<テクニカル分析判断> ●短・中期:「中期下落トレンド」の終息を確認できぬまま、短期時間軸の自律反発は一巡? 9/23週は「寄付143 […]
―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は1月29日週に2.69円と、その前の週の2.04円から拡大した。週間ベースでは、小幅反発。1月31日には、日銀が発表した1月金融政策決定会合の「主な意見」で、出口へ向け「議論を本格化させていく」との文言を確認し、ドル円の下落を誘った。さらに、ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)が米商業不動産ローンの焦げ付きを受け、巨額の貸倒引当金を積み増すと共に赤字決算を計上した結果、ドル円は約2週間ぶりに146円割れをトライした。しかし、1月FOMC後は、引き締めバイアスを取り下げた一方で、市場予想ほどハト派ではなく、147円台へ戻した。翌日は、あおぞら銀行がNYCBと同じく、米商業不動産融資の損失に備え貸倒引当を積み増す上で、通期が赤字に転換すると発表。米新規失業保険申請件数の増加もあって、一時145.89円と約2週間半ぶりの安値をつけた。一転して2月2日の米1月雇用統計発表後は、非農業部門就労者数(NFP)の大幅増や、市場予想を上回る米1月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値を受け上昇。一時148.56円まで週の高値を更新した。
- 1月30~31日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、パウエルFRB議長の発言もあって3月利下げの可能性は低下したとはいえ、量的引き締め(QT)の縮小をめぐる議論を3月のFOMCで本格化させる方針を明確化した。FRBは、緩和路線への転換が近いシグナルを送ったと言える。
- 米1月雇用統計・NFPが前月比35.3万人増と2023年1月以来の高水準だったとはいえ、①年次改定の影響、②週当たり労働時間が短縮(需要の減退を示唆?)、③NFPを管轄する事業所調査の結果に反し、家計調査の就業者数は2カ月連続で減少し乖離発生、④人種別でみると、失業率は黒人とヒスパニック系で上昇――など、NFPの力強さと裏腹に、歪な労働市場の実体が浮かび上がる。従って、米1月雇用統計はFedの緩和策への転換を妨げるとは想定しづらい。しかも、直近の米新規失業保険申請件数は約2カ月ぶりの水準に増加していた。
- 日銀も、「主な意見」でマイナス金利解除へ向け、本格的な議論を行う方針を打ち出した。4月のマイナス金利解除へ向け、蓋然性を強めたと言えよう。
- 今週は2月5日に中国1月財新サービス業PMIと米1月ISM非製造業景況指数、上級融資担当者調査8日に中国1月消費者物価指数と生産者物価指数など、9日に米消費者物価指数の改定値の発表を予定する。ドル円は、テクニカル的に三役好転を維持するなど、引き続き地合いは強い。しかし、ADXは19.8と、節目の25以下であり、上昇トレンドに突入したと判断しづらい。
- また、NYCBの巨額の貸倒引当金計上を受け、米商業不動産ローン問題への懸念が再燃。2月5日週も、複数の米地銀の決算を発表するだけに、同様の問題が噴出すれば、再び米10年債利回りの低下をもたらし、ドル円もつれ安となりかねない。しかも、5日にFRBが上級融資担当者調査を発表するだけに、貸出基準の厳格化を確認すれば、米商業不動産問題への警戒感が高まりそうだ。加えて、9日に発表を予定する米CPIの年次改定で、下方修正される余地を残す。
- 以上を踏まえ、今週のドル円の上値は引き続き2023年11月戻り高値がある149.70円、下値は50日移動平均線が近い146.50円と予想する。
目次
1.前週の為替相場の振り返り=ドル円、一時146円割れも米1月雇用統計後に148円半ばへ戻す
【1月29日~2月2日のドル円レンジ:145.89~148.56円】
(前週の総括)
ドル円の変動幅は1月29日週に2.69円と、その前の週の2.04円から拡大した。週間ベースでは、小幅反発。1月29、30日は米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、模様眺めだった。ただ、1月31日には、日銀が発表した1月金融政策決定会合の「主な意見」で、出口へ向け「議論を本格化させていく」との文言を確認し、ドル円の下落を誘った。さらに、ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)が米商業不動産ローンの焦げ付きを受け、巨額の貸倒引当金を積み増し、予想外の赤字決算を計上。これを受け、ドル円は約2週間ぶりに146円割れをトライした。しかし、1月FOMCでは声明文で引き締めバイアスこそ削除されたが、「自信が持てるまで」利下げしない方向が示された。加えて、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が3月利下げの可能性は低いと明言。同議長は、量的引き締め議論が本格化も3月となる見通しも発言したため、市場予想ほどハト派よりではないと判断され、ドル円は147円台へ戻した。
2月1日には、あおぞら銀行が米商業不動産ローンの損失に備え、NYCBと同じく貸倒引当金の積み増しを発表、2024年3月までの連結業績見通しを下方修正し、純損益につき240億円の黒字から、280億円の赤字へ予想を一転させた。また、米新規失業保険申請件数の増加や、1月FOMCで緩和路線への転換が示唆されたことの見直しもあって、一時145.89円と約2週間半ぶりの安値をつけた。
しかし2月2日、米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が市場予想を大幅に上回ったほか、米1月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値も上方修正された結果、米10年債利回りが4%台を回復するに合わせ、ドル円も上昇。一時148.56円まで当該週の高値を更新した。
チャート:ドル円の1月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)
(出所:TradingView)
2.為替見通し=ドル円、米商業不動産ローン問題や米CPIの年次改定次第で再度下振れも
【1月29日~2月2日の為替予想レンジ:145.50~149.50円】
―1月FOMC、引き締めバイアスを削除し緩和路線への転換へ一歩進む
1月30~31日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、声明文で「インフレ率を2%に戻すために適切とされる、あらゆる追加的な金融政策の引き締めの程度を決定する上で、委員会は金融政策の累積的な引き締め、金融政策が経済活動とインフレ率に及ぼす影響の遅れ、および経済と金融の動向を考慮する」の文言が削除された。引き締めバイアスを取り下げた格好だ。
また、「FF金利の目標誘導レンジのあらゆる調整を検討する際、委員会は今後発表される経済指標や、変化する見通し、リスクのバランスを慎重に評価する」との文言を加えつつ、「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの自信が一段と強まるまで、目標レンジの引き下げが適切になると予定しない」と明記。次の一手が利下げとのシグナルを与えた。
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