トランプ氏、米中をG2と表現
金 星
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。
外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

為替の仕組み


世界の2大国である米国と中国の関係は世界の経済に大きな影響を与えており、両国の関係は金融市場で常に焦点となっています。

2009年1月に親中派と見られる民主党候補のバラク・オバマが大統領に就任するのに伴い、両国の協力と友好関係の緊密化が期待されました。中国側もオバマの勝利に肯定的な反応を示し、米国ではG2(チャイメリカ)という二大大国を意味する言葉が使用され、米中接近が演出されました。ところが中国の経済発展が著しく、世界で影響力を強める中、2011年11月にオバマ米大統領は米国の世界戦略を「対中国抑止」へと転換することを宣言しました。

オバマ米政権が「中国の膨張を抑止する」という強い国家意志を示したことに対し、中国も警戒感を強め、米中両国がアジア太平洋地域で互いに覇権を求めないという1972年の米中共同声明の実質的破棄を意味し、米中冷戦時代の幕開けとなります。ただ、リムパック(環太平洋合同演習)では中国の参加を認め、気候変動問題ではオバマはパリ協定を中国・杭州で同時批准するなど米中協調も続きました。



2016年の米大統領選に勝利したトランプ氏は「米国第一主義」を宣言し、米中貿易の不均衡を問題視しました。対中関税を強め、中国は応戦し、両国の貿易戦争が勃発しました。

トランプ氏の第2次政権でも関税政策の下で世界中に関税を強化したが、中国は屈せずすぐに報復措置で反応しました。力で世界中に関税をばらまいたトランプ米大統領にとって、自分の言いなりにならない中国は頭痛の種となりました。対中政策に二転三転するトランプ氏を皮肉って、TACOという造語が生まれています。TACOは「Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビってやめる)」の頭文字をとった言葉です。



トランプ米政権の対中規制強化に中国は真正面から対抗したが、10月末に米中首脳会談が実現され、米政権は合成麻薬フェンタニル対策の不備などを理由とした20%の対中追加関税を10日から10%に下げ、中国政府も大豆などへの対米関税を同日に停止すると明らかにしました。

トランプ米大統領は会談について、「100点満点中120点」と表現し、会談後に習中国国家主席を見送るようなおもてなしを見せていましたが、その光景からはやはり超大国・米国にとって、中国との関係はおろそかにできないものであり、極めて慎重に管理すべき「アキレス腱」なのだという現実を突きつけています。



トランプ米大統領は米中首脳会談を巡り、自身のSNSに「中国の習国家主席とのG2会談は両国にとって非常に有意義だった」と記し、10月30日に習氏と会う直前にも「G2がまもなく開催される」と書き込んでいます。

G2は米中2カ国で世界を仕切り、けん引する意味で使われたことがあり、大統領の使用は異例とみられています。G2はオバマ元米政権下などで取り沙汰されました。トランプ氏の真意は不明だが、G2論が蒸し返されれば日本を含む同盟国に動揺が広がる可能性があります。



米国が世界でその影響力が徐々に衰えているのは確かであるが、まだ世界一の軍事・経済力を誇っており、中国が先に「喧嘩を売る」ことはしません。ただ、米国が中国に対しいくら規制を強めても中国はこれからも一貫して「売られた喧嘩は買う」という姿勢で屈することなく、対抗すると思われます。

中国は習国家主席主導の「科学技術強国」を目指し、先端技術でますます力を強めると想定されます。米中の貿易摩擦はいったん休戦したが、両国の摩擦は結局「覇権争い」であり、簡単に収まることはないでしょう。

中国の謝駐米大使は米中ビジネス協議会のイベントで、台湾と民主主義・人権、中国の政治体制、発展の権利を中国政府にとって4つのレッドライン、つまり越えてはならない一線だと明言し、米中首脳会談で合意した貿易をめぐる休戦を維持するためにはこの4つの問題を避けるようにと、トランプ米政権をけん制しました。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2025年11月8日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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