米長期金利とドル円
為替の仕組み

長期金利

米政策金利はは米連邦公開市場委員会(FOMC)で決定されます。米連邦準備制度理事会(FRB)は、米国の民間銀行が連邦準備銀行に預けている準備預金を他の民間銀行に貸し付ける際の短期金利(フェデラル・ファンド金利)を公開市場操作によって政策金利に誘導するので、短期金利は中央銀行の金融政策によってほぼ決定されます。

一方で、長期金利の決まり方は短期金利とは大きく異なり、米国10年国債利回り等の長期金利は、債券市場参加者が持つ将来の経済成長期待や物価上昇期待など、長期に特有の要因が加味されて市場で決定されます。長期金利が上昇すると、リスク資産が買われやすく、逆に長期金利が低下するとリスク資産は売り圧力が強まることが多いです。

最近の米10年債利回り

10年債利回りは長期金利の代表格であり、米10年債利回りは最も重要な金融指標の一つです。米10年債利回りの動きはほかの金融商品価格への影響が大きく、すべての金融商品・経済の太陽のような存在とも言われています。

米10年債利回りは米インフレ高の長期化懸念やFRBの利上げを背景に昨年10月に約16年ぶりの高水準となる5.0%近辺まで上昇したが、米国のリセッション(景気後退)は避けられないとの見方やFRBが2024年には利下げを開始するとの観測が強まり、昨年12月は3.8%近辺まで低下しました。

ただ、今年に入って、製造業と雇用の堅調さを示し、勢いを増す米国の回復力を裏付けていることや、インフレの根強さや原油などの商品相場の上昇も相まって、米利下げ時期と規模に関する市場の予想は後退し、米長期金利は再び上昇に転じています。米10年債利回りは今週に昨年11月以来の高水準となる4.4%台まで上昇しました。

米長期金利とドル円

昨年12月にFRBは24年に3回の利下げで政策金利を75ベーシスポイント(bp)引き下げるとの見通しに対し、市場は6回の利下げ(150bp)を見込んでいたが、最近市場の見方はFRBの予想に近づいているだけではなく、利下げ開始が一段と後ずれし、利下げ幅も一段と縮小するのでは、との懸念が強まっています。

米長期金利が再び上昇傾向を強めており、日米金利差を意識したドル高・円安の流れが続いています。日本当局の円買い介入を警戒しながらも、今年のドル円は152円手前まで1990年7月以来の高値を更新しています。

日銀は3月会合でマイナス金利の解除に踏み切った一方で、FRBは利下げに向かうことが確実視され、金融政策面での格差は縮めるはずですが、日銀の追加利上げへの不透明感が強いことや、米政策金利が高止まりする可能性が警戒され、米10年債利回りが5%台乗せを果たすと、ドル円は一段と上値を試す動きになる可能性があります。

日本当局が介入に踏み切っても、市場で「介入効果が薄い」と判断されれば、ドル円の上昇に歯止めがかからない可能性も警戒されます。もっとも毎日7兆5000億ドルに上る取引が行われる為替市場に単独で介入しても、為替レートへの影響は一時的なものにとどまります。

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