
米政権の半導体関税に注目
先週末に米中は閣僚級の協議を行いお互いに関税を大幅に引き下げ、市場では2大経済大国の貿易戦争の激化懸念がいったん和らいだが、米国が中国を覇権争いの相手と敵対心をむき出しており、今後も両国の摩擦は簡単には収まらないでしょう。米中の関税合戦が落ち着くなか、市場は近くにも発表される可能性があるトランプ米政権の半導体関税に注目しています。
半導体を制するものが世界を制する
近年、電機業界には経済安全保障、資源高、脱炭素、デジタル変革(DX)など、経済環境の変化に関わるさまざまな要因が交錯しており、そのすべてに関係してくるのが半導体です。半導体は戦略物資としての役割が増し、「半導体を制する者が世界を制する」との言葉が現実味を帯びており、主要国は自国の半導体支援に戦略を強めています。
中国、半導体産業の急速な成長
近年、中国は半導体産業で成長を続けており、昨年の中国半導体の輸出額は年間1兆元を超えるに至りました。
厳しい審査を伴う国際学会での採択論文数は、各国・各地域の半導体分野における競争力の一つの指標とされているが、今年のVLSIシンポジウム(Symposium on VLSI Technology and Circuits)は6月に京都で開催される予定です。VLSIが公表した地域別の投稿論文数を見ると、2006-2010年頃は、米国が1位、日本が2位であったが、日本は2010年以降急激に投稿数を減らしています。また、米国も減少傾向で、2022年まではかろうじて1位を維持しました。2020年頃から投稿を増やしていた韓国と中国が2023年に米国を追い抜き、2024年には中国が1位、韓国が2位に浮上し、2025年に中国はさらに投稿数を伸ばしています。
投稿数の増加はその地域の半導体分野における競争力の向上を意味しており、ここ数年半導体関連で研究者や技術者の数を増やし、競争力を着実に高めているのは韓国と中国であると言えます。半導体で、今後米中の摩擦が激化する可能性は大いにあります。
米政権、半導体をめぐるこれまでの制裁
米政権は中国が絶対に米国の半導体技術を越えないように、あらゆる手段で対中制裁を強化してきました。しかし対中制裁をすればするほど、中国は自力更生を強化し、成長を続けています。
米政権の対中制裁はトランプ氏の第一次政権の2017年辺りから始まり、2019年に激化しました。2021年からバイデン政権に移っていったものの、バイデンもまた対中制裁強化というトランプ前政権の政策を受け継いだので、制裁は一層激しくなりました。米政権は単独の措置にとどまらず、日本およびオランダにも協調を要請する構図で制裁を拡大したが、大きな効果は得られていません。
どの政権に代わっても、「米国を豊かにする」というよりは「米国が中国などに負けてはならない」ということが先に立ち、ともかく「どのようなことがあっても中国を潰そうという方向」に動くが、世界は米国のためにのみあるのではなく、米国が世界の法律だという風にもなりません。
半導体産業、中国の旋風
トランプ氏の第2次政権でも半導体をめぐり、中国をけん制する動きが加速しそうだが、世界の半導体産業において中国旋風が吹き荒れる時代が到来しつつあります。中国は、半導体のみならず、製造装置や材料の国産化にも取り組んでおり、10年以上にわたり継続されてきた中国の半導体政策がいよいよ成果を見せ始めています。
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※本記事は2024年5月17日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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