「貿易収支でかつては動いたことを知らずにやってはいけない」
松井 隆
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットを担当。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたる事業に従事する。

為替の仕組み


現在の為替相場で、市場を一番動意づける経済指標は何か?と聞かれると、応えるのが難しいでしょう。

いくつかあげますと、米国の雇用統計。

それと、消費者物価指数(CPI)や個人消費(PCE)などのインフレ指標でしょうか。

なぜ、これらの指標が重要かというと、米連邦準備理事会(FRB)の2つの責務があるからです。

FRBの2つの責務とは、物価の安定(Price Stability)と雇用の最大化(Maximum Employment)のことを指します。

この2つを見定める必要があることで、上述の雇用指標とインフレ指標が重要視されます。

ただ、その昔は、これよりも市場が注目していた指標があります。

それは、米国の貿易収支です。

特に1980年代の日米貿易摩擦は深刻で、米国では日本製品をハンマーで壊すようなラッダイト運動のような異常な状態でした。

為替ディーラーも、日米間の貿易収支がどのような状態なのかを知り、それに連れて動く為替相場をみるために、夜遅くまで会社に残っていました。

ディーラーだけでなく、日本の顧客も貿易収支の結果で売買をすることで、貿易収支の発表後は、通常なら終電もなく、タクシー帰りが当たり前だったほどです。



いつしか、貿易収支の注目度は下がりましたが、Tariff Man(関税男)と自称するトランプ米大統領の出現により、第2次トランプ政権から多国間の貿易関係が再び注目されることになっています。

やたらめったら高関税を脅しにするトランプ大統領ですが、多くの国がこの男(トランプ大統領)とまともに付き合えないという風潮になってきています。

当然、国(政府)だけでなく、企業も米国との通商関係を変えざるお得なくなっています。

その結果が出てきたのが、先週18日に発表された日本の貿易収支でも明らかになっています。

1月の貿易収支は、市場予想では(通関ベース、季調前)2兆1291億円の赤字となっていましたが、蓋を開けると1兆1526億円の赤字と、予想を大幅に下回る赤字額になりました。

内訳をみると、対米輸出は前年比で5%減少したものの、対EUでは29.6%、対中国で32.0%、対アジアで25.8%とそれぞれ輸出が大幅に伸びたことが判明しました。

これを見ると企業も米国離れになっていることが如実に表れていると言えるでしょう。

市場は、この結果を受けて数十銭程度ですがドル安・円高に動きました。

上述の雇用指標やインフレ指標のような注目にはならないでしょうが、今後は日本経済の状況を把握するためにも、貿易収支を無視してはいられなくなるかもしれません。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2026年2月23日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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