に位置(58.6)も低下余地は依然大きく残存

    異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA⇒60MA」に向け次第に下落する展開へ

     <現在129.65円の水準にある[20MA]は来月には130.80円超に上昇する見込み

    >>> 今後1年間の想定レンジ = 122.10~138.60 ⇒ 121.20~138.30 =

    ファンダメンタルズ分析判断:簡略版

    ●FRBは5/2-3に開いたFOMCで政策金利の誘導目標を0.25%引上げ5.0-5.25%とした

     一方で、『利上げ停止の可能性』も示唆

    ●昨今の流れを踏襲し、先週の米国経済指標も強弱混在ながらやや強めの印象

    ●5/5発表の4月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数が+253,000人と、市場の事前予想

     (+180,000人)を大幅に上回ったほか、失業率は53年ぶりの低水準となる3.4%に改善

    一方、3月分の非農業部門雇用者数は「+236,000人 ⇒ +165,000人」に大幅下方改定

    >>「前月分の下方修正を踏まえると、見た目ほど強くない内容だった」との印象

    市場では「FRBは下半期に利下げに転じる」との見方が織込まれていたが、減速はして

    いるものの経済に力強さは維持されており、FRBの追加利上げの可能性は排除できない

    FRB高官の発言はそのトーンに変化は見られるものの、依然ややタカ派寄りの印象。

    >「6月の次回会合で『利上げ継続か金利据え置きか』については『オープンマインド』を

    維持する」が「インフレ率低下の鈍化が予想されるため、政策金利は最終的に一段と

    引上げるべき」としながらも「自分自身はデータに依存し、事前に判断しないように

    している」(米セントルイス地区連銀のブラード総裁)⇒他の高官も同様のスタンス

    >朝方発表の4月の雇用統計については「雇用増という点では目覚ましいものがあったが

    労働市場の均衡化には依然ほど遠い。」(同上)

    >「また、消費は非常に堅調に推移しており、インフレ対応がなお必要だと示唆された。

    これまでのFRBの積極的な引締め政策で物価上昇は抑制されたようだが、インフレ率を

    明確な下降軌道に乗せたとまでは到底言い切れない。」(同上)

    >「昨今の銀行部門のストレスで経済が受ける最終的な影響は小さい。」(同上)

    ●昨年後半には急速な利上げに併せ銀行の貸し出し態度の厳格化が進んでいたが、先般の

     金融システム不安の拡がりを背景にその厳格化は一段と加速する見通しとなっている。

     逆イールドが織込む景気後退度合の再拡大はこうした要因を反映したものと思われる。

    ●また、実態経済が景気後退に陥りつつある兆候はそこかしこに現れ始めており、年後半

     からの「FRBの金融政策が引締めから緩和(利下げ)へ転換」の可能性も高まりつつある

    ●一方で、事前予想より良好な米経済指標も依然として見受けられることから『今後想定

     される米景気の後退度合いは比較的軽微なものに収まる』との見方も根強いことに加え、

     上記の『金融緩和への政策転換』期待が市場のリスク選好度合いを高めている模様。

    ●本邦においてはインフレ対応では金融/財政の両面で有効な施策を打てなかったため、

    インフレに呻吟する苦境は主要先進国の中で今後最も長引くものと推察される。

    日銀は先月末の金融政策決定会合で(市場の事前予想通り)「長短金利操作のイールド

    カーブコントロール(YCC)を含む現在の金融緩和策の維持」を決定したが、従前より

    指摘の通り『更なる金融緩和余地はほぼ皆無に近い』ことは明白だと考えている

    したがって、植田総裁での新体制においては「現在の金融緩和スタンスを維持」を

    標榜しつつも、我が国の金融政策が「正常化」に向けて漸進してゆかざるを得ない

    ことだけは間違いないと考えられる。

    ●もちろん、実際のUSD/円相場の動向は米金利など海外情勢にも大きく依存するものの、

    日銀の金融政策調整リスクはUSD/円の上昇を阻み、今後の中短期的な下振れ余地を拡大

    させる要因となりえよう

    ●なお、繰り返し主張している通り「我々の中長期的大局観」は以下の通りで著変なし

    >『FRBの超タカ派姿勢と米ドル金利上昇』を最大の原動力にしてきた昨年10月までの

    『USD高/円安局面は、大きな流れとしてすでに反転』しており、仮に今後断続的に

    ドルが買い戻されたとしても『その上値は重く、140円は見た目より遥かに遠い』

    お詫び:今週のファンダメンタルズ分析判断も、筆者都合により簡略版のみと致しました。

    なお、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を

    中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート

    (Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。 

    TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい

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