
GFIT為替アンバサダー 安田佐和子 がお届けするWeekly動画解説! 1週間のドル円相場の振り返りを踏まえて解説します。 次回の為替の見 […]
【5/15-19のドル円レンジ:135.63~138.75円】
・(先週の総括)ドル円の変動幅は5月15日週に3円12銭となり、その前の週の2円2銭から拡大した。米連邦準備制度理事会(FRB、Fed)の高官が相次いで6月13~14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ示唆を与え、ドル円を押し上げたほか、日本株が7連騰しバブル後の最高値更新に伴う外国人の日本株買いに対するヘッジの円売りが火を噴いたとみられる。ドル円は一時138.75円と年初来高値を更新、2022年11月以来の高値をつけた。ただ、米債務上限問題の共和党交渉担当が交渉を一時的に停止すると述べ、金融市場でリスク選好度が低下し、ドル円は上げ幅を縮小。イエレン財務長官が18日に開催した銀行トップとの会合で「さらなる合併が必要になるかもしれない」と発言したと報道されたことも、ドル円を押し下げ137円後半で週を終えた。
・5月15日は、バイデン大統領率いる民主党指導部と共和党指導部の米債務上限をめぐる協議を16日に控え、ミネポリス連銀総裁やアトランタ連銀総裁が追加利上げ支持を示唆する発言を受けてドル円は上昇、約1週間ぶりに136円台を回復した。
・5月16日は、米債務上限をめぐる協議後にマッカーシー下院議長が「週末までの合意が可能」と発言したほか、バイデン大統領も前向きな見解を示し、ドル円の上昇を支えた。また、クリーブランド連銀総裁が「金利変更を保留する段階にない」と発言、ダラス連銀総裁も「小幅利上げなら金融安定を損なわない」と発言するなど、追加利上げ支持を示唆する発言を行い、ドル円を押し上げた。さらに、米4月小売売上高や米4月鉱工業生産が米景気の底型を示し、ドル円の買いにつながった。
チャート:米4月小売売上高は前月比0.4%増と市場予想の0.8%増を下回ったが、ガソリンが押し下げ、ガソリンと自動車・部品を除けば0.6%増と市場予想の0.2%増超え
チャート:米4月鉱工業生産は前月比0.5%上昇と市場予想の横ばいを超え、製造業が前月比1.0%と寄与
・5月17日、ドル円は137円台を回復。日経平均が5日続伸し3万円台を回復、1年8カ月ぶりの高値をつけるなか、日本株高による外国人による円売り需要が意識され始めた。さらに、アトランタ連銀総裁が失業率の上昇局面でも「インフレ抑制を保つ決意が必要」と述べことも重なり、ドル円は137.71円まで上値を広げた。
・5月18日には、ドル円は一時138.75円と2021年11月以来の水準へ上昇。バイデン大統領が17日夜、米連邦債務上限問題を巡り共和党と民主党のトップ議員との間で合意が成立すると確信していると述べた上で、米国は債務不履行(デフォルト)に陥ることはないと言及し、リスク選好度を強めた。マッカーシー下院議長も18日、連邦債務上限を巡る交渉が今週末にも原則合意に達する可能性があるとした上で、下院が来週に合意を審議・採決することを見込んでいると述べ、ドル円を押し上げ。さらに、ダラス連銀総裁が6月利上げ停止「まだその状況に達していない」と述べたほか、セントルイス連銀総裁がインフレへの「保険」として追加利上げの必要性を唱えたこともあって、ドル円は大幅高となった。米新規失業保険申請件数が前週比減少したことも、ドル円を支えた。
チャート:米新規失業保険申請件数、前週の急増はマサチューセッツ州の不正申請によるもので、24万件台に戻す
・5月19日は、一転してドル円が上げ幅を縮小。米債務上限問題をめぐる協議について、共和党交渉担当のギャレット・グレイブス下院議員(ルイジアナ州)が週末に「生産的ではなく、交渉を一時的に中断する」と発言し、週末での原則合意期待に冷や水を浴びせた。さらに、イエレン財務長官が銀行トップとの会談でさらなる米銀合併の可能性に言及したと報じられ、一時は137.42円まで下落しつつ137円後半で週を終えた。
チャート:ドル円の日足チャート(白い枠が今週のレンジ、右軸は米10年債利回りで緑線)
・5月15~19日は、米国から引き続き米債務上限問題に絡む発言が多く飛び出したが、期待された進展はみられなかった。Feⅾ高官からは、ダラス連銀総裁やクリーブランド連銀総裁、セントルイス連銀総裁などタカ派だけでなく、中立寄りとされるアトランタ連銀総裁からも追加利上げ示唆を与える発言が相次いだ。ただし、バイデン大統領に近いとされ、オバマ政権で米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたシカゴ連銀総裁を始め、バイデン氏にFRB副議長に指名されたジェファーソンFRB理事、そしてパウエルFRB議長は、ハト派と足並みをそろえる発言を行わず、信用動向を注視する姿勢を表明した。
欧州中央銀行(ECB)当局者からは、引き続きタカ派とハト派で意見が分かれた。日本からは、植田総裁が拙速な政策転換に慎重な姿勢を改めて打ち出した。
〇米国の経済指標⇒米4月小売売上高や米4月鉱工業生産、米4月住宅着工件数、米新規失業保険申請件数など、堅調な指標が優勢だった。ただし、米4月中古住宅販売件数はやや軟調、米4月景気先行指数は13カ月連続でマイナスと、景気減速の兆しを示し続けた。
〇欧州の経済指標⇒ユーロ圏3月鉱工業生産の前月比が予想以上に悪化したほか、ユーロ圏と独の5月ZEW景況感指数は弱含んだ。一方で、ユーロ圏のQ1実質GDP成長率の改定値と4月消費者物価指数(HICP)は、市場予想通りだった。英国は4月失業率が上昇した。
〇日本と中国の経済指標⇒日本のQ1実質GDP成長率は予想以上となったほか、4月鉱工業生産も底堅さを見せた。また、4月貿易統計は赤字幅が縮小。4月全国消費者物価指数は市場予想を上回った。中国は4月小売売上高と鉱工業生産が市場予想に届かず、経済正常化による景気回復期待が低下した。ただ、ウォール街のエコノミストは、それでも中国の2023年成長見通しを引き上げた。
〇オセアニアの経済指標⇒豪とNZの指標は、そろって弱含みが優勢だった。
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