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世界と比べて対応が遅れている日本のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策
現在、世界各国の政府や警察、金融当局などが神経質になっている問題として、マネー・ローンダリング(資金洗浄)及びテロ資金供与(以下、マネロン・テロ資金供与)があります。
欧米各国では、資金洗浄された資金がテロ活動等に使われることを強く恐れており、マネロン・テロ資金供与対策の重要性は年々高まっています。特に核・ミサイル開発の脅威に対して、犯罪者やテロリスト等に流れ込む資金を断つことが国際的に求められています。
こうした中、日本でも、マネロン・テロ資金供与対策等において国際的に中心的な役割を担っているFATF(金融活動作業部会)から、金融機関のマネロン・テロ資金供与対策について審査が実施され、2021年8月に審査結果が公表されました。
審査結果では、日本は前回審査時(2008年10月)よりも少しは改善されていると認められ、最悪の評価は免れたものの、取組は十分ではないとの評価で、今後金融機関に対する検査監督に優先的に取り組む必要があるとされました。
日本のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の強化が貿易企業に与える影響
これを踏まえて、金融庁は「マネロン・テロ資金供与対策に関するガイドライン」を見直し、金融機関に対し2024年3月末までにマネロン・テロ資金供与対策に係る態勢整備の完了を求め、各金融機関は態勢整備の強化に向け取り組んでいるところです。
同ガイドラインにおいて貿易企業に関する事項として例を挙げれば、金融機関は輸出入取引等に係る資金の融通及び信用の供与等(貿易金融)に係るリスクの特定・評価をする際に、取引に関係する国・地域に対するリスクだけではなく、取引全体に対するリスクを以下のとおり勘案するよう求めています。
①「商品」については、軍事転用可能なものではないかなどについて確認する。
②「輸送経路」については、例えば制裁対象国の瀬取りに利用されることがないかといった観点等から、必要事項を考慮する必要がある。少なくとも、出港地、寄港地、中継地を確認する。また、輸送経路を確認する中で、制裁対象国の付近を通過する場合には、制裁対象国が関与する取引ではないかという観点から、制裁内容を確認し、制裁対象国・地域を通過していないかなどについても確認する必要がある場合もあり得る。
③「利用する船舶等」については、船舶が制裁対象に該当しないか、船舶の所有者、オペレーターが制裁対象者に該当しないかといった観点から必要な事項を考慮する必要がある。
④「取引関係者」については、輸出入取引に係る資金融通及び信用の供与等のリスクの特定及び評価に必要な関係者について考慮する必要がある。その関係者に実質的支配者が存在する場合には、当該実質的支配者についても考慮する必要がある。
①~④については、金融庁が金融機関に対して求めている事項ですが、当然ながら、金融機関が貿易企業に対し具体的な説明を求めてくることとなります。
「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)」より引用)
したがって、貿易企業自身がこれらの事項について、十分に把握しておく必要があります。内容を十分に把握できておらず金融機関に具体的に説明できない場合には、輸出入取引等に係る金融機関との取引に支障が出てくることになりかねません。
上記の①~④の対応については、マネロン・テロ資金供与対策として必要最低限対応しなければならない事項であり、今後さらに求められる事項が追加される可能性も高いです。
近年グローバルにスタンダードとなっている大量の書類を用いた複雑な貿易取引の仕組みそのものが、犯罪者やテロリストの不正な資金や活動等の隠れ蓑として悪用されている(TBML:Trade-bassed money laundering)として、国際的な課題と認識されており、主要国の当局等が貿易に係るマネロン・テロ資金供与対策の構築を推し進めています。
貿易企業においては、上記のとおり輸送経路等の詳細な内容、船舶所有者やオペレーター、海外の取引先企業の関係者や実質的支配者等について把握しておく必要があります。このような情報を適切に収集しておくことが非常に重要となっています。
気が付かないうちに犯罪組織やテロリスト等に悪用されないよう、情報を収集し注意を怠らないことが重要です。
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