【指値オペとは?】円安を引き起こした指値オペレーション!いまさら聞けない金利との関係
浦島 伸一郎
この記事の著者
ジーフィット co-CEO&CTO

プロフィール:外資系証券会社で、オンライン証券取引システム、証券決済システム、米国国債・欧州国債・日本国債などの国債取引所の開発および運営を担当、その後国内証券会社、FX業者などを経て2016年より現職。フィンテックベンチャー企業の経営と、為替リスクヘッジシステム、システム売買ロジックの開発を行う。

為替関連用語解説

日本円の価値が急落する円安が続いています。その原因のひとつとして指摘されているのが、日本銀行が行う金融政策のひとつである「指値オペレーション」です。本記事では、指値オペレーションとは何か、その仕組みと、円安との関連について解説します。

1.指値オペとは?

指値オペレーション(指値オペ)とは、日本銀行が指定した利回りで、金融機関から国債を無制限に買い入れることができる公開市場操作(オペレーション)のことです。

通常の国債買い入れオペレーションでは、買い入れ金額を、例えば4,250億円などと明示して実施しますが、指値オペレーションは金額に制限をつけず買い入れるもので、特別かつ強力な措置と言えます。

2.指値オペの目的

指値オペレーションの目的は、長期金利を操作することです。長期金利とは、10年物国債などの長期債の利回りのことで、景気や物価に大きな影響を与えます。

日本銀行は、2016年9月に金融政策の新たな枠組み「量的・質的金融緩和(イールド・カーブ・コントロール、YCC)」を導入しました。YCCでは、長期金利の目標を「0%程度」と設定しています。指値オペレーションは、YCCの目標を達成するために、必要に応じて長期金利を操作する手段として用いられます。

3.指値オペの仕組み

指値オペレーションの仕組みは、以下のとおりです。

  •   日本銀行は、指値オペレーションの実施を発表します。
  • 金融機関は、日本銀行に国債を売却します。
  •   日本銀行は、指値オペレーションで指定した利回りで、金融機関から国債を無制限に買い入れます。

指値オペレーションでは、日本銀行は金融機関から国債を無制限に買い入れるため、金融機関は国債を売却することで、現金を受け取ることができます。また、指値オペレーションによって、市場に国債の供給量が増えるため、長期金利は下落する傾向にあります。

4.指値オペと円安

指値オペレーションは、円安を引き起こしたことでも話題になりました。指値オペレーションによって、長期金利が下落すると、円の利回りが低下するため、円の価値は下落する傾向にあります。実際に、2022年2月に日本銀行が指値オペレーションを実施した後、円相場は急激に下落しました。

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*外国為替相場チャート表(三菱UFJ銀行)、URL:https://www.bk.mufg.jp/tameru/gaika/realtime/chart.htmlを加工)

5.指値オペの今後

日本銀行は、2023年7月の金融政策決定会合で、指値オペレーションの実施ラインを1.0%に引き上げ、さらに10月には利回りの上限の目処を1.0%とするとし、実質的に10年国債利回りの1.0%超えを容認しました。これは期待インフレ率の上昇に沿った政策の変更であるとともに、長期金利の上昇を許容することで円安を防止する狙いもあるとみられます。

まとめ

YCCの再柔軟化により、国債10年物利回りの1.0%以上への上昇を実質的に容認し、日銀が大量の国債を指値オペで買い続けなければいけない。というリスクを回避することができました。

世界的な長期金利上昇、国内の中長期期待インフレ率上昇という環境で、国内長期金利上昇圧力が高まっている以上、財政ファイナンスのリスクや国債市場の機能不全のリスクを考慮しての判断だったと考えられます。

一方で、YCCの完全撤廃や政策金利変更にはまだ時間がかかるとの見方が大勢です。米国の長期金利の上昇も落ち着き、来年には利下げ観測も台頭しています。YCCの目的である物価上昇率2.0%の達成にはまだ不確実性があると考えられ、日本銀行としてはより慎重な姿勢で今後の対応を探っていくことになると思われます。

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