デリバティブ商品の一つ、金利スワップについて徹底解説!
浦島 伸一郎
この記事の著者
ジーフィット co-CEO&CTO

プロフィール:外資系証券会社で、オンライン証券取引システム、証券決済システム、米国国債・欧州国債・日本国債などの国債取引所の開発および運営を担当、その後国内証券会社、FX業者などを経て2016年より現職。フィンテックベンチャー企業の経営と、為替リスクヘッジシステム、システム売買ロジックの開発を行う。

為替リスク管理

1. 金利スワップとは

金利スワップとは、満期まで2者間で同じ通貨の異なる金利を交換する取引のことです。交換される金利として①変動/固定 ②変動/変動 ③固定/固定の3つの組み合わせが考えられます。このうち変動金利と固定金利を交換するタイプの金利スワップはプレインバニラスワップと呼ばれ、最も広く取引されています。

2. 金利スワップの仕組み

 例として、満期10年の日本円プレインバニラスワップについて考えてみましょう。1年ごとに固定金利を受け取り、変動金利を支払うとします。固定金利はスタート時点で決定されますが、一方で変動金利はスタート時点では確定していません。

 毎年1回の利払日には、固定金利を元に計算された利息を取引相手から受け取ると同時に、その期間に対応する変動金利を元に計算された利息を取引相手に支払います。なお、この利息の計算に用いられる元本のことを想定元本と呼びます。

 プレインバニラスワップのように、同じ通貨の金利を交換する取引の場合、元本は同じ通貨で同じ金額なので、元本の交換は行わず、利息の交換のみを行います。

3. 金利スワップの利用目的

 この金利スワップはどのような目的で利用されるのでしょうか?個人や企業が金融機関から長期の借入を行う場合、固定金利で借り入れるか、変動金利で借り入れるかを選択します。

 固定金利で借り入れた場合は、一定期間毎に同じ固定金利で計算された利息を満期まで支払い続けます。変動金利での借り入れの場合には、将来の変動金利の水準に連動して支払う利息金額が変わります。どちらの金利を選択するかは、将来の金利水準の見通しによって決定されます。

 ある企業が銀行から期間10年で資金を借り入れるケースを考えてみます。この時点で期間10年の固定金利は2%、1年物の変動金利は0.5%だとします。この企業は今後マーケット金利が大幅に上昇すると考え、固定金利での借り入れを選択しました。

    【借入時】

期間10年
金利固定 2.0%
想定元本1,000万円

 マーケット金利の動向にかかわらず、満期までの10年間、2%の金利を支払い続けます。しかし、借り入れスタート後に将来の金利の見通しを変更し、金利は上昇しないのでは?と考えるようになった場合でも、2%の金利を払い続けなければいけません。

 銀行と交渉して、支払金利を変動金利に変更してもらうことも場合によっては可能ですが、金利スワップを利用すれば借入の条件を変更せずに、実質的に固定金利での借入を変動金利での借入に変更することができます。

 この企業の場合、同じ満期、同じ元本金額の固定受取/変動支払のプレインバニラスワップ取引を行えば(取引相手はどこの金融機関でも構いません)、借入金の固定金利支払いはそのまま続きますが、同時にスワップ取引の取引相手から固定金利を受け取り、変動金利を支払うので、ネットでは変動金利の支払いだけが残ります。

      【金利スワップ実施時】

期間10年
金利変動に変更 
想定元本1,000万円

 また銀行や保険会社などの金融機関は、債券購入や貸出、借入などの取引の投資ポートフォリオで金利リスクを保有しています。将来の金利見通しを元に、ポートフォリオの金利リスクをコントロールしますが、その際にも金利スワップは広く利用されています。

 長期金利が上昇し、長期債の価格が下落すると予想される場合には、保有する長期債を売却する代わりに、固定支払・変動受取の金利スワップ取引を行うことでそのリスクを削減することが可能です。

4. まとめ

 ここまで、金利スワップの仕組みやその利用目的を確認しました。金利スワップを利用することで、当事者が期待する金利のコントロールが可能となり、金融機能を活性化する仕組みであることをご理解いただけかと思います。

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