円相場のカギは日本国債
金 星
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。
外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

為替の仕組み


1月23日に日銀は市場予想通りに金融政策の据え置きを決定しました。そして、植田日銀総裁の会見内容は市場が期待したほどタカ派寄りではなかったこともあり、円売りが継続。ドル円は一時159.23円と1月14日につけた2024年7月以来の高値159.45円に迫ったが、植田日銀総裁の会見後と、NYタイムでは2度急落する場面が見られました。

市場では日米が介入の準備段階とされるレートチェックを行った可能性が高まり、協調介入への警戒感から先週も円買いが先行し、ドル円は一時152.10円まで急落しました。ただ、ベッセント米財務長官がドル売り・円買い介入を否定したことや、トランプ米大統領は米連邦準備理事会(FRB)の次期議長に、議長候補の中でも相対的にタカ派とされるケビン・ウォーシュ氏を指名すると発表したことを受けたドル買いを支えに週末には154円後半に持ち直しました。

レートチェック:中銀が銀行などの市場参加者に取引水準に関して問い合わせること。レートチェックでは市場参加者に実際の為替介入と同様の注文を出した上で現在の売値や買値を提示させ、その後に「ナッシング(注文をキャンセルする)」と伝えます。「ナッシング」の代わりに外貨を買ったり売ったりする意思を伝えれば為替介入が成立するだけに、レートチェックは介入の準備段階として意識されています。

財務省は30日、12月29日-1月28日に外国為替市場で為替介入を実施しなかったことを明らかにしました。今後、ドル円が再び160円大台を意識した動きになると、市場では介入警戒感が再燃するのは間違いないでしょう。介入警戒感が引き続きドル円の上値を抑える要因となりますが、日本の財政不安への懸念が払しょくされない限り、円安圧力は続くと想定されます。



日銀の金融正常化に向けた動きを背景に、日本国債の利回りは去年から緩やかに上昇していたが、高市政権が誕生し同政権の財政計画によって既に膨らんでいる債務負担がさらに増すとの懸念から、日本国債は大きく売られ利回りは一段と急上昇しました。

衆院選で高市与党の勝利予想が多く、市場の積極財政への懸念は根強いです。円安に歯止めをかけられるのは、高市政権が市場の信認を得られるかどうかです。日本国債市場に投資家の資金が戻るようになると、円高に傾く可能性が高いとみています。

ただ、財政懸念は簡単には払しょくされません。今、選挙で与野党のほぼすべてが「消費税減税」を掲げる異例の構図となっているが、減税合戦が進めば日本国債は格下げされるのではないかという懸念も出ています。

ただ、市場が一番懸念しているのは減税合戦ではなく、日本という国が「将来にわたって国債の利息と元本を返し続けられるのか」という点にあります。つまり、市場や格付機関は政策が将来の成長と税収につながるのか、それとも一時しのぎに終わるのかを重要視しています。

日本国債は今すぐ危機に瀕しているわけではありません。しかし、「何をしても大丈夫」な状態でもありません。重要なのは、日本が安全か危険かという二者択一ではなく、「どの条件を満たしていれば、日本国債の信用は保たれるのか」を理解することです。日本政府が、今の国の借金が「将来の成長や税収につながる」と説得力がある答えを市場に出すことができれば、債券市場は安定を戻し、為替市場でも円高に振れる可能性があります。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2026年1月31日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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