<テクニカル分析判断> ●短期:想定通り「速度調整的な反落局面」が示現も、その程度は極めてマイルドに止まる ●中期:今後の中長期トレン […]
―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は10月21日週に4.10円と、前週の1.48円から急拡大した。週足では、4週続伸。ドル円は週初に一時149.09円の安値をつけた後、トランプ再選の可能性と米連邦政府債務拡大への懸念から米債利回りが上昇、上値を追う展開に入った。また、衆議院総選挙で自民と公明の与党が過半数割れとなるリスクが報じられると、日銀の追加利上げの不透明感もあり、ドル円は7月末以来の153円に乗せ、一時153.19円まで上値を拡大。ただし、NY時間に入ると加藤財務相の円安けん制もあり、伸び悩んだ。
- 衆議院総選挙では、10月20日の朝日新聞の世論調査を皮切りに報じられたように、自民と公明の議席が過半数の233を割り込んだ。自民は公示前247議席→191議席、公明は32議席→24議席へ減少、合わせて215議席となる。同時に、立憲民主と国民民主が躍進。今後の政局だけでなく、日銀の追加利上げをめぐる不透明性が高まったと言えよう。
- 日銀は10月30~31日開催の金融政策決定会合で政策金利を据え置き、四半期に一度公表される展望レポートでは大きく予想値を修正しない公算。注目は総裁の記者会見内容だが、10月24日に植田総裁は20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議の場で「時間的余裕」に言及した。同発言を繰り返す可能性がありそうだ。もっとも、植田総裁は慎重かつ漸進的に政策運営を進めたい意向を示す反面、「投機的なポジションの形成につながる恐れがある」とも言及。政局への突入が予想され連立拡大の道筋が不透明ななか、為替が一方向に動くような発言を植田総裁がどこまで抑制できるか、試されよう。
- 米大統領選や重要な米経済指標を控え、今週は乱高下のリスクが高まる。米債利回り上昇リスクについては、既に米連邦政府の債務は35.8兆ドルへ急拡大し、トランプ氏が再選され、かつ共和党が米上下院で過半数を獲得しレッドウェーブが成立すれば、2017年の税制改正法の恒久化を始め、チップ課税や残業代課税などが廃止されてもおかしくない。逆にハリス氏が勝利すれば、少なくとも共和党が上院で多数派を奪回する見通しなだけに、トランプ氏ほど財政が悪化しないと見込まれる。もっとも、どちらの候補が勝利しても、足元で海外勢の米国債保有率は2004年以来で最低。米国債の発行増に加え、大量償還が2025年も予想されるなか、新政権で米連邦政府債務問題が政策の重石となりかねない。
- 今週は、重要な米経済指標が目白押しだ。10月29日は米9月雇用動態調査(JOLTS、求人件数など)、10月30日は米10月ADP全国雇用者数と米Q3実質GDP成長率・速報値、10月31日は米9月個人消費支出・所得、PCE価格指数、11月1日は米10月雇用統計、米10月ISM製造業景気指数を予定する。このうち、米Q3実質GDP成長率・速報値はアトランタ連銀によれば3.3%増と強含みが見込まれる。逆に、ハリケーンや米航空大手ボーイングのストライキの影響で米10月雇用統計は減速する見通しで、相場は乱気流に呑まれそうだ。米指標以外でも、10月29日には日本9月失業率と有効求人倍率、10月30~31日には日銀金融政策決定会合、10月31日には日本9月鉱工業生産、中国10月製造業PMI、ユーロ圏10月消費者物価指数が控える。
- ドル円はテクニカル的に、強い地合いにシフトした。10月14日週に21日移動平均線が50日移動平均線を上抜け、ゴールデン・クロスも形成したが、足元でローソク足は200日移動平均線をブレークした。一目均衡表は雲の上限を突破しただけでなく、三役好転が成立。下値は、7月高値と9月安値の半値戻しと一目均衡表の雲の上限がある150.77円でしっかりサポートされている。
一方で、10月23日で153.19円の高値をつけた後、ローソク足ではらみ線が発生。23日のローソク足が2本目、3本目を包む形になっており、トレンド転換となる可能性がある。同様に、RSIは10月23日に割高の節目となる70を超え一時71.13をつけたが一時的で、まもなく65台まで低下した。引き続き、70超えでは調整が入りやすいようだ。
- 投機筋の円のネット・ポジションの動向は10月22日週に1万2,771枚と、11週連続のロングとなった。円ロングの過去最高となる2016年4月19日週の7万1,870枚に接近した9月24日週の6万6,011枚から、4 週続けて減少。10月23日に一時153円を突破しただけに、さらにロングが縮小しショートへの反転も近い。
- 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目がある155.00円、下値は21日移動平均線が近い148.70円と見込む。
1.為替相場の振り返り=ドル円、衆院選前に米金利急伸で一時153円乗せ
【10月21日~25日のドル円レンジ: 149.09~153.19円】
ドル円の変動幅は10月21日週に4.10円と、前週の1.48円から急拡大した。週足では、4週続伸。ドル円は週初に一時149.09円の安値をつけた後、X(旧ツイッター)で米連邦政府の債務残高が35.8兆ドルと過去最大を突破しただけでなく、過去4週間で急増したとの投稿などを受けた米債利回りの上昇につれ、上値を試しにかかった。トランプ氏が米大統領選で勝利する見通しだけでなく、米上下院で共和党が過半数を占めるレッドウェーブになるシナリオが意識され、2017年成立の税制改革法だけでなく、そのほかの減税策が実現する見通しも、米連邦政府債務拡大への懸念を強めた。青木官房副長官が22日、為替の影響について「プラス・マイナスあり一概に言えない」と述べたことも、ドル円の上昇につながった。
米大統領選だけでなく、朝日新聞の10月20日の報道に続き、23日に毎日新聞が、衆議院総選挙で自民と公明の与党が過半数割れとなるリスクを報じることで、日銀の追加利上げへの不透明感も漂った。ドル円は7月末以来の153円に乗せ、一時153.19円まで上値を拡大。ただし、NY時間に入るとG20財務相・中央銀行総裁会議に出席中の加藤財務相が「投機的な動向も含め、為替市場の動向を緊張感をさらに高めて注視していく」、「足元では一方的な急速な動きがみられる」と円安けん制を放った。24日には青木官房副長官が「為替動向を高い緊張感を持って注視する」と述べたこともあり、ドル円は153円割れでの推移を継続。米新規失業保険申請件数が市場予想以下だったものの伸び悩み、25日も米9月耐久財受注や米10月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値の上方修正を受けても152円台の推移を続けた。
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