目次Executive Summary1.先週の為替相場の振り返り=ドル円、日銀と米欧英の政策の違いが鮮明となり145円乗せ2.主な要人発言 […]
<テクニカル分析判断>
●短・中期:「短期的過熱」による自律調整はほぼ完了。上昇トレンドは徐々に加速へ
□11/4週は「寄付152.31:151.32~154.71:終値152.58(前週比▲0.39円の円高)」の推移
◇前週とは逆に大きくギャップダウンし152.31で寄り付いたため、小幅な陽線を形成
◆ただし、実体に比べて上ヒゲが非常に長い上に、前週比▲0.39円の円高となり5週連続していた「前週末比“円安”」の展開が終了
⇒前週指摘した短期的過熱による自律的速度調整が更に顕現化
<⇔>この自律的速度調整により「短期的上昇の過熱」は概ね解消へ
◇また、11/4週は波乱含みの展開となる可能性を示唆した前週の『十字線』により、週間変動幅は前週の2.07円から3.39円と拡大したものの我々の想定は下回った
◇なお、上掲チャートの先週から今週の「変化/追加ポイント」は以下2点
・本年初の「①⇒(1)への踊り場移行」と同様に、「②⇒(2)は、更なる上昇前の健全な“足踏み段階”」として位置付けられる
・(ここ数週指摘の通り) 52週MAと21週MAは、ごく僅かではあるがデッドクロス(以下D.C.)を示現 ⇒但し、今回のD.C.は『下落圧力の高まり』を意味しないと判断(後掲➋週足チャートにて詳述)
◇また、既述の<自律的速度調整により「短期的上昇の過熱」は概ね解消>は、(当然ながら)以下の短期時間軸にてより明確に確認できる。以下そのポイント
◆9/16以降の「直近1年で最も力強い上昇軌道 (赤い上昇カプセル)」から2週前にはみ出した(青の塗りつぶし)ことにより、「上昇モメンタム(勢い)の衰え/上昇ペースの鈍化」が目立っていた
◆(週足よりも変化が早いため)「高水準領域に入りつつあるRSI・ストキャスティクス」は『上昇の過熱』から一旦ピークアウトしていた
< ⇔ >
◇買われ過ぎ領域に接近していたRSIは中立水準へ低下し、ピークアウトから低下が進展していたストキャスティクスでは「底打ち/上昇加速のサイン」が点灯
◇先週末には21日MAと200日MAもG.C.が示現
◎「21日・52日・200日の移動平均線が全て“上昇”」に転じ、全ての時間軸でMAが上昇。更に実績値は全MAより高い水準を維持し続けており、テクニカルな地合いはかなり強固
以上から導き出された<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り
□直近2週の自律的速度調整により「短期的上昇の過熱」は概ね解消
=>>> むしろ、RSIやストキャスティクスでは今後の上昇加速余地を明示する状況へ好転
=>>> 140円に向けた「下値模索」の動きが再び本格化するリスクはほぼ消滅
□上昇トレンドが継続している状況に著変はなく、上昇のペースは今後徐々に加速の可能性あり
□引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目
④ 153.60円=21週MA +2.46%
⑤ 151.80円=21週MA +1.23%
>>>(前週と同程度の)「高水準の市場変動幅が継続」と予想
~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2024/11/8のNY市場終値をベースに実施) ~
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等
短期(1週間~1か月)の方向性:自律調整ほぼ終了。徐々に上昇サイクルは加速へ
〇上図は直上を1年間に延長したもの。コメントは既掲のものをご参照下さい
□直近2週の自律的速度調整により「短期的上昇の過熱」は概ね解消
=>>> むしろ、RSIやストキャスティクスでは今後の上昇加速余地を明示する状況へ好転
□上昇トレンドが継続している状況に著変はなく、上昇のペースは今後徐々に加速の可能性あり
>>> 想定レンジ=今週:151.80~155.40、今後1ヶ月:150.00~157.35=
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等
中期(1か月~半年程度)の方向性:反落リスクは後退。上昇トレンドは徐々に加速へ
◇上図は冒頭掲載の14ヶ月分を2.5年分に延長したもの。コメントは既掲もご参照下さい
□直近2週の自律的速度調整により「短期的上昇の過熱」は概ね解消
=>>>今後は上昇のペースが徐々に加速の可能性あり
◆なお、注目していた52週MAと21週MAは11/4週にデッドクロスを示現
◇但し、図中にもある通り週足(中期時間軸)でのデッドクロスは「底打ち⇒上昇への転換」の契機となる場合が多く「下落圧力の高まり」を意味するとは言えない
◇図中デッドクロスの「2023/3/20週」は、<130円割れで当時の底打ち後、11月にかけて“150円台への大上昇相場”の起点>に位置しており、先週のデッドクロスは<むしろ「その後の上昇加速」の契機>となる可能性すらある
>>>今後6か月間の想定レンジ = 148.35~160.80⇒149.70~160.50=
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:下落へのトレンド反転を回避。上昇再開の本格化へ
□2022年の「3カ月連続陰線後の長大陽線」と同様に「10月は長大陽線を形成 ⇒『20ヶ月MAを大幅に超過する水準を回復』」した(ストキャスティクスにも底打ち/上昇サイン点灯)
=>>>(過去35年間終値ベースでは僅か3ヶ月しか上回ったことが無い)152円超の水準を維持して11月を迎えたため『超長期上昇トレンドの継続』が確認されたといえよう
>>> 今後1年間の想定レンジ = 148.65~163.50 ⇒149.70~163.80 =
<ファンダメンタルズ分析判断>
◆米国:トランプトレード ⇒ 反動から長期金利は軟化、株式は大幅続伸
◆日本:日銀のタカ派姿勢 ⇒金利は上昇、米株連動で株式は大幅に続伸
◇USD円:リスク選好からUSD指数続伸も、前週までの反動からUSD円は若干軟化
◇米債利回り:予想比堅調だった経済指標が多かったにも拘らず、11/11の祝日休場を控えトランプトレードと米連邦政府債務拡大への懸念から大幅に上昇していた米10年債利回りが、一旦材料出尽くしから前週比で低下
> 2年債利回り:11/1 4.212% ⇒ 11/1 4.252%(前週比 +0.040%上昇)
>10年債利回り:11/1 4.386% ⇒ 11/1 4.306%(前週比▲0.060%低下)
=>10年-2年の利回り差は「+0.054%と前週(+0.174%)比で大幅縮小」(下図)
: イールドカーブは大幅にフラット化し、順イールド幅は約1ヶ月ぶりの低水準へ
我々が、今年最も「不確実性が高い市場変動要因」としていた『米大統領選(及び連邦議会選)、そしてそれを受けた11月のFOMC』が(ほぼ)確定しました。
先週からこの週末にかけて「上記2点に対する我々の認識と今後の市場展望」についてお問合せが非常に多かったので、以下そのポイントを中心にザックリとまとめたいと思います。
<米大統領選(及び連邦議会選)>
結果が判明するまで数週間から1ヵ月以上かかる可能性もあるとも言われていた米大統領選挙でしたが、大きな混乱はなく、日本時間6日日中にはトランプ氏の勝利が確実となりました。また、同日には共和党が上院の多数派となることが確定、開票作業の遅れから下院はまだ最終確定には到っていないものの、こちらも共和党の多数派獲得が確実な情勢です。選挙前から相当程度先取り(織り込み)が進んでいた(トランプ1期目と同様の)「トリプルレッド」が正に現実のものとなりそうです。
大統領経験者が返り咲いたのは、民主党のグローバー・クリーブランド氏が1884年の1期目から8年後の1892年に再選を果たして以来、132年ぶり、2人目となります。
また、トランプ氏は今回、2016年と違って得票数でも約7,300万票と、カマラ・ハリス氏の約6,830万票を上回りました。2016年にはヒラリー・クリントン氏の約6,590万票に対し、トランプ氏は約6,300万票と後塵を拝しましたが、今回は名実ともに過半数の有権者の支持を得たことになります。また、どちらが勝利するのか全く分からないとされた激戦7州においても、労働組合の影響力が強いブルーウォールと呼ばれる民主党寄りのラストベルト3州を含めトランプ氏が全てでリードし、まさに『完勝』と呼ぶにふさわしい格好となりました。
本件については<「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続する >との姿勢を貫いてきましたが、個人的には「よもやトリプルまでは…」と頭の片隅で米国の良識(?)に期待するところがありました。しかし、結果は「少なくとも次の中間選挙までの2年間はトランプ大統領の掲げた政策が成立しやすい状況」が出来したと言えるでしょう。
即ち、「トランプ政権2期目では、1期目と同じくトランプ氏が掲げる2017年に成立した税制改正法を始め、移民の大量強制送還や関税強化などの政策が次々に実現する」可能性が高いと考えられます。ただし、ここ数週の当レポートでも言及したように、これらの政策は「インフレの高進・連邦政府債務(財政赤字)の拡大を通じて(悪い)米金利の上昇をもたらす」との懸念も同時に高めると思われます。
<11月のFOMC:市場予想通りに「0.25%幅で追加利下げ」を決定>
□全会一致で追加利下げ決定、利下げ幅は0.25%に縮小
◇FOMC声明文とパウエル議長記者会見内容のポイント
➊ 政策金利 :追加利下げを決定。「中立水準まで緩やかに利下げの方針」は変わらず
=>>> パウエル議長発言要旨:
「先行きの利下げペースは経済・雇用・物価指標次第」
「現時点では、9月以降の経済指標が堅調であったこと等から、利下げを急いでいない」
「利下げの終着点の想定は引き続き、景気に中立的な水準であり、緩やかな利下げ継続が適切」
➋ 雇用・物価 :雇用は軟化、物価は目標に向かって(順調に)減速との認識を据え置き
=>>> FOMC声明文の要旨:
「雇用・物価の評価は、概ね据え置き」
⇒[雇用は昨年と比べ軟化しているが失業率は依然として低位]
⇒[インフレ率は2%目標に向かって減速している]
=>>> パウエル議長発言要旨:
「雇用悪化とインフレ上振れのリスクは均衡」
「現在の金融政策の方針は、リスクバランスに対し適切」 「足元の米景気は堅調であり、9月会合時と比べ景気の下振れリスクは低下」と評価
□市場の政策金利予想は高止まり、長期金利上昇要因に
=>>> パウエル議長発言要旨:
「『前回の9月会合で、雇用が軟化しているとの認識を示した上で、さらなる減速を歓迎しないこと、インフレは2%目標に向かって減速基調にあると見られることを理由に、政策金利を景気に中立的な水準まで引き下げるとの方針』この認識と方針は現在も不変」
=>>> 市場の政策金利見通し:大きく変化
「9月会合時点では、市場はFRBよりも早いペースの利下げと、FRBと同程度の利下げ終着点を予想」「直近予想では、利下げペースは緩やかになり、利下げ終着点も3.5%程度に切り上がった」
「市場は足元の堅調な景気指標や物価指標の上振れを受け、より緩やかで小幅な利下げが適切になる、との見方に変化した模様」
「また、大統領選挙でトランプ前大統領が再選したことを受け、同氏が掲げる減税や関税引き上げ・移民抑制策も、市場の見通しの変化に反映されている模様」
=>>> パウエル議長発言要旨:
「FRBは政策要因を法案可決まで予想に組み込まない」
「今後も経済・物価指標を基準に利下げを継続する」
=>>> 市場の政策金利見通し:政策金利予想は高止まりする可能性
「利下げ期待の後退を受け、米長期金利が足元で上昇」
「市場の景気・物価予想が高止まりする場合、利下げが実施されても長期金利は低下しにくくなり、利下げ効果の経済への波及が限定的となる可能性あり」
=>>> パウエル議長発言要旨:
「現段階では長期金利上昇は景気・物価見通しに影響していない」
「ただし、金利動向は注視している」との警戒を明言
⇒FOMC声明が発表された11/7の米国債市場では、利下げ決定を受けて米長期金利は低下しましたが、これが一時的な動きに留まり、長期金利の上昇が続いた場合、景気下押し懸念から、高値圏にある株価が不安定化する可能性があり、注意が必要だと考えています。
さて、話が「足許連日で最高値更新を続けている米国株式市場」に移ってきたところで、最もご質問の多かったこの点に対する我々の認識と展望をお伝えします。
先週末のNY株式市場に関してロイター通信は足許の好調ぶりを以下のように伝えていました。
『S&P500が一時、初めて6000台に乗せ、週間で1年ぶりの上昇率を記録して引けた。共和党のトランプ氏が次期米大統領に選出されたほか、議会でも共和党の優勢が予想されることで企業に有利となる政策への期待が高まった。また、11/6-7のFOMCで決定された0.25%の追加利下げも株価を支えた。
S&P・NYダウは、2023年11月初旬以来の週間上昇率を記録。ハイテク株が中心のナスダックは2か月ぶりの好調なパフォーマンスを記録し、今年2番目に好調な週となった。
トランプ次期大統領政権下での法人税引き下げと規制緩和への期待から、ナスダックは3営業日連続で最高値を更新。S&Pは終値ベースで今年50回目の最高値を更新した。
市場では「これは心理的に重要な数字だが、今週のあらゆる動きを考えると、6005で終えても5995で終えてもそれほど重要ではないと思う。今週の市場は大幅に上昇している」との見方が主流。
週間では、S&P500が4.66%、ナスダックが5.74%、ダウが4.61%、それぞれ大幅に上昇した。
規制緩和や減税などの恩恵を受けやすいとみられるラッセル2000指数は週間で8.51%上昇し、2020年4月以来最大の週間上昇率を記録した。』
このように米国株式市場では、NYダウ、S&P500指数、ナスダック総合指数の3主要指数が揃って最高値を更新し、前大統領の4年ぶりの返り咲きを歓迎する形となっています。法人税減税や規制緩和など企業寄りの政策を期待した買いが膨らんだとみられますが、その持続性についてはかなり疑問符がつくのではないかと思料します。より具体的に申し上げれば『今の株式市場が、第一次トランプ政権当時の相場の再現を期待しているとすれば、今後、失望する可能性が高い』ということです。
第一次トランプ政権1年目の2017年、トランプ政権は減税策の成立を優先しました。一方、中国との通商摩擦が表面化したのは、2017年12月に10年で1.5兆USD規模の大型減税が成立した後で、2018年に入ってからのことでした。
米国株式は、2017年こそ減税期待を背景に調整らしい調整が殆どない『安定した上昇相場』が続きました(2017年のS&P500の年間騰落率は+19.4% / VIX指数の平均値は11.1)が、2018年に入ると、中国との通商摩擦が攪乱要因となり『変動率の高い相場』に転じました(2018年のS&P500指数の年間騰落率は▲6.2% / VIX指数の平均値は16.6と其々大きく悪化)。
一方、今回トランプ減税の恒久化や法人税減税の財源の一部は、関税引き上げによる歳入増加分が充当される計画となっています。つまり、減税策と関税引き上げは、同時にセットとして進められることになり、プラス材料(の減税策)が先行した2017年とは状況が大きく異なるのです。
確かに、第二次トランプ政権が発足するのは来年1月20日とかなり先の話になりますので、それまで(≒2024年内)は期待先行で現在の活況が継続する可能性はあります。しかしながら、来年の新政権発足以降については、プラス材料とマイナス材料が入れ替わり立ち替わり出てくるようになり、金融資本市場はその都度、大きく上・下に振れる非常にボラティリティの高い展開となるリスクが高まります。現在米株市場が活況にあるからこそ、このリスクは常に念頭に置くべきだと考えています。
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム(※)為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方々はサイト内で是非ご参照下さい。
<(※):ジーフィット株式会社は10/1より「トレーダム株式会社/TRADOM Inc.」に社名を変更しました。>
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