先物市場で投機筋の動きを把握
金 星
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。
外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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外貨の売買を契約した時から、実際に外貨の受け渡し(売買の実行)が行われるまでの期間の長さによって、外国為替取引は直物為替(spot exchange)取引と先物為替(forward exchange)取引の二つに分けることができます。

直物為替取引

直物為替取引とは外国為替の売買契約成立と同時に、もしくは成立後2営業日以内に、実際に為替の受け渡しが行われる取引です。外貨現金の両替、外貨預金の入出金、外貨建て海外送金において依頼者が銀行に自国通貨建ての相当額を払い、銀行が外貨を送金することなどが挙げられます。

先物為替取引

先物為替取引とは将来の特定日ないし一定期間後に、契約時に定めた一定条件(為替の受渡場所、通貨種類と金額、為替相場、受渡期日など)で為替の受け渡しを行う取引のことです。先物取引が行われる理由は、為替相場の変動に伴う危険を回避するためです。

通貨オプション取引は、外国通貨を将来の一定時期(行使期間)にある価格(行使価格)で売買する権利を売買する取引のことを言います。

「先物為替予約」とは、将来の一定の期日または期間を予約の実行日または期間と定めて、銀行と外貨の決済を行う為替レートをあらかじめ取り決めておく為替売買取引です。「予約」との語句がありますが、銀行との外国為替取引上では、「外国為替予約取引約定書」により、「売買取引」と規定しています。銀行と顧客との間であらかじめ売買価格(先物為替相場)を決めて約定します。一度予約すると原則、取消はできず、期日に受け渡し(予約の実行)の義務が生じます。このため銀行にとっては与信取引として取り扱われます。これに対して、「通貨オプション取引」とは、外国通貨を将来の一定時期(行使期間)にある価格(行使価格)で売買する権利を売買する取引のことを言います。

通貨オプション取引

通貨オプション取引には以下の4通りの取引があります。

A.コール・オプション(外貨を買う権利)の「買い」

B.コール・オプション(外貨を買う権利)の「売り」

C.プット・オプション(外貨を売る権利)の「買い」

D.プット・オプション(外貨を売る権利)の「売り」

これらに対し、FX取引は差金決済による取引です。差金決済とは、一般の外国為替取引とは異なり、通貨の現物売買を伴わず、買い付け通貨の対価とその通貨の売り付け対価の差額の授受により決済することをいいます。FX取引では、証拠金を事前に入金してから取引する仕組みとなっています。

先物取引所の建玉は相場を読む一つのポイント

前も為替の動向に影響を与える機関投資家に言及しましたが、先物取引所の建玉を見ればヘッジファンドなど投機筋の方向性がある程度把握できます。米国先物取引所の建玉で売り・買いのどちらが多いかを見れば、投機筋が今後の相場をどう見ているのかをある程度方向感がわかります。

米国商品先物取引委員会(CFTC)は毎週金曜日にその週の火曜日時点の建玉を公表します。上場されている商品ごとに商業ペースの取引と投機筋の取引の建玉を見ることができます。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)では円やユーロ、スイスフラン(CHF)、オーストラリアドル(豪ドル)などの対ドル相場の先物も取引されています。例えば、円の買い持ちが売り持ちより多ければ、投機筋は今後円高の見方が優勢であると判断できます。ただ、2008年9月のリーマン・ショックでヘッジファンドは大きな損失を被り、シカゴの先物市場で為替の建玉が減っているだけではなく、一方向に大きく傾くことが少なくなり、注目度は低下しています。

本記事は2023年3月25日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。

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