―Executive Summary― 目次1.先週の為替相場の振り返り=ドル円、日銀金融政策決定会合を挟み乱高下2.主な要人発言3.主な経 […]
2024年9月は日米の投資家にとって、目を離せないニュースが続きました。そのなかで最も市場を動かしたものは、それぞれの中央銀行で行われた政策金利の動きです。アメリカ(FRB、FOMC)は早々と利下げが確定していたため、「どれくらいの利下げをするか」が注目されました。そして日本は、十数年ぶりの利上げが大幅な株式相場下落を招き、令和のブラックマンデーとも称される懸念のなかでの追加利上げです。
コンセンサスとサプライズ
投資の世界には「コンセンサスとサプライズ」があります。コンセンサスは既に株価に織り込まれている情報のことで、個別銘柄では業績、通期や四半期の決算内容、月次の既存店売上などを指します。基本的に上場企業の場合は、IRなどで開示されている情報です。
一方のサプライズは、コンセンサスを受けて確立していた「多くの投資家から見える銘柄のイメージ」を覆すニュースで、株価チャートには含まれていません。企業の適時開示や上方(下方)修正などが対象です。
これは個別株に限らず、投資信託や現物資産のチャートにおいても同様です。本記事では、2024年秋にかけて相場のキャスティングボードとなる「政策金利」にスポットを当てて、コンセンサスとサプライズを分析してみましょう。
今回の金利政策で「織り込み済み」はどの部分か
まずアメリカです。アメリカの政策金利は、FRB(連邦準備制度理事会)が定めます。金利などの決定事項は、FOMC(連邦公開市場委員会)で決められます。今回は日本時間の2024年9月17日、18日に開催されました。
FOMCの開催前に、FRBを率いるパウエル議長が利下げを明言します。この時点でアメリカの利下げはコンセンサスとなり、金融相場の注目は「どれだけ利率を引き下げるか」に移行します。0.25%~0.75%の数字が並ぶなかで、FOMCの前日になっても利幅は報道されません。この時点で利幅は予測されるも確定事項ではないという意味で、「コンセンサスとサプライズの中間」と考えられるでしょうか。
最終的に9月のFOMCは0.5%の利下げ、追加で年内に追加利下げがあるのではという発表がありました。2024年内にFOMCの開催は11月、12月と残されています。市場が織り込んでいた0.5%がコンセンサス、追加利下げの可能性がサプライズというところでしょうか。
アメリカとは動きの異なる日本の政策金利
次に日本について考えてみましょう。日本は長く適用してきたマイナス金利を2024年に撤廃しました。ついで8月に0.25%の政策金利を設定しました。かねてからのアメリカ株の下落と重なり、「令和のブラックマンデー」が引き起こされたのは記憶に新しいところです。
とはいえ賃金ベースの上昇を受け、2024年9月の日銀会合後に再び利上げをする可能性が示唆されています。利上げ自体はコンセンサスの一種といえるでしょう。ただ前回の利上げが強いハレーションを呼び込んだことは日銀自体も相当に懸念しており、慎重な姿勢を垣間見えます。
こちらは9月20日(金)、最終的に0.25%の現状維持が発表されます。株価への影響を踏まえた判断と考えられるでしょう。事前に当局より発表は無かったものの、現状維持はコンセンサスといえるでしょう。この先どうなるのかの読みも踏まえて、10月以降の動きが注目されます。
個人投資家は複雑な意思決定をどう見ればいいのか
今回のFOMCの開催前日まで、利下げ幅の確定報が報じられることはありませんでした。ここから察するに、個人投資家’(特に投資初心者)が金利リスクを分析して、ベットすることはとても危険です。とはいえ個別株からインデックス投信に至るまで、金利リスクは株式相場を大きく左右します。いったいどうすればいいのでしょうか。
ひとつ打開策となるのは、「情報量を増やすこと」です。従来は著名な投資家が「これくらい金利は変わる。よって〇〇の銘柄が動く」と断定口調?で買い手ある情報発信も目立ちましたが、最近の複雑化により、その姿勢は(目立つことを考慮しても)、リスクが高いものになりました。
反面活性化しているのは、客観的姿勢を担保した経済メディア形態の情報発信です。経済誌や専門メディアの速報をポータルメディアの形で、端的に情報発信します。なかには意見が食い違っているものもありますが、発信者はあくまで記事の斡旋であり、ポジションに依るものではありません。
無料で閲覧できるものも多いため、複数のメディアを登録しておき、自分の見解を固めます。得られる情報はコンセンサスであるため、何か突発的な状況が発生したときの防波堤にもなることでしょう。新NISAが開始した年にこのような判断の難しい局面が来ることは功罪ありますが、これまで証券会社などに任せていた資産ポートフォリオの構築を、投資者それぞれが考えるという、金融リテラシー構築のきっかけになるとプラスに考えることもまた、できるのではないでしょうか。
【免責事項・注意事項】
本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。
※本記事は2024年9月20日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています
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