「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
松井 隆
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットを担当。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたる事業に従事する。

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今回は基礎中の基礎ですが、中銀関係者をはじめとした要人が

「タカ派(Hawkish)」なのか「ハト派(Dovish)」なのかを知らないで

トレードをやってはいけないことについて説明します。

ハト派・タカ派とは?

おそらく読まれている方は「タカ派」「ハト派」の意味は理解していると思いますが

タカ派は、金融引き締めに積極的もしくは金融緩和に消極的

ハト派は、金融引き締めに消極的もしくは金融緩和に積極的なことです。

米連邦準備理事会(FRB)要人で、同じ発言内容であった場合でも市場の動きが異なることがあります。

その理由としては、1つ目はその年に米連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権を有するか否か

そして、もう1つはその人が本来はタカ派だったかハト派だったか、もしくは中立だったかによって違いがあります。

例を挙げますと、ブラード米セントルイス連銀総裁は現在タカ派として有名です。

2月16日にブラード氏は「前回の会合で50bpの利上げを主張した」

「3月FOMC会合で50bpの利上げを支持する可能性を排除しない」と述べています。

市場は、発言後に若干ドル買いに反応しましたが、大きくドル買いにならなかった要因は

もともとがタカ派のブラード氏ですので、この程度のタカ派発言は市場は織り込み

市場の反応は限られています。

しかし、もしこのようなタカ派発言を中立派やハト派が発言したら、どうでしょうか?

その場合は、投票結果に影響を与え、金融政策に変化が生じるわけです。

最新の発言や考えは?

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上述したタカ派の代表のブラード氏ですが、2019年ころまではハト派でした。

当時は利上げに対して消極的で、度々利上げの休止を訴えていたほどです。

しかし、経済情勢の変化でハト派が一転タカ派に変わるなど、考えの変化が生じることが多々あるのです。

よって、最新の発言を深く吟味し、この人は今はどっちなのかを理解し

常にアップデートをしていかないと、全く逆に変わっている可能性もあるわけです。

植田日銀総裁候補がゼロ金利政策、量的緩和政策を理論的に支えてきたということで

今後もハト派でいるとは限りません。

タカ派だったブラード氏が数年後にハト派に転じたのですから

数十年前(植田氏が日銀審議委員だったのは1998年から2005年まで)と

まったく同じような考えを持っていると思う方がむしろ不自然でしょう。

指南役やエコノミストにもタカ派・ハト派がいる

ウォールストリートジャーナル紙のFedウォッチャー・ニック・ティミラオス氏ですが

ここ最近のツイートを読んでいる限り、インフレ高進を示すようなものが多く

タカ派と捉えても良いような感じがします。

また、FX指南役でも中立を装いながら、文面を読んでいるとどうみてもタカ派(もしくはハト派)

と思うような内容を読むことが出来ます。

これらの内容を読んでいくと、FX初心者からすると

「いまはドルが下がっているけれど、金利上昇期待でドルは持ち直すのではないか」と判断しかねません。

しかし、もともとタカ派ということが分かっていれば、ああ…またこの人同じこと言っている、と思うことでしょう。

このようなミスリードに引っかかってはいけないので、文面を読み、タカ派ハト派などの判断ができるようにしておきたいところです。

なお、現在のFRB要人の中では

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タカ派

ブラード米セントルイス連銀総裁

ウォーラーFRB理事

ややタカ派

メスター米クリーブランド連銀総裁

ジョージ米カンザスティ連銀総裁

ボウマンFRB理事

中立

パウエルFRB議長

ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁

カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁

バーキン米リッチモンド連銀総裁

ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁

ややハト派

エバンズ米シカゴ連銀総裁

ボスティック米アトランタ連銀総裁

デイリー米サンフランシスコ連銀総裁

ハト派

なし

となっています。ただし、これもいつ変わるかは分からないので常にアップデートが必要です。

本記事は2023年2月27日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。

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