日銀、利上げに踏み切るも円安
金 星
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。
外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

為替の仕組み
関連するキーワード
image 62

日銀、マイナス金利解除

日銀は今週の金融政策決定会合でマイナス金利を解除しました。また、イールドカーブ・コントロール(YCC)を正式に廃止した一方で、長期国債の買い入れは継続すると表明しました。国債買い入れは継続する一方、長期金利を一定程度コントロールするという政策を継続させ、YCC廃止によって政策が激変することを避ける狙いです。

日銀が利上げも円安継続

日銀は17年ぶりの利上げに踏み切ったが、円安の流れは変わらず日銀政策会合後のドル円は151円後半まで上昇し、昨年の高値151.91円や2022年10月に記録した1990年以来の高値151.95円に迫っています。

市場は日銀の追加利上げ時期に注目していますが、植田総裁が「当面、緩和的な金融環境が継続する」と強調しているように追加利上げへの機運は高まっていません。日銀が金融政策正常化に向かったものの、利上げサイクルに入ったとの見方は高まらず、依然として日米金利差が意識されており、ドル高・円安に傾きやすくなっています。

今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利の据え置きが決定され、今年末までの3回利下げの見通しは変わっていないものの、最近の米経済指標は景気の底堅さを示し、インフレ高も続く懸念もあり、ドルの堅調もドル円の上昇に圧力となっています。

日本当局の円買い介入は?

ドル円が再び2022年につけた1990年以来の高値に接近し、市場では日本当局の円買い介入への警戒感が再燃しています。当局の要員らからは再び円安けん制発言が出ています。

ドル円の34年ぶりの安値となる152円近辺を「介入ライン」とみている関係者は少なくありませんが、米早期利下げか日銀の追加利上げへの見方が強まらない限り、介入で円安を阻止できるかは疑問です。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げは早くても6月との見方が強いが、米利下げまでドル円が日本当局の介入も絡んでどこまで耐えられるかが焦点になりそうです。

日銀の追加利上げ時期

市場では日銀が早くても10月に追加利上げを行うとの見方が多いです。ただ、円安が一段と進み物価上昇が加速すれば日銀は追加利上げを急ぐ可能性があります。日銀は2006年3月に量的緩和を解除した際は、4カ月後の7月にゼロ金利政策も解除し、0.25%への利上げに踏み切った経緯があります。

春闘での賃上げ率が事前予想を大きく上回り、日銀の利上げを後押したが、政府が「デフレ脱却宣言」を打ち出すことはなお難しく、多くの国民にとって物価高の逆風はなお続いており、生活環境改善の実感は持てない状況です。高い賃上げ率の持続性にも懐疑的な見方は残されており、日銀が物価見通しのはっきりした上振れを確認するまで緩和姿勢を続けようとしているのも理にかなうと言えますが、このまま円安が加速すれば頭痛の種になりそうです。

※本記事は2024年3月23日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。

ようこそ、トレーダムコミュニティへ!