政策金利の基礎から各国の最新動向までをわかりやすく解説
浦島 伸一郎
この記事の著者
ジーフィット co-CEO&CTO

プロフィール:外資系証券会社で、オンライン証券取引システム、証券決済システム、米国国債・欧州国債・日本国債などの国債取引所の開発および運営を担当、その後国内証券会社、FX業者などを経て2016年より現職。フィンテックベンチャー企業の経営と、為替リスクヘッジシステム、システム売買ロジックの開発を行う。

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政策金利とは、中央銀行が金融機関に貸し出す際に設定する金利のことです。中央銀行は、この金利を調整することで、経済を安定させるための金融政策を行います。本記事では、政策金利の基礎から、各国の最新動向までをわかりやすく解説します。

1.    政策金利とは?

 政策金利の定義、決定主体、役割、について詳しく解説します。

1-1.政策金利の定義

 政策金利とは、中央銀行が金融機関に貸し出す際に設定する金利のことです。中央銀行は、この金利を調整することで、経済を安定させるための金融政策を行います。

 例えば、景気が悪化したとき、中央銀行は政策金利を下げることで、企業や個人が金融機関からお金を借りやすくし、景気を刺激します。逆に、景気が過熱し、インフレ率が上昇しているときは、中央銀行は政策金利を上げることで、企業や個人の借入を抑制し、インフレを抑えます。

1-2.政策金利の決定主体

政策金利の決定主体

 政策金利は、中央銀行が決定します。中央銀行とは、国や地域の金融を統括する機関のことです。日本では、日本銀行が中央銀行にあたります。

 中央銀行が政策金利を決定する際には、経済状況を総合的に判断します。経済状況の判断には、主に以下の指標が用いられます。

  • GDP(国内総生産)
  •  失業率
  •  消費者物価指数(CPI)
  •  卸売物価指数
  •  景気動向指数

中央銀行は、これらの指標を分析し、経済の安定を図るために必要な政策金利水準を判断します。

1-3.政策金利の役割

政策金利は、中央銀行が経済を安定させるために使用する、重要な金融政策ツールです。政策金利には、以下の3つの役割があります。

  • マネーサプライの調整
    • 政策金利を下げることで、中央銀行は金融機関に貸し出すお金を増やします。これにより、金融機関は企業や個人に貸し出すお金を増やすことができ、マネーサプライが増加するでしょう。マネーサプライが増加すれば、お金の流通量が増え、景気が刺激されます。
      逆に、政策金利を上げることで、中央銀行は金融機関に貸し出すお金を減らします。これにより、金融機関は企業や個人に貸し出すお金を減らさざるを得なくなり、マネーサプライが減少するでしょう。マネーサプライが減少すれば、お金の流通量が減り、景気が冷え込みます。
  • 金利水準の決定
    • 政策金利を調整することで、中央銀行は金利水準を決定することが可能です。金利水準は、経済活動に大きな影響を与えます。金利が低いときは、企業や個人が借入しやすくなるため、投資や消費が増え、景気が刺激されるでしょう。一方、金利が高いときは、企業や個人が借入しにくくなるため、投資や消費が減り、景気が冷え込みます。
  • 通貨の価値の決定
    • 政策金利を調整することで、中央銀行は通貨の価値を決定することができます。金利が高い国は、通貨の価値が高くなりやすくなるでしょう。一方、金利が低い国は、通貨の価値が低くなりやすくなります。

このように、経済を安定させるために重要な役割を果たしているのが政策金利です。中央銀行は、経済状況を総合的に判断し、適切な政策金利水準を決定することで、経済の安定を図っています。

2. 各国の政策金利

各国の政策金利の特徴と現行の水準は、下表の通りです。

国・地域政策金利の名称決定主体現行金利(2023年11月13日現在)
日本日本銀行当座預金の政策金利残高の金利日本銀行の金融政策決定会合-0.10%
アメリカフェデラル・ファンド金利(FF金利)誘導目標FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)5.25%~5.50%
欧州欧州中央銀行(ECB)の預金金利ECBの定例理事会4.5%
イギリス準備預金金利イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)5.25%
中国最優遇貸出金利1年物中国人民銀行(PBoC)の金融委員会3.45%

*出典:2023年 – 各国政策金利」、URL:https://mst.monex.co.jp/pc/servlet/ITS/report/CommonReport?serviceProviderKbn=04&documentClass=02

主要国・地域の政策金利の推移

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「各国政策金利」、URL:https://www.moneypartners.co.jp/market/bank-rate/を加工

3. 政策金利の今後の展望

政策金利の今後の展望について、インフレ率と政策金利の関係と今後の世界経済の見通しについて解説します。

3-1.インフレ率と政策金利の関係

インフレ率とは、物価水準が前年比でどのくらい上昇したかを表す指標です。政策金利とは、中央銀行が金融機関に貸し出す金利のことです。一般的に、インフレ率が上昇すると、政策金利も引き上げられます。これは、インフレ率の上昇を抑制し、経済の安定を図るためです。

政策金利を引き上げると、金融機関の貸出金利も上昇します。これにより、企業や個人の借入コストが高くなり、消費や投資が抑制されます。また、為替レートが上昇するため、輸入品の価格も上昇し、インフレ率の抑制につながります。

一方、インフレ率が低下すると、政策金利は引き下げられる可能性があります。これは、景気を刺激し、経済の成長を図るためです。政策金利は、インフレ率を抑制したり、景気を刺激したりするために、中央銀行が重要な金融政策ツールとして活用しています。

3-2.世界経済の見通し

2023年の世界経済は、2022年に引き続き、高インフレと金融引き締めによる景気減速が懸念されています。

最新の調査(「格差広がる世界の舵取り」2023年10月、URL:https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2023/10/10/world-economic-outlook-october-2023)によると、国際通貨基金(IMF)は、2023年の世界経済成長率を4.06%と予測しています。

IMFは、高インフレと金融引き締めが、世界経済の成長を抑制する要因になると見ています。また、ロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクも、世界経済の下振れリスクとなっています。

地域別では、米国経済は、雇用市場の堅調さや財政拡大の影響で、2023年も堅調な成長が続くと見込まれています。一方、欧州経済は、ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁の影響で、成長率が鈍化する見込みです。中国経済も、ゼロコロナ政策による経済活動の制限が続くため、成長率が低下すると見込まれています。

新興市場・途上国経済も、高インフレや金融引き締め、地政学リスクの影響で、成長率が鈍化する見込みです。

4.まとめ

政策金利は各国の経済において重要な手段であり、金融政策の中核をなす要素です。各国の最新動向を追うと、景気刺激策や通貨安政策の影響で、政策金利の変動が見受けられます。特にアメリカや欧州ではインフレ懸念から利上げが行われ、これが金融市場に及ぼす影響も注目されています。

一方で、日本は景気浮揚を目指し、依然緩和的な金融政策を、原則として、維持・継続しています。これらの動向は国際的な経済にも大きな影響を与え、投資家や企業は慎重に市場を観察することが必要です。

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