「次期FOMC投票メンバー」2026年の米金融政策の行方
関口 宗己
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

1987年商品取引会社に入社、市場業務を担当。1996年、シカゴにて商品投資顧問(CTA)のライセンスを取得。
市況サービス担当を経て、1999年より外国為替証拠金取引に携わり、為替ブローキングやIMM(国際通貨先物)市場での取引を経験した。2006年2月にマネーアンドマネー(現・DZHフィナンシャルリサーチ)記者となる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CTMA2)。日本ファイナンシャルプランナー協会AFP。

為替の仕組み

2026年に就任することになる「次期FOMC投票メンバー」の地区連銀総裁の面子は、タカ派・ハト派のバランスが取れた構成に入れ替わりそうです。利下げ余地はあるものの慎重な姿勢となり、マーケット参加者は各メンバーの発言と構成を踏まえ、短期的利下げ期待と中長期のインフレリスクを見極めつつポジション調整を行うことになるでしょう。



アメリカの中央銀行にあたる連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策決定の投票権を有するメンバーは、FRB理事7名と地区連銀総裁5名の計12名です。

2026年に新たに投票権を得る「次期FOMC投票メンバー」は、

・ハマック・クリーブランド連銀総裁(タカ派)

・ローガン・ダラス連銀の総裁(タカ派)

・ポールソン・フィラデルフィア連銀総裁(中立・ハト派寄り)

・カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁(中立・ハト派寄り)

以上です。

理事の中では、パウエル議長の退任に伴う後任も含めハト派(金融緩和派)寄りの変動が見込まれますが、全体としては中立を軸とした比較的バランスが保たれる見通しです。

ちなみに2025年まで投票権を持っていたのは

・ムサレム・セントルイス連銀総裁(タカ派寄り)

・コリンズ・ボストン連銀総裁(中立)

・シュミッド・カンザスシティ連銀総裁(タカ派寄り)

・グールズビー・シカゴ連銀総裁(ハト派寄り)

以上は投票メンバーから外れます。

やや偏りのあった状態から、よりバランスの取れた状態へ2026年は変化しそうです。



「次期FOMC投票メンバー」の最近の発言を整理すると、ハマック・クリーブランド連銀総裁は追加利下げに慎重で、インフレリスクへの警戒を繰り返し示唆しています。ローガン・ダラス連銀総裁も直近の利下げを否定し、過度な緩和を避ける必要性を強調しています。

一方、ポールソン・フィラデルフィア連銀総裁は利下げに傾きつつも、経済データに基づく慎重な判断を維持しています。カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁も既存の利下げ路線に一定の距離を置き、慎重な政策運営を示しています。

整理すると、利下げについてハマック・クリーブランド連銀総裁やローガン・ダラス連銀総裁が即時実施には否定的で、段階的・限定的な対応を想定しています。ポールソン・フィラデルフィア連銀総裁やカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁も同様に、経済データを注視した上での判断を前提とする方針。また、次期議長候補の1人とされる連邦準備理事会(FRB)のハセット理事(中立寄り)は、トランプ大統領の意向に左右されず、データに基づく政策決定の独立性を重視する姿勢を示しています。

これらを踏まえると、ハト派・タカ派・中立派のバランスが保たれた「次期FOMC投票メンバー」の直近発言から、2026年は各「次期FOMC投票メンバー」は総じて、利下げ余地はあるものの慎重で、インフレ警戒と政策独立性を重視する姿勢が読み取れます。

金融マーケットでは、こうした内容を反映しつつ、経済指標次第で柔軟な対応が求められる状況が続くと考えられます。年末に差し掛かった現況でも、「次期FOMC投票メンバー」の発言内容から、2026年の金融政策がマーケットへ与える影響を先取りして売買に活用する動きも、次第に目立ってきそうです。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2025年12月17日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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