「ドンロー主義」と個人投資家の付き合い方
この記事の著者
独立型ファイナンシャルプランナー

株式会社FP-MYS 代表取締役
1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

為替の仕組み

国際社会の2026年の年明けは、アメリカによるベネズエラ大統領の拘束報道で幕を開けました。独裁者を確保したという功績とともに、国際法違反ではないのかという指摘も根強い軍事作戦の評価となりました。そのなかで、記者会見のなかでトランプ大統領が述べた「ドンロー主義」という言葉が注目されています。



ドンロー主義とは、トランプ政権の外交方針を反映した概念です。およそ200年前の1823年、アメリカ第5代大統領のモンロー氏が発表した「モンロー主義」を基準としています。アメリカはヨーロッパ諸国の戦争や内政に関わらないので、ヨーロッパ諸国もアメリカ大陸には手を出すなという趣旨です。

ドンロー主義は、このモンロー主義にドナルド・トランプの『ド』をひっかけています。モンロー主義におけるアメリカを西半球とし、北米・南米のアメリカ大陸を支配下に置くことを最大の狙いとしています。アメリカが大統領を拘束したベネズエラと、次段階に警告をしているコロンビアはどちらも南米大陸の北部に存在します。また、トランプ政権がかねてより所有を主張しているグリーンランドも、ドンロー主義でいうところの西半球に該当すると見られています。筆者は本メディアで、「なぜアメリカはグリーンランドを欲しがっているのか」を執筆したときに、理由を分析しています。



ベネズエラの大統領拘束の第一報が流れたとき、相場はどのように反応したのでしょうか。

為替はベネズエラ事変をどう見たか

引用:Trading View(以下のチャートも同様)

為替は2026年1月2日を天井としてそれまでのドル高基調が転換、ドル売りが進みました。拘束の目的の1つがベネズエラに埋蔵される石油とされたことで、ビジネスの拡大を目論むアメリカの石油関連企業は株高が続いています。米ドルも評価されそうな流れですが、今回の強権的な軍事作戦を「国際法違反」という指摘も根強く、またアメリカが今後も別の国へ軍事力行使をする可能性から、ドル売りが進んでいると考えられます。

もうひとつの視点は、世界の基軸通貨としてのドルの立ち位置です。今回のアメリカの行動によって、「武力を持って他国の首脳を拘束すること」が正当化されたという指摘があります。ウクライナに侵攻するロシア、台湾への侵攻を狙う中国などに対し、アメリカ(=国際社会の主に西側諸国)が抗議しづらくなるという側面があります。これもドル安を助長していると考えられます。

株式相場はどう反応したか

一方の株式相場はどのように反応したのでしょうか。ナスダック・NYダウと日経平均を比較しましたが、いずれも2025年末の高値が年末・年明けに向けて下落基調に入っていたものの、ベネズエラの第一報を受けて日足が上昇しています。

ベネズエラ事変単体ではアメリカの各種産業にとってメリットがあり、特に石油産業は国内関連事業にとって追い風となるでしょう。ただ、ドンロー主義の影響という長期的視点では異なります。石油に関しても世界における需要・供給バランスを崩すことで、値段が乱高下する可能性があり、プラス効果だけだと好意的に評価するだけではありません。



そもそもドンロー主義はアメリカの行動を正当化(少なくともアメリカがそう思っている)だけに留まらず、他国にも同等の権利を示唆することになります。ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領、2027年までの台湾進攻を見据える中国の習近平国家主席にとっては、自国の行動がお墨付きを受けたと解釈することもできるでしょう。

特に日本株に大きな影響をもたらすのが中国の台湾進攻です。習近平氏は2027年11月の共産党大会において任期延長を目指しているといわれているなか、国内経済の不況を吹き飛ばす「成果」を求めているとみられています。台湾の全面的な抵抗が予想されるなか、2027年になってからの侵攻開始では時間が足りません。そこで2026年内に侵攻する「大義名分」が欲しかったところへ、今回のドンロー主義による正当化の兆し?が生じたといえるでしょう。中国がアメリカの侵攻に対し公式な声明を出したとは報道されていませんが、自国に置き換えての準備が進んでいるはずです。

台湾有事が発生すると、距離の近い南西諸島・八重山諸島では集団避難が想定されています。また流通や観光にとどまらず、日本本土へ石油などを送るシーレーンにも多大な影響があるとみられています。アメリカの新機軸を受けて各国はどう動くのか。今回のベネズエラ介入は、国際社会の構図が大きく変わるきっかけになっていくのかもしれません。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2026年1月9日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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