ダウ理論とエリオット波動(1)
岩間 大祐
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。

外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。

国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

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ダウ理論

「ダウ理論」は米国のアナリストであったチャールズ・ダウ氏が発表した分析理論です。株式相場で利用された理論ではありますが、外国為替市場でも生かせるものですので、順番に見ていきます。

(1)価格は全ての事象を織り込む

外国為替市場で材料視される金融政策などのファンダメンタルズを含めてすべての事象はチャート上の値動きに織り込まれ、反映されているという考えです。この考え方を基にチャート分析を行うとすれば、チャート分析の重要度もおのずと高まりますね。

(2)トレンドは3種類

1年以上の周期をもつ「長期トレンド」、3週間から数カ月の周期をもつ「中期トレンド」、数日間程度の「短期トレンド」が相場にはあるとされています。

(3)長期トレンドには3つの局面がある

第1局面:先行投資家が買い始める時期で相場の上昇は穏やか

第2局面:追随投資家が買いを入れる時期。市場全体が追随することで相場も堅調に推移します。

第3局面:一般投資家が買いを入れる時期。相場はすでに過熱気味で、先行投資家などは利益確定を行います。

こうした3つの局面を経てトレンドが転換するという流れです。上では強気市場における局面を示しましたが、同様に弱気市場でも3つの局面があります。

(4)平均は相互に確認されなければならない

ダウ氏はこれを工業株平均と運輸株平均で考えましたが、外国為替市場で言えば相関性の高い通貨ペアなどで動きを確認することが重要ということになります。相関性が高いであろう通貨ペアが同一方向に動いて入ればトレンドの精度も高いが、異なる動きであればトレンド判断も慎重になるべき、いうことです。

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為替市場分析では生かしづらいものも

(5)トレンドは出来高でも確認されなければならない

ダウ理論ではトレンド判断の際に出来高を重要視します。ただ、外国為替市場では出来高の把握が困難ということもあり、こちらは有効活用しづらいです。

(6)トレンドは転換が決定的になるまで続くと判断するべき

トレンド転換のシグナルが明確になるまでは現在のトレンドを継続することが重要としています。トレンド転換が明確になる前に早まった売買をするより、明確なトレンド転換を確認してから動く方が結果的に多くの利益を得ることができるという考えです。チャート分析を行う際にはついついトレンドの転換を早く探ろうとしてしまいがちですが、一呼吸置いてからの方が良いことは多々あります。

(7)横ばいは訂正運動に変わることがある

相場の横ばい(保ち合い)が続いた後、どちらかの方向に放れることで新しいトレンドができますが、一般的に横ばいの期間が長ければ長いほど、その後のトレンドの勢いは強くなります

(8)終値を重視

終値は1日の動きを最終的に集約した値なので、翌日以降の投資行動にも大きな影響を与える。ゆえに終値が最も重要とされています。株式相場などでは終値が重視される傾向が大きいように思います。外国為替市場でもある程度は当てはまると思いますが、チャート分析の際には日中の高値や安値なども重要視されますので、多少は割引いて考える必要がありそうです。

以上が「ダウ理論」の概要です。この中でも(2)や(3)の部分は「エリオット波動」でも類似した考え方が出てきます。次回は「エリオット波動」について解説していきます。

本記事は2023年3月15日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。

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