• 円安を本当に止める気があるのか・・・何が信用できるかを確かめないでやってはいけない
    松井 隆
    この記事の著者
    DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

    大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットを担当。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたる事業に従事する。

    為替の仕組み
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    円安の進行が止まりません。1986年以来の円安ということはプラザ合意以来ということになります。

    最近だとプラザ合意後に生まれた方が多くいることもありプラザ合意自体を知らない世代が増えています。

    簡潔にプラザ合意とは、1985年9月に先進5カ国(G5)財務大臣・中央銀行総裁会議で主に日本の対米貿易黒字の削減をするために円高を進行させたことです。

    それ以来の円安水準でもあることで、様々な弊害が出ています。

    例を挙げると輸入物価が上がり、食料品価格も跳ね上がっています。

    家計に与える影響は計り知れませんが、果たして政府・財務省はこの状況を改善する気があるのか、最近は疑問に感じています。

    円安を阻止する手立てがない?

    ここ最近も本邦通貨当局者は

    「最近の急速な円安進行に関しては深刻な懸念を有する」

    「物価高は、円安を通じた輸入物価上昇を起点としている」

    「急速かつ一方的な円安は望ましくない」

    など、円安に対してある程度の懸念を表明しています。

    その円安の流れを変えるために、今年に入っても4月29日と5月1日(日本時間では2日早朝)に円買い介入を行っています。

    しかし、為替介入は短期的には特効薬となりますが、中長期的には効力を失います。

    また、6月の日銀政策決定会合で7月の同会合で、長期国債の買い入れの減額や短期金利の引き上げを示唆したのは円安に歯止めをかけるためと捉えた人もいます。(実際は円安が進行してしまいましたが)

    このように介入も行い、利上げまで示唆したのに円安が継続していることでもうこれ以上、円安を止める手段に枯渇しています。

    要するに手詰まり状態と言えます。

    実は円安放置か?200円超える円安も?

    上述のように短期的な特効薬の為替介入以外では円安が止められない状況ですが円安を政府が本気で止めないのは、実は円安を許容しつつあるのではとの声もあります。

    ただし、円安で苦しむ国民がいることで、円安対策を放置すると選挙に受からないかもしれないので、形式上は円安対策を懸念しているとしているだけとの穿(うが)った考えも出てきています。

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    そのような考えが出てくるのは、介入という特効薬以外の円安対策を政府が率先して行わないからです。

    例えば、今年に入り円安が進行した理由の一つは、新NISA(少額投資非課税制度)が始まり外国株式で運用する投信のための外貨買い・円売りが出ています。それも「兆」規模の大量な額です。

    もし、新NISAの枠に外国株式への運用を除外すれば、その分の円売りは減少するでしょう。

    また、一時噂されていたレパトリ減税策なども円安の流れを抑えることが出来るかもしれません。

    しかし、それらの行動は一切行わないで、口先だけで円安を止めようとするのは無理があります。

    よって、選挙への影響は避けたいが、本当は円安を放置しているそして、このまま円安が進み、200円を超える円安になっても構わないのではないか

    と疑いの声が出ているようです。

    信用されない内閣府

    このように、一部では円安放置論まで出てきたのには、政府への信用が失っているからでもあります。

    先週1日に1-3月期の実質国内総生産(GDP)が発表されましたが、その内容は目を疑うものでした。

    結果は前期比で改定値の-0.5%から-0.7%。前年比で-1.8%から-2.9%へと大幅に修正さたのです。

    実質GDPは速報値が5月16日に発表されています。前期比-0.5%、前年比-2.0%となりそれぞれ予想よりも悪い結果になりました。

    そして、改定値が6月10日発表され、前期比は変わらなかったものの、前年比は-1.8%と上方修正されました。

    速報値から改定値までの間に1カ月弱あったのにもかかわらず、更に確報値では大幅に下方修正されたことは内閣府のデータが信用できないと言っているようなものです。

    ここまでの、大幅な下方修正の要因は建設統計のミスとの話になっています。

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    しかし、このようなミス(改ざん?)は過去にもあり、厚生労働省が発表していた毎月勤労統計などはデータを書き換えていたことも判明しています。

    しかも、GDPは改定値が発表されたのが6月10日で、そのすぐ後の13-14日には日銀政策決定会合が行われています。

    もし、GDPが-2.9%まで膨らんでいた場合、政策決定会合で次回の長期国債の買い入れの減額などが議題にさえ乗っていなかった可能性もあり、恣意的に改定値では変えなかったのではとの噂すらあります。

    更なる円安に備える必要も

    実際に今後も円安が進むかは未知数です。米大統領選挙でトランプ氏が返り咲けばドル高を阻止する可能性もあります。

    ただし、このように根本的な円安対策をしない、政府発表の経済指標の信頼性が揺らいでいることもあり更なる円安の可能性も捨てきれません。

    今後は政府がどのような円安対策を行うかを見定め、本気で円安を止める気がある場合は円買いをすれば良しこれまで通り口先だけの円安懸念の場合は、更なる円安にも備える必要がありそうです。

    ※本記事は2024年7月8日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。

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