Weekly Report(2/13):「ドル円、米1月CPIや米1月小売売上高など重要指標を受け乱高下か」
安田 佐和子
この記事の著者
ジーフィット為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

マーケット分析
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―Executive Summary―

  • ドル円の変動幅は2月5日週に1.96円と、その前の週の2.69円から縮小した。週間ベースでは、続伸。2月2日発表の米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が1年ぶりの力強い伸びだった流れを受け、買いが先行した。イエレン財務長官が6日、米商業用不動産問題に「懸念」を表明すると売りが優勢になり、7日には一時147.61円まで週の安値をつけた。一転して8日、内田日銀副総裁が日銀のマイナス金利解除後「どんどん利上げしていくようなパスは考えにくい」と発言すると、上昇へ反転。米新規失業保険申請件数が前週比で減少したこともあって149円半ばへ切り上げた。9日のロンドン時間には植田日銀総裁が内田発言を踏襲するなか、一時149.57円まで切り上げ2023年11月下旬以来の高値をつけた。
  • ドル円は、米1月消費者物価指数(CPI)と米1月小売売上高など、重要指標を受けて乱高下しそうだ。米1月CPIは、クリーブランド連銀のナウキャストによれば鈍化が見込まれるが、米1月小売売上高はクレジットカードのリアルタイム動向によれば、堅調となる見通しだ。
  • 日銀の正副総裁から、マイナス金利解除後も緩和的な金融環境が続くとの発言が聞かれ、円キャリー・トレード継続の余地を残す。とはいえ、ウォール街のエコノミストの間では5月と6月の利下げ開始で予想が分かれる通り、上半期末までの利下げが有力視されている。加えて、新NISAの資金流入に伴うドル円の上昇が指摘されるが、1月の資金流入額をベースに試算すると、1日の為替市場における円の取引額の0.1%程度に過ぎない。結局、ドル円は日米金利差に左右されるのではないか。
  • 今週は2月13日に米1月CPI、15日に日本10~12月期四半期実質国内総生産(GDP)速報値の他、米1月小売売上高と米1月鉱工業生産、16日に米1月生産者物価指数と米2月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値を予定する。
  • ドル円は、テクニカル的に三役好転を維持するほか、21日移動平均線が100日移動平均線をブレークしゴールデン・クロスが形成するなど、地合いの強さを確認した。一方で、弱気方向を示唆する上昇ウエッジを形成。直近の高安値を結んだ抵抗線と支持線の交点である150.30円付近からの、下降シグナルを点灯させている。また、前週に149.57円まで上値を広げたもののADXは19.2と、引き続き節目の25以下であり、上昇トレンドに突入したと判断しづらい。RSIも63.04で割高を示す70へ接近しつつあり、ここでも上値余地の狭さが意識されよう。
  • 以上を踏まえ、今週のドル円の上値は150.50円、下値は一目均衡表の雲の下限がある146円ちょうどを見込む。

1.前週の為替相場の振り返り=ドル円、内田副総裁発言で日米金利差意識し149.57円へ上昇

【2月5日~2月9日のドル円レンジ:147.61~149.57円】

(前週の総括)

ドル円の変動幅は2月5日週に1.96円と、その前の週の2.69円から縮小した。週間ベースでは、続伸。2月2日発表の米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が1年ぶりの力強い伸びだった流れを受け、買いが先行した。イエレン財務長官が6日、米商業用不動産問題を受け「懸念」を表明すると売りへ反転。1月31日に予想外の赤字決算を発表したニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の株価が一段安も重なり、リスク選好度が低下し、7日には一時147.61円まで週の安値をつけた。

一転して8日、内田日銀副総裁が日銀のマイナス金利解除後「どんどん利上げしていくようなパスは考えにくい」と発言すると、日米金利差を意識し上昇へ反転。米新規失業保険申請件数が前週比で減少したこともあって、149円台の半ばへ切り上げた。9日のロンドン時間には、植田日銀総裁が内田発言を踏襲するなか、一時149.57円まで上値を拡大し、2023年11月下旬以来の高水準に。米消費者物価指数(CPI)の年次改定を受け、2023年12月分が下方修正されたため売りが出る場面もあったが149円ちょうどまでにとどまり、149円前半で週を終えた。

チャート:ドル円の2023年11月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)。2023年11月高値からの抵抗線を抜け、上値拡大。

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(出所:TradingView)

2.為替見通し=ドル円、米CPIなど米重要指標控え乱高下か

【2月12日~2月16日の為替予想レンジ:146.00~150.50円】

―利下げ開始時期、ウォール街では5月か6月で二分

 パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の1月米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見や「60ミニッツ」インタビュー、さらに前週のFed高官の発言を踏まえ、3月利下げ期待は急速にしぼんだ。ただ、2月9日時点のFF先物市場では、5月までの利下げ開始の織り込み度は68.2%(3月:16.0%、5月:52.2%)、年内の利下げ回数見通しは5回を維持した。

チャート:FF先物市場、2月9日時点では5月までの利下げ開始織り込み度は68.2%、年内の利下げ回数見通しは5回

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