• ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か
    中村 知博
    この記事の著者
    DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

    鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。
    外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

    為替関連用語解説
    image 48

    ドル円、34年ぶりの高値160.17円に接近

    ドル円は4月29日に160.17円と1990年4月以来34年ぶりの高値まで急伸しましたが、そのあとは政府・日銀による為替介入とみられる動きで5月3日には151.86円まで一転下落しています。ただ、そのあとは再びじり高の展開となり、昨日21日には159.84円まで上昇し、介入前の水準まで値を戻しています。

    政府・日銀による介入とみられる円買いの動きは4月29日の午後と1日のFOMC後である日本時間2日の早朝の2回。介入額は過去最大の9.8兆円となっていますが、その効果が完全に打ち消された格好となりました。

    image 49

    *Trading Viewより 

    ドルは強く、円は弱く

     先週発表された5月米消費者物価指数(CPI)と5月米卸売物価指数(PPI)が予想を下回ったことで、米長期金利の指標となる米10年債利回りは低下傾向が続いています。4月25日には4.73%まで上昇しましたが、そのあとはじりじりと低下し6月14日には4.18%まで下げています。

    image 50

    *Trading Viewより

     米長期金利は低下傾向にありながらも、為替市場で「ドルの強さ」が目立っています。ドル買いのきっかけは「欧州で広がる利下げ」。スイス国立銀行(SNB)は今週20日、2会合連続で政策金利を引き下げると発表。また、英中銀(BOE)は市場予想通り政策金利の据え置きを決定しましたが、8月の利下げ開始を見通す声が強まりました。また、欧州中央銀行(ECB)は今月6日に0.25%の利下げを決めましたが、「7月も利下げに動く」と予想する声が浮上しており、対欧州通貨でのドル買いにつながっています。

    20240622082858527455

    *Trading Viewより

     また、カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁が「米連邦準備理事会(FRB)のインフレ目標である2%に落ち着くまでは1、2年かかる可能性がある」と発言するなど、今週も複数のFRB高官から「利下げに慎重な姿勢」が示されています。市場関係者からは「FRBが年内に金利を引き下げる可能性は低い」との声も聞かれています。

     半面、円は弱さが目立ちました。ユーロ円は昨日まで5日続伸し、一時170.91円と4月29日以来の高値を更新しています。また、ポンド円は202.08円と2008年8月以来の高値を付けたほか、豪ドル円は106.17円と07年11月以来の高値、NZドル円は97.83円と1986年6月以来の高値を記録しています

     米財務省は今週20日、半期ごとに公表する外国為替政策報告書で、日本を「監視リスト」に追加したと発表。市場では「政府・日銀による為替介入が困難になった」との思惑が高まり、円売りが出やすい地合い。さらに、円安進行のペースは1日に数円動くような過度な変動ではなく「じり安」に変わってきています。心理的節目160円が目前となっていますが、水準で介入に踏み切ることは難しいと言わざるを得ません。

    ドル円の一目均衡表チャート

    ドル円の一目均衡表チャートを見ると、週末の終値(159.80円)で雲の上限155.59円を上回っています。また、転換線157.78円や基準線157.20円も大きく上回っており、テクニカル的にも上サイドへの期待が高まります。

    20240622083013295040

    *Trading Viewより

    ドル円は7営業日続伸し、週末の終値(159.80円)でも160円に迫っています。4月29日に付けた34年ぶり高値160.17円までもう間もなくの水準となっており、政府・日銀による為替介入への警戒もありますが、「『警戒』より『期待』の側面が強い」との声が聞かれる中、「監視リスト」に追加されたばかりとあっては「介入は困難」と言えるでしょう。「行き過ぎた」動きや「投機的」な動き、「ファンダメンタルズから逸脱した」動きがあるようにも見えません。

    【免責事項・注意事項】

    本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

    ※本記事は2024年6月22日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。

    ようこそ、トレーダムコミュニティへ!