対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない
松井 隆
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットを担当。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたる事業に従事する。

為替の仕組み
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これまでにも記載していますが、為替の初心者が始めて取引をするのであれば

まずはドル円を取引することをお勧めしています。

理由は2つありますが、1つ目は日本で生活している人にとって

日本の経済・政治情勢などを理解するのは他国よりも簡単で

円が買われるのか、売られるのかを判断しやすいでしょう。

2つ目は、ドル円はユーロドルに続いて流動性があることです。

流動性があるとは、取引されている量があるという意味ですので

売りたい・買いたいと思った場合はすぐに手が出しやすい状況です。

対ドルが取引の中心というわけではない

では、ドル円以外の通貨を取引する場合に注意することは何でしょうか?

それは、「対ドル以外の動きを見ないで、取引をやってはいけない」ということです。

もっとも、ユーロドルに関しては、上述のように一番流動性があることで

ユーロドル単体での取り引きをやっても大丈夫でしょう。

ただし、他の通貨は対ドルだけの動きを見ていてはいけません。

その要因としては、欧州ではほぼ対ユーロでの取引が主になっているからです。

ポンドの取り引きで多いのは、ポンド対ドルではなく、ポンド対ユーロです。

また、スイスフランもドル対スイスフランではなく、ユーロ対スイスフランです。

他にもノルウェークローネ、スウェーデンクローナまども対ドルではなく、対ユーロが取引の中心なのです。

余談ですが、ユーロという通貨が出来る前は、ドイツマルクが取引の中心で

マルク対(フランス)フレンチ、マルク対(オランダ)ギルダー、マルク対(スペイン)ペセタ

など対ドルではなく、対マルクが取引の主になっていました。

オセアニア通貨も対ドルだけではダメ!

欧州通貨の動きは対ユーロが中心になっているように、オセアニア通貨も対ドルだけを見ていては行けません。

オセアニアの2大大国の豪ドルとNZドルのクロスの動きを見ていないといけないわけです。

特に動意づくのは両国の経済指標が強弱に分かれた時です。

6月中旬ニュージーランドから1‐3月期の国内総生産(GDP)が発表され

豪州からは5月の雇用統計が発表されました。

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結果はNZのGDPはマイナスとなり、テクニカルリセッション入り

豪州の雇用統計は失業率、新規雇用者、常勤雇用者すべて強い結果になりました。

この結果を受けて豪ドル/NZドルが急上昇を辿っています。

日本で為替をやっていると、ドル円が中心になるのは全くかまわないでしょう。

しかし、もしドル円以外の通貨を取引するのであれば、対ドル以外の動きにも目を通す必要があります。

もし、その余裕がないのであれば、その通貨を取引するには時期尚早で

取り引き自体をやってはいけないでしょう。

本記事は2023年6月26日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。

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