
ドル円はPPP(購買力平価)より3割強の円安 為替レートは金利差、貿易・経常収支、潜在的な経済力などの多様な要因によって変動します。最近のド […]
【5/8-12のドル円レンジ:133.74~135.76円】
・(過去2週間の総括)ドル円の変動幅は、5月8日週に2円2銭にとどまり、その前の週の4円27銭から半減し、足元のレンジ内での推移にとどまった。5月8~9日は小動きだったが、10日は米4月消費者物価指数(CPI)の前年同月比が4.9%と約2年ぶりに5%を割り込んだため、6月利上げ観測が払しょくされ、ドル円が緩む展開に。翌日には、地銀パックウエスト・バンコープが米証券取引委員会(SEC)に提出した書簡で預金流出が確認され、ドル円を下押しし一時133.74円へ下落。しかし、12日に米5月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値で5年先インフレ期待が12年ぶりの水準へ上振れした動きに反応したほか、米商業銀行の預金残高の増加を受け、135.76円まで買い戻され、135円後半で週を終えた。
・5月8日は、米連邦準備制度理事会(FRB)が銀行融資担当者調査を発表、融資基準の厳格化を確認した、一部で懸念されたほど引き締められず。翌9日にNY連銀のウィリアムズ総裁が「必要なら利上げの実施」と発言したこともあって、ドル円は米4月CPIを控え134円後半~135円前半を中心に推移した。
・5月10日は、米4月CPIの前年同月比が市場予想を下回り12年ぶりの低水準だったため、一時134.11円まで下落した。
・5月11日には、パックウエスト・バンコープがSECに提出した資料にて預金残高が前週比9.5%減少(15億ドル)したことが判明。さらに、FRBからの借り入れ拡大に向け51億ドルの融資債権を追加担保に差し入れ、当面の流動性資金を150億ドルに増加させたとも発表。さらに、米新規失業保険申請件数は2021年10月以来の水準へ急増したほか、ホワイトハウスがバイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長など共和党指導部との協議を12日予定だったところ、来週に延期すると表明した。一連のニュースを受け米地銀の破綻連鎖や米債務上限引き上げ難航、さらに米景気後退への懸念が強まり、ドル円は一時133.74円まで下落した。
チャート:米新規失業保険申請件数、2021年10月以来の水準へ増加
・5月12日には一転してドル買い戻しの展開。米5月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値が低下した半面、5年先インフレ期待が3.2%と12年ぶりの水準へ急伸したため、金利先高観からドル買いを促した。米債務上限引き上げ交渉が難航するなか、安全資産としてのドル買い需要も入ったもよう。さらに、NY引け直前に発表されたFRBのデータによれば、米商業銀行の預金残高が増加に転じたことも、ドル買いを支え、一時135.76円まで上昇した。
チャート:米5月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値、5年先インフレ期待が上昇
チャート:ドル円の日足チャート(白い枠が過去2週間のレンジ、白い線は3月8日の高値ライン、右軸は米10年債利回りで緑線)
・5月8~12日は、米国から米債務上限問題に絡む発言がみられたが、協議自体は進展せず。Feⅾ高官からは、NY連銀総裁が据え置き転換と利上げ継続双方を視野に入れた発言を行った半面、ジェファーソンFRB理事(5月12日、バイデン大統領からFRB副議長に指名された)やシカゴ連銀総裁などは信用動向を注視する姿勢を打ち出すなど、据え置き転換を支持するような見解を表明。欧州中央銀行(ECB)の高官は、ラガルド総裁を始め利上げ継続の見方が優勢だった。日本は、植田総裁の発言を確認したが、G7財務相・中央銀行総裁会議で協議された内容が主だった。
〇米国の経済指標⇒米4月CPIや卸売物価指数(PPI)は、インフレ鈍化を示唆した。しかし、米5月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値での5年先インフレ期待が12年ぶりの高水準となり、インフレ懸念が再燃した。米新規失業保険申請件数は2021年10月以来の水準へ急増、労働市場の鈍化を確認した。
〇欧州の経済指標⇒ユーロ圏と独3月鉱工業生産の前月比が予想以上に悪化した半面、独4月CPIは市場予想通りで加速を回避した。イングランド銀行(BOE)は、0.25%の利上げを実施。今後の利上げ余地も残した。また、BOEは成長予想と共に、インフレ見通しを引き上げた。
〇日本と中国の経済指標⇒本邦経常収支は市場予想以下にとどまる黒字幅となり、2022年度ベースでは黒字額が前年度比で54.2%減少するなど、日本の稼ぐ力の減退を確認した。中国4月貿易収支は、輸入が7.9%減だったほか、中国4月CPIが前年同月比0.1%上昇で約2年ぶりの低い伸びになるなど、同国内の需要の回復の弱さを示した。
〇オセアニアの経済指標⇒豪の住宅指標と企業景況感指数は、そろって前月から弱含んだ。
今週の為替見通しに関しては、レポートの完全版をご覧ください。
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