「ドル円、結局1カ月前と同様の結果に」
中村 知博
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。
外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

為替の仕組み

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今週のドル円は氷見野日銀副総裁の「不確実性はなくならない」との発言や自民党・森山幹事長を始めとする自民党4役の辞任表明などを受けて円売り・ドル買いが先行。市場では「海外勢がかなり食いついていた」との声が聞かれました。また、英財政懸念などを背景にポンドドルが急落すると、全般ドル高の流れに沿うかたちでドル円も上値を試す展開に。3日の夕刻には一時149.14円と8月1日以来約1か月ぶりの高値を付けています。「すわ、足もとのレンジブレイクか?」と思いきや、週末に失速。結局、ここ1カ月のレンジが続くことになりました。

週末5日に米労働省が発表した8月米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比2.2万人増と予想の7.5万人増を下回りました。米連邦準備理事会(FRB)が大幅な利下げに動くとの見方が強まり、幅広い通貨に対してドル安が進行。米長期金利の指標となる10年債利回りが一時4.0609%前後と約5カ月ぶりの低水準を付けたことも相場の重しとなり、ドル円は146.82円まで押し戻されています。結局、1カ月前と同様に、200日移動平均線に上値を抑えられた格好となりました。

*Trading Viewより

市場関係者からは「低調な米雇用統計は今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%の利下げをほぼ決定づけた」「インフレ率は2%の目標を上回る状況ではあるものの、FRBは物価安定に関する責務よりも労働市場の安定を優先する公算が大きい」との声が聞かれています。

マーケットが織り込む今月の0.50%の大幅利下げ確率は約10%と発表前の0%から上昇。来年1月までにFF金利が3.25-3.50%と現行から1%低い水準になる確率は約45%となっており、FRBが今月0.50%利下げを実施するか、今後4回の会合で0.25%の利下げを実施するとの見方を反映しています。



米商品先物取引委員会(CFTC)が9月5日(日本時間6日早朝)に発表した9月2日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対ドル持ち高は7万3258枚の円買い越し(ドル円のショート)となり、前週から1万1226枚減少しました。

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

投機筋の円のポジションは昨年7月2日には18万4223枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録していましたが、そのあとは一転して円買いポジションを構築する動きが優勢に。4月29日には17万9212枚と過去最大を更新しています。ただ、これ以降はその動きが一服。円買いポジションを縮小する動きが続いており、ドル円にはポジション調整目的の買いが入りやすくなっています。いまだ7万枚を超す円買いポジションがあるだけに、「燃料は十分」とも言えます。市場では「ドル円は確かな実需勢の買いに支えられつつ、未だに滞留している円ロングポジションの解消に向けた動きが加速していく可能性もありそうだ」との声も聞かれています。



ドル円の一目均衡表チャートを見ると、週末の終値(147.43円)基準線(148.57円)転換線(147.90円)雲の上限(146.70円)を下回っています。8月に入ってから続くレンジ相場が続いている状況です。さらには、1カ月前と同様に今週は200日移動平均線に上値を抑えられています。

*Trading Viewより

重要なポイントである200日移動平均線は5日時点では148.83円に位置していますが、今後ここをしっかりと上抜けてくるかどうかがポイントとなりそうです。200日移動平均線は重要な中期線として、機関投資家など多くの市場参加者が注目するポイントになっています。テクニカル的なサポートやレジスタンスとしてだけではなく、ここを中心に投資家心理も大きく変わってくると言われています。ここを上抜けた場合は上サイドへの期待が高まりますが、今度もレジスタンスとして機能した場合は下サイドへの懸念が高まりそうです。

なお、現在のポジションはドル円ロング@144.235円。一時はポジションを切るかどうかの瀬戸際にきていましたが、現時点ではプラス。しばらくは上サイド突破を期待しながらポジションを維持していきたいところです。

*IG証券より


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2025年9月6日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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