目次Executive Summary1. 過去2週間の為替相場の振り返り=ドル円、137円回復後に急落2. 主な要人発言3. 主な経済指標 […]
原油相場の動向要因
原油価格もあらゆる商品価格の変動と同じく、基本的には需給で決まります。景気が良ければ需要が増えるし、原油価格も上昇します。当然ながら世界1経済大国である米経済動向が大きな要因となりますが、近年は中国の経済状況の注目度が増しています。中国の原油輸入は世界1で、輸入額は2位の米国のほぼ2倍近く、中国の需要変化は産油国の輸出や原油価格に大きな影響を与えます。
また、原油の供給に大きく影響を与えるのは石油輸出国機構(OPEC)の決定です。
OPEC、OPECプラス
OPECは国際石油資本などから石油産出国の利益を守るために1960年に設立され、当初のイラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラの5カ国から現在は14カ国に拡大しています。1970年代に石油の価格決定権を国際石油資本から奪い、2度のオイルショックを引き起こしました。1980年代半ばに価格決定権は自由市場に移りましたが、生産調整などにより原油価格に大きな影響を及ぼす存在となっています。もっとも、近年では米国のシェールオイル開発などにより、OPECの価格決定力は相対的に低下しつつあるとの見方もあります。
現在、OPEC原油のシェアは約30%台に低迷し、OPECに属さないロシアやメキシコなど10カ国の生産量は合計で世界の20%前後あるため、OPECと非OPEC産油国は産油国共通の利益を追求するために協調して需給調整を行う「OPECプラス」という枠組みを2016年に設定して、石油価格への産油国の影響力の維持を図っています。
世界原油取引の代表的指標
日本は輸入先の多くが中東(サウジアラビア、UAEなど)のため、ドバイ原油の価格が指標として多く使われます。そのほかに、
ブレント原油:欧州市場の指標価格。北海油田から生産される原油で硫黄分が少なく軽質油であることが特徴。
WTI原油:米国市場の指標価格。テキサス州とニューメキシコ州を中心に産出される原油の総称。ブレント原油と同様に硫黄分が少なく、ガソリンや軽油などが多く採れる高品質油であることが特徴。
原油価格とドルの相関
原油取引は主にドル建てでの取引となっており、ドル高となれば原油価格に割高感が生じることで売り圧力が強まります。逆にドル安となれば、割安感から買いが入り原油価格は上昇しやすいです。ただ、原油価格と為替相場の相関が強い時もあれば、関係性が薄く感じる時もあります。これはその時の市場参加者の構成変化、ファンダメンタルズに基づく将来価格見通しに関する市場の確信度合い、市場のモメンタムやセンチメントなどが背景として考えられます。
原油価格の変動は物価に大きな影響を与えます。原油価格の上昇・下落がインフレ・デフレーション、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策決定にも影響を与え、FRBの政策決定がドル相場の変動につながる時もあります。
また、投資家のリスクオフ志向が強まると、為替市場では円やスイスフラン(CHF)、ドルが買われやすく、他の金融市場では安全資産とされる金や国債に買いが入る一方で、リスク資産とされる株や原油などに売り圧力が強まります。逆に投資家のリスク選好志向が高まると、円やスイスフラン(CHF)、ドルに売りが入りやすく、金や国債に売り圧力が強まる一方で、株や原油が買われやすい傾向となります。
原油と産油国通貨
産油国にとって原油は重要な外貨獲得商品です。高く売れればより大きな利益を手にすることができます。世界の原油輸出国1位はサウジアラビア、2位ロシア、3位イラクと日本から投資しにくい国が並んでいますが、4位が米国、5位にカナダと続きます。
FX取引で原油相場の変動に反応が目立つのが加ドルです。カナダは産油国であり原油の輸出量も大きい国です。カナダの全輸出品の中で原油等鉱物製品が占める割合は3割弱を占めています。つまり原油が高くなればカナダの貿易収支における黒字が増え、結果加ドルが強くなる可能性を想定することができる、というわけです。原油相場の変動は加ドルなど産油国通貨だけではなく、豪ドルや南アフリカ・ランド、メキシコペソなど資源国通貨の動きにも影響を与えます。
本記事は2023年4月29日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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