「参議院選挙後の豹変を覚悟しないでやってはいけない」
松井 隆
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットを担当。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたる事業に従事する。

為替の仕組み


週末に参議院選挙が行われたことで、この文が配信されているころは

選挙結果が出ていることでしょう。

事前の調査では与党自民党が政権復帰後で最低の支持率を記録するなど、

与野党逆転の可能性が濃くなっています。

ここで、選挙前の議席数を確認しておきましょう。

まずは、衆議院ですが議席定数が465議席。

そのうち自民党会派が196議席、連立を組む公明党が24議席で合計220議席です。

過半数(236議席)に達せず、少数与党となっています。

一方で、参議院選挙前の参議院の議席定数は248議席。

改選されない自民党62議席、公明党13議席で75議席保有。

過半数(125議席)を取るためには、ちょうど50議席必要になります。

よって、この50議席がボーダーラインとされていました。



さて、今回の参議院選挙後の相場展開ですが、すでに市場は動き始めていることでしょうが、

ここからがこれまで以上に政治相場となることが予想されます。

その一番の理由としては、これまでトランプ政権から圧力がかかっていた与党ですが、

今回の選挙が終わるまでは、与党に圧力をかけないようにお願いしていたとの報道が多くあります。

選挙前のこともあり、石破首相は米国に対して「なめられてたまるか」などと発言しました。

しかし、あくまでも選挙前のポーズと受け止められ、トランプ政権に楯突こうということを

真に受けている金融関係者はほぼ誰もいないでしょう。

そして、これまでは選挙があるとの言い訳で動けなかった日米交渉ですが、様々な進展がある可能性が高いです。

例えば、米国が日本に対する防衛費を国内総生産(GDP)の3.5%を求めたとされています。

この件に関しては、参議院選挙が終わるまでは官僚同士の話し合いで表沙汰のされないように

日本側が頼んでいたとの報道もあります。

しかし、英ファイナンシャルタイムズ紙が6月20日に報じてしまいましたが、これについても話し合いが行われるともされています。

そして、為替の世界で一番重要なのは、貿易(関税)協議です。

就任からほぼ右肩下がりの石破政権の支持率ですので、トランプ政権に対して簡単に選挙前に

貿易交渉を合意することなどは、はじめからできませんでした。

それが、今回の選挙終了とともに、急加速で様々な合意が持たれる可能性もあります。

一部では、関税交渉で韓国が先に合意した場合は、日本はその韓国の合意が基準となることで、先に合意したいとの憶測もあります。

ただし・・・一番の問題は、自民党が大敗した場合に「石破降ろし」が始まった場合です。

この場合は、自民党総裁選挙がいつになるか分かりませんが、8月1日の交渉期限までの交渉が全く前進しない可能性もあるでしょう。

一部では、誰が合意しても、日本には有利な合意ができないのであれば、

石破首相に関税の合意の責任だけを押し付けて、その後に「石破降ろし」を進めるのではとの憶測皿あります。

いずれにしろ、選挙前と後では、政治は豹変する可能性が高いでしょう。

本日からの日本の政治の動向は、先週までとは全く違う可能性があることを念頭に入れて取引しないでやってはいけないでしょう。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2025年7月21日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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