「さらば雇用統計・・・経済指標の注目度に変化が起こるのを知らないでやってはいけない」
松井 隆
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットを担当。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたる事業に従事する。

為替の仕組み


米雇用統計はこの数十年に渡って為替市場・金融市場で最も注目されている経済指標の一つです。

先週9日に12月の米雇用統計が発表されましたが、為替・債券市場は結果により上下を繰り返しました。

為替市場では、12月の結果は、失業率が予想より低下したことでドル買いに反応。

しかし、非農業部門雇用者数変化が予想より悪化したことでドル売りに。

さらに、過去2カ月分も下方修正されたこともドルの押し下げ要因になりました。

(その後は他の要因でドル買いになりました)



この雇用統計については、以前やってはいけないこれだけの理由 第160回「雇用統計を妄信してやってはいけない」に記載しましたが、信頼性を失いつつあります。

昨年8月1日に発表された同指標で、過去2カ月分の修正があまりにもショッキングな内容で、これまでの1.6万人増加が25.8万人減少と大幅に下方修正されました。

この結果に怒ったトランプ大統領は労働省労働統計局(Bureau of Labor Statistics=BLS)局長を解任してしまいました。

その影響や米政府機関の一部閉鎖もあり、市場も徐々に雇用統計を見るべき数値に迷いが出てきています。

パウエルFRB議長も「我々は月6万人程度の過大計上があると考えている」と発言するほどになっています。

更に今回酷かったのが、雇用統計発表前日8日にトランプ大統領が雇用統計の内容をSNSに投稿してしまったことです。

大統領は前日に統計の結果のブリーフィングを受けているから、このようなことが起こってしまったわけです。

特に、上述のようにBLSはトランプ支持者で固められているわけですので、数値の信頼性がさらに失われています。



これまでの常識がまったく通じないトランプ大統領ですので、自分に都合の悪いことは決して言いません。

(逆に、まったく根拠のないことを平然と人前で述べるのも日常茶飯事です。

南アの大統領の前で、南アで起こった虐殺ではない写真をみせて、南アは酷いと言い放ち、その後の修正も謝罪もありません。

ネットの世界と同じで、嘘を言い続ければ真実になってしまうような様相です。)

自分の手柄となるものは、通常あり得ない経済指標の内容を前日に平気でSNSにあげるのがトランプ大統領です。

逆に、今後発表される経済指標で、トランプ政権にとって良くない(悪い)経済指標となる場合は、トランプ大統領は前日にSNSに何も投稿しないのかもしれません。

止められないトランプ大統領の動向は、SNSに投稿がない場合は逆手にとってドル売りの取引ができる可能性があるのかもしれません。

いずれにしろ、ここまで米国の大統領が常識を超えていることで、その行動を逆手にとってFXもやらないではいけないでしょう。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2026年1月12日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


関連記事
金の台頭、ドルの支配に影響

基軸通貨であり続けるドル 米国の影響力は Read more

「ドンロー主義」と個人投資家の付き合い方

国際社会の2026年の年明けは、アメリカ Read more

「ベネズエラ大統領拘束」マーケット心理を揺らす

年明け早々、米国による「ベネズエラ大統領 Read more

ようこそ、トレーダムコミュニティへ!