「トランプ関税のプランBを想像しないでやってはいけない」
松井 隆
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットを担当。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたる事業に従事する。

為替の仕組み


1月20日に米連邦最高裁判所の意見公表日が予定されていましたが、今回もトランプ関税についての判断は下されませんでした。

9日、14日に続いて3回連続の未発表となっています。

これで、次回の意見公表日は2月20日となっていることで、再び宙ぶらりんの状態が続きます。

そもそも、なぜこのような裁判沙汰になったかを振り返りますが、関税に関しては、そもそも大統領が決めるものではなく、議会が決めます。

ただ、非常事態に際して1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)で大統領に特別な権限を付与すると定められています。

トランプ大統領は、戦時下でもなく、テロを仕掛けられたわけでもないにもかかわらず非常事態とし高関税賦課を決定しました。

当然、このようなことは辻褄があいません。

リベラル派判事だけではなくトランプ大統領が指名した保守派の判事からも、(大統領の政治的立場に基づいて連邦政府の法的立場を弁護する)ザウアー訟務長官を厳しく追及されました。

このような経緯もあり、トランプ関税が違憲となるのではないかとの声が高まっているわけです。



違憲判決が下った場合について問われた米通商代表部(USTR)のグリア代表は「プランBがある」と述べています。

プランBとは日本語では「代替案」になります。

では、その代替案は何なのでしょうか?

グリア代表は代替関税と述べていますが、実際どのような関税を取り入れられるか不透明です。

一部為替関係者は、通商不均衡になるドル高是正との声もあります。

ただ、ドル安を声高に述べると、米債安・米株安のトリプル安になる可能性もあります。

よって、ドル全面安ではなく、一部の国とのドル安を合意するとのうわさもあります。

それでは、まず第2次トランプ政権発足の1月20日から1年間(今年の同日までの間)でドルは主要通貨に対してどのような動きになったのか、見てみましょう。

以下対ドルで、その通貨のリターンの割合です。

スイスフラン 13.72%

ユーロ 11.79%

英ポンド 8.89%

欧州通貨は軒並み大幅な欧州通貨高・ドル安になっています。20日以後は更にドルが売られています。

豪ドル 6.96%

NZドル 2.38%

オセアニア通貨に対してもドル安が進んでいます。

メキシコペソ 16.60%

カナダドル 3.16%

USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の対象国に対してもドル安が進みました。

このように、多くの通貨ではドル安が進んだことは、米国の通商不均衡是正には役立っているはずです。

またマレーシア・リンギ 10.89%

タイ・バーツ 9.81%

オフショア人民元 4.40%

と、アジア通貨でもドル安が進んだ通貨もあります。



ただし、

円 ▲1.49%

韓国ウォン ▲2.61%

と日韓両国に対しては、円・ウォン安でドル高が進んでいます。

要するに、日本と韓国に対しては、ドル安・円高(及びウォン高)を求めることは可能でしょう。

実際にベッセント米財務長官は1月14日に「韓国のウォン安はファンダメンタルズと整合しない」「為替市場の過度な変動は望ましくない」と述べています。

また、10月下旬の日米財務相会談後に「ベッセント長官は協議の中で、アベノミクス導入から12年が経過し、状況は大きく変化していることから、インフレ期待を安定させ、為替レートの過度な変動を防ぐ上で、健全な金融政策の策定とコミュニケーションが果たす重要な役割を強調した」と米財務省が発表したことは幾度もここでも記載してきました。

あくまでも、まだどうなるかは分からないトランプ関税の行方ですが、日韓の通貨に対してはドル安を求めてもおかしくはない状況です。

今後どのようなプランBが出ても大丈夫なようにFXはやっていかなければいけないでしょう。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2026年1月26日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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