トランプ喧騒の先に見える「オルタナティブ元年到来」の考察
この記事の著者
独立型ファイナンシャルプランナー

株式会社FP-MYS 代表取締役
1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

為替の仕組み

もし今から2025年の年明けに戻れるとしたら、多くの投資家が「アメリカ株を信じすぎるなよ」と自戒することでしょう。それほどに春のトランプ関税ショックは、市場に大きな影響をもたらしました。「黙って長期投資をしていれば、アメリカ株は必ず元通りになる」と昨年2024年8月の「令和のブラックマンデー」でもいわれましたが、本当にそうなの?という猜疑心も消し去ることはできません。



そんななか、元気いっぱいの投資領域があります。貴金属の金です。2020年からアメリカのインフレ抑制のための利下げから数年かけて上昇した金には、「そろそろ天井では」という見方も強くありました。ところがトランプ大統領が世界経済をかき回すほど、金はその存在感を強めています。

参照:なんぼや金価格 

2025年の金は3月まで横ばいトレンドの傾向が見えていたものの、トランプ関税ショックにより一時期落ち込み、その後も堅調に伸ばしています。

2025年にはBRICSが金本位制を導入した共通通貨を発行するという情報もあり、信頼感の低下したドルに代わり、金の存在感が高まる可能性が高まっています。

2025年に金を主軸とした「オルタナティブ元年」が到来する可能性は、充分に有り得るでしょう。その時の問題は、オルタナティブという言葉に、何を含めるかです。



先日、筆者は別の仕事で「オルタナティブについて分析してください」と依頼を受けたとき、何が含まれると定義して欲しいか尋ねました。そのときの返答がこの表です。

(一般的にオルタナティブに含まれるもの)

参考記事:「米の高騰の要因?再開された『米の先物取引』とは」

個人的にヘッジファンドと不動産投資は単体で十分知られたものであり、オルタナティブという枠組みに加えることには抵抗があります。あまり増え過ぎると、市況の動きに対してオルタナティブはこう動くという方針分析にも正確性を欠きます。オルタナティブ元年の到来は、オルタナティブ資産の定義がより研ぎ澄まされる一因にもなるのではないでしょうか。



「オルタナティブ」という商品はありません。オルタナティブへ投資することで分散投資を期待することはできますが、投資先をしっかりと把握することが、リスク回避への一環といえるでしょう。

オルタナティブの最大の特徴は、プロフェッショナルなトレーダーが指揮を取り、個人投資家が知り得ない銘柄や投資方法を発掘することです。よってほかの投資方法に比べて手数郎は高めですが、手数料如何で選ぶのではなく、プロの慧眼に期待するお金を集めるもの、という位置付けです。



4月後半に入りトランプ大統領の強硬的な方針にも変化が見られます。今回の代表的な施策と見られていた100%を超える対中関税についても、4月24日に「50%~60%に落ち着く可能性がある」と報じられました。

たくさんの経済界のルールを踏みにじってまで大統領が貫いたものはアメリカの強さの復活です。それは功罪あるにしろ、政治家としてのひとつの理想だったと思います。もちろんアメリカ下院を共和党が占めているという数の論理はありますが、この数ヶ月間において大統領の弾劾の動きが出なかったのは、彼の目指すものがアメリカにとって大事なものだったという点は見逃せません。

もし今後、この矜持が見られないとなった場合、残るのは「アメリカって結局なにやりたかったんだ?」という猜疑心です。それは「アメリカ(ドル)の代わりに信じられるものがあるのか」という疑問にも繋がります。アメリカ国内からも、国外からも頻出することでしょう。

今後のタイミングとしては専門的な経済メディアで「ポスト・アメリカ」が論じられ、個人投資家のあいだでも従来のようなに「S&Pとオルカンに長期投資していれば大丈夫だよね」という空気が無くなったあたりが、人々の視線が改めてオルタナティブに向かうタイミングではないでしょうか。もちろんオルカンは現在のアメリカ約60%の構成銘柄を「変更する可能性」があり、それも考慮しての意思決定となります。

個人的な見解としては、2025年の秋から冬にかけて、2026年の中間選挙に向けてトランプ氏の評価がされます。そのときに金以外のオルタナティブ候補に光があたっていれば、オルタナティブ元年のスタートといえると予測しています。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2024年4月29日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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