ドル円、消費減税の円高に備えよ
山下 政比呂
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

証券会社で株式・債券の営業、米系銀行で為替ディーラー業務(スポット、スワップ、オプション)に従事。プライベートバンクでは、為替のアドバイサーとして円資産からドル建て資産への分散投資を推奨してきたドル高・円安論者。「酒田罫線法」「エリオット波動分析」「ギャン理論」などのテクニカル分析をベースに、ファンダメンタルズ分析との整合性を図り、相場観を構築。2016年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

為替の仕組み

2025年の第2次トランプ米政権(2025年~2028年)でのドル円は、エリオット波動での「第4調整波動」による「三角保ち合い」を予想します。

現状のドル円は、2024年7月の高値161.95円を頭とする「ヘッド・アンド・ショルダー」を形成中であり、ネック・ライン(※140.25円~139.58円~4月:139.06円~5月138.98円)の下抜けにより完成します。

ドル円のエリオット波動分析では、第4調整波動のX波動を形成中だと思われます。

ヘッド・アンド・ショルダーが完成した場合、三角保ち合いの起点である127.23円付近までの続落が想定されます。

【戦術(2025年7月29日週)】

ドル売り:@149.00円 ⇒ ストップロス@150.00円

国家の税制の変更は、当該国の景気変動と外国資本の流出入に影響を及ぼすため、為替変動要因となります。税率の引き上げは、当該通貨の売り要因、引き下げは買い要因となります。

1.消費増税=円安要因

ドル円は、過去4回の消費税引き上げを受けて、円安に反応しています。いずれも消費増税の数年前にかけて発生した大幅な円高が不況をもたらし、政府の財政出動による財政赤字の拡大が増税の必要性を高める一方で、日銀の積極的な金融緩和が円安をもたらしています。この結果、消費増税と円安がリンクした可能性があります。

■竹下内閣(1989年)=3.0%

1989年4月、竹下内閣は、消費税(3.0%)を導入しました。

ドル・円は、翌年1990年4月にかけて、160円35銭まで上昇しました。

1989年当時の日本経済は、1985年9月のプラザ合意を受けた円高不況から、政府の財政出動や日銀の金融緩和などによって反転し、バブル経済に突入していく局面でした。

■橋本内閣(1997年)=5.0%

1997年4月、橋本内閣は、消費税を3.0%から5.0%へ引き上げました。

ドル・円は、翌年1998年8月にかけて、147円64銭まで上昇しました。

1997年当時の日本経済は、日米貿易摩擦の激化や金融システム不安に陥っていました。

■安倍内閣(2014年)=8.0%

2014年4月、安倍内閣は、消費税を5.0%から8.0%へ引き上げました。

ドル円は、翌年2015年6月にかけて125.86円まで上昇しました。

2014年当時の日本経済は、2013年に打ち出された「アベノミクス」による日銀の異次元緩和などを受けて景気回復途上にありました。

■安倍内閣(2019年)=10%

2019年10月、安倍内閣は、消費税を8.0%から10.0%へ引き上げました。

ドル円は、翌年2020年2月にかけて112.23円まで上昇しました。

2019年当時の日本経済は、第1次トランプ米政権と中国による米中貿易戦争の悪影響を受けていました。

2.消費減税=円高要因

2025年7月20日に投開票が行われた第27回参議院議員選挙では、給付金を掲げた自民・公明の連立与党は、消費税減税を掲げた野党に敗北し、過半数を割り込みました。

消費税減税による円高の可能性に警戒することになります。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2025年7月29日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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