NZドル円(nzdjpy)相場予想、追加利下げ濃厚も下落トレンドは終了か?
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。

外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。

国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

為替の仕組み

今回解説していく通貨はニュージーランド(NZ)ドル/円です。NZ準備銀行(中央銀行、RBNZ)は4月9日に開催した直近の金融政策決定会合で政策金利を予想通り3.75%から3.50%へと引き下げました。その際の声明では「必要に応じてさらなる金利引き下げを行う余地がある」との見解を示しており、来週(5月28日)の会合でも0.25%の利下げが実施される見込みです。

その一方で、この間にもNZドル相場を含めた為替市場を巡る環境は大きく変化しており、前週には米国と中国が期間限定ながらお互いの関税を大幅に引き下げることで合意。さらに今週(20-22日)の日程で開催される主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に併せて日米財務相会談が実施される予定で、そこで為替について協議されるとのことから、市場では日米交渉での円安是正議論への思惑が高まっています。

では、チャート上でもNZドル円の状況を確認していきましょう。



下図のチャートはNZドル円の週足チャートになります。前回の分析(2025年2月26日)からどのように推移したかを見ていきますと、4月に入って売りの流れが強まり、4月初旬には一時79.82円まで下押し。ただ、その後は一転して買い戻しが進み、前週には87.73円まで下値を切り上げる動きとなりました。

昨年8月5日につけた直近の安値83.07円(チャート上の丸で囲った部分)はしっかりと下抜けたものの、2020年安値から昨年高値までの上昇幅に対する「フィボナッチ・リトレースメント」の半値押し水準が位置する79.20円手前では下げ止まり。同水準付近には2022年半ばから1年以上に渡って下値を支えてきた80円前後の水準(チャート上の四角で囲った部分)もあり、この辺りがサポートとして機能したと判断してよいでしょう。

いったんは下値を確認した格好となったため、今後のNZドル円の見通しについても新たな方向性を模索する必要がありそうです。



では日足から次の方向性に関して探っていきます(下図のチャート)。

前回に指摘した昨年11月高値を始点とする短期の下降トレンドライン(チャート上の青色実線)、および「チャネルライン(青色点線)」は上下双方ともにブレイクしていますが、より重要なラインは当然ですが下降トレンドラインの方であり、今年3月の直近高値を上抜けていることも考慮すると、昨年11月からの下落トレンドが終了した可能性が濃厚です。

また、今回のチャートに追加した「一目均衡表」で見ても、現状は転換線>基準線、価格線>抵抗帯(雲)、遅行スパン>価格線が成立しており、強い買いシグナルとされる「三役好転」が点灯しています。

テクニカル的には上方向への期待度が高まっている状況ですが、今後に関しては昨年末から今年1月にかけて上値を抑えられた90.00円前後(チャート上の四角で囲った部分)が上値の目標となるでしょう。

ただ、チャート上から見ても分かる通り、直近では為替レートの価格変動が大きく、値動きの荒い展開となっているため、取引を行う際には十分な注意が必要となります。



最後に今後1カ月間の経済指標や重要イベント等も確認しておきます。最大の注目材料は日本およびNZ中銀の金融政策です。日銀は前回(4月30日-5月1日)の会合で政策金利の据え置きを決めましたが、その際に基調的な物価の2%目標達成時期をやや後ずれさせており、今回の会合でも金利は据え置かれる見込み。

一方で、NZ準備銀行(RBNZ)は前述した通りに金利の追加利下げを行う見込みとなっていますが、両中銀とも声明文の内容などから最新のインフレ・金融政策見通しなどを確認しておく必要があるでしょう。

また、日米財務相会談の行方にも注目が集まります。トランプ米大統領の志向が米貿易赤字とドル高の是正にあることは明らかですが、以前にその方針を強力に推し進めた結果、「米トリプル安(株安・債券安・ドル安)」を招いたこともあり、現在は米国側のトーンも落ち気味です。こうした流れから考慮すると、米国側がはっきりと円安ドル高の是正を求める可能性は決して高くないと思われますが、思惑的な動きも含めて円相場全般が振らされるリスクには警戒するべきでしょう。

もちろん前週にいったんは懸念が後退した米中貿易摩擦、米国と各国の貿易交渉の行方等もマーケットに影響を与える要素として最新の関連情報・ニュースなどを確認しておきたいところです。

その他のイベントは以下の通りとなります。

今後1カ月の重要イベント

5月23日 日本 4月全国消費者物価指数(CPI)

5月28日 NZ RBNZ、金融政策決定会合

6月16-17日 日本 日銀金融政策決定会合

6月20日 日本 5月全国CPI


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2024年5月21日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


関連記事
信認低下のドル、売り圧力が継続

ドルの軟調な動きが継続 4月に米中の関税 Read more

「米国債格下げ」米金利上昇もドル買えない

ムーディーズの「米国債格下げ」で主要格付 Read more

ようこそ、トレーダムコミュニティへ!