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―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は7月1日週に1.61円と、前週の2.54円から縮小した。週間ベースでは、わずかに4週ぶりに反落。ドル円は週初のドル売り材料に反応薄で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による「ディスインフレの道筋に近付いた」と発言も、影響は限定的だった。7月3日のロンドン時間には一時161.95円と1986年12月以来の高値を更新。しかし、その日発表された米6月ADP全国雇用者数や米新規失業保険申請件数が弱含みの結果となり、162円乗せを免れた。5日には米6月雇用統計の結果を受け、9月利下げ開始期待が強まり、一時160.34円まで週の安値を更新。160円後半で週を終えた。
- 米6月雇用統計で9月利下げ開始、12月の追加利下げ期待が強まるなか、パウエルFRB議長の9日の議会証言と、11日の米6月消費者物価指数(CPI)に注目。年内2回の利下げ観測を強める内容であれば、ドル円の調整に拍車をかけそうだ。
- ただし、日銀の7月追加利上げ期待は後退中だ。日本Q1実質GDP成長率・改定値の下方修正、Q1の需給ギャップ拡大、5月実質個人消費支出のマイナスが背景。金利上昇による利払い負担拡大、日銀の保有国債の含み損拡大など問題も山積みで、日銀の追加利上げペースはゆるやかにとどまるとの見方が優勢だ。
- 原発再稼働や成長分野への労働移動の円滑化などの重要性を指摘したものの、レパトリ減税などには触れられず、「特効薬」はない現状を映し出した。このような状況で、円の一段安のブレーキは、やはり米利下げ観測とその行方だろう。
- 今週は、7月8日に日本5月国際収支、9日にパウエルFRB議長による米上院銀行委員会での議会証言、10日に日本6月企業物価指数、中国6月CPIと生産者物価指数(PPI)、ニュージーランド準備銀行(中銀)の政策金利発表、パウエルFRB議長の米下院金融サービス委員会での議会証言を控える。さらに、11日には米6月CPI、12日には中国6月貿易収支、米6月PPI、米7月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値を予定する。
- 以上を踏まえ、今週のドル円の上値は引き続き3月8日と4月29日の上げ幅から見たN値の半分にあたる162.50円、下値は21日移動平均線が控える159.20円と見込む。
1.為替相場の振り返り=ドル円、弱い本邦指標とクロス円の押し上げで162円迫るも米雇用統計で失速
【7月1~5日のドル円レンジ:160.34~161.95円】
(前週の総括)
ドル円の変動幅は7月1日週に1.61円と、前週の2.54円から縮小した。週間ベースでは、わずかに4週ぶりに反落。ドル円は米6月ISM製造業景況指数や米5月JOLTSに含まれる解雇者数の増加など、弱い米指標を受けながら、週前半は右肩上がりの展開となった。7月1日発表のQ1の本邦実質GDP成長率が建築建設業の受注状況の誤りを受け、年率1.8%減→2.9%減へ下方修正されたほか、日銀が2日に発表したQ1の需給ギャップがマイナス幅を拡大させたため、7月追加利上げ期待の交代を招き、ドル円の上昇の一因に。また、ユーロ円を始め、クロス円の上昇もドル円を押し上げた。
7月2日に神田財務官が座長となって開催した勉強会「国際収支から見た日本経済の課題と処方箋」では、レパトリ減税などには触れられなかった。加えて、神田財務官が今後の金利上昇次第で格下げに注意すべきと発言したため、一部円売りに拍車をかけたもよう。パウエルFRB議長が欧州中央銀行(ECB)の年次フォーラムで、「(過去2カ月のインフレ率を受け)ディスインフレの道筋に近付いた」と発言した当初は、反応薄だった。
7月3日のロンドン時間には一時161.95円と1986年12月以来の高値を更新。しかし、その日発表された米6月ADP全国雇用者数や米新規失業保険申請件数が弱含みの結果となり、162円乗せを免れた。4日は米国が独立記念日で休場のなか、米6月雇用統計前にポジション調整が入ったとみられ161円を割り込む展開。5日には米6月雇用統計の失業率が2021年11月以来の高水準となったほか、平均時給の前年比が市場予想以下となったため、9月利下げ開始期待が強まり、一時160.34円まで週の安値を更新した。同水準では買い意欲が旺盛で161.30円台へ回復しつつも、160円後半で取引を終えた。
チャート:ドル円の4月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)
(出所:TradingView)
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