経営者インタビュー Vol. 1
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世界と日本を知育玩具でつなぎ「感動子育て」で社会に貢献

事業多角化で大変動の為替相場にも負けない経営を 株式会社エデュテ

神戸市に本社を置き、東南アジアからアメリカ、ヨーロッパまで、多彩な国々の知育玩具の輸入卸やネット直販を行っているエデュテ株式会社。

2003年の設立以降数々の困難を乗り越えながらも、現在ではECサイトのベビー用品カテゴリーのランキング上位の常連に位置し、今後も事業拡大を見据えています。

代表取締役の中尾信也氏に、経営の背景にある想いや、為替リスク対策、今後の展望などについてお話をうかがいました。

子育ての感動シーンを創造したい

エデュテの理念は「感動子育て応援カンパニー」です。子育ては大変というイメージがありますが、親を大人として成長させてくれる機会や感動を子どもたちからもらうこともできます。

初めて立ったとき、公園デビューしたとき、遠出をしたとき……。そういった子育ての感動シーンに寄り添うような商品を提供することを目指しています。

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オーキー(写真提供:エデュテ)
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エデュテココ ココブロックス(写真提供:エデュテ)

エデュテでは知育玩具にフォーカスしています。

0から3歳ぐらいは人格や基礎能力が形成される時期で、教育がとても重要です。しかし、幼稚園に通う前の未就学児の教育は、親が自分で情報を得るしかない。知識量が圧倒的に少なく、調べても様々な情報がでてきて、迷ってしまう。

エデュテでは、科学的な裏付けのある教育情報を提供し、日本の子育て環境や将来の人材を育てていくことに貢献していきたいと思っています。教育に関わりたいという思いはずっと持っていました。

エデュテ創業前、子ども向けDVDを扱う会社を経営し売却した経験がありました。そのときの卸先のルートを活用できることと、中小企業でゼロから創業しても勝ちきれるマーケットであると判断したことから、知育玩具の事業に踏み込むことを決めました。

一番最初に取り扱った木製玩具はタイのブランドでした。創業した20年前当時、知育玩具の最先端はヨーロッパ。そのヨーロッパの木製玩具のOEM先はタイが多く、自国ブランドも開発が進んでいました。全世界のメーカーが集まる展示会の中で、価格・クオリティともに満足できるのがそのタイのブランドだったのです。

輸入玩具の国内卸事業が軌道にのったあと、自社で開発・デザインを手掛けるオリジナルブランド「エデュテ」の展開をはじめました。OEM先はベトナムです。最近ではアメリカのベビー食器がヒットしているほか、ヨーロッパや、最近は韓国の商品の扱いもはじめました。

木製知育玩具では定番商品としていいものが長く使われる傾向がありますが、時代によるトレンドもあります。昔は原色などビビットな色の商品が人気でしたが、最近はスカンジナビアと言われる北欧系の色合いが人気です。

また、赤ちゃんとのお出かけアイテムにこだわる親御さんが増えている印象です。赤ちゃんにとっての快適さや機能だけでなく、親もファッションとして楽しんで子育てできるグッズが人気ですね。

世界の玩具業界は、12月のクリスマスが一番の商戦期です。年明け1〜2月に新商品の展示会が香港、ニューヨーク、ドイツで行われ、気になった商品があれば3月の末ぐらいに現地工場を訪れ、カスタマイズやパッケージについて詳細を詰めます。夏には最初のコンテナが到着し、日本での展示会が開催され、秋口には商品が店頭に並び始めます。

失敗も乗り越え、常に新たな挑戦を

2008年ぐらいに卸だけでなく直販での展開も始めました。

楽天への出店は2007年頃で、楽天が広く使われだした時期。当時はメーカー直販が嫌煙されていましたが、卸先のお客さんが出店し順調に売れている様子をみて、いまやらねば追いつけなくなるのではと感じました。2008年頃には楽天専任の社員を雇い、コンサルティング会社にも手伝ってもらううち、今では楽天の玩具ジャンルでも上位にランクインするようになりました。

もちろん常に順風満帆だったわけではありません。直近では昨年、送金詐欺事件に巻き込まれました。長年付き合いのあるタイの取引先のメールサーバーがハックされたのです。

過去10年分ほどのメールのやり取りを把握したうえで、弊社へのメールを巧妙に偽装し、振込先の口座変更依頼を送ってきました。新型コロナの影響で工場の休止や連絡頻度が少なくなっていたこともあり、電話で確認はしませんでした。確認文書だけメールで依頼したのですが、その文書も詐欺集団に偽装され送られてきたのです。そうとも知らず、半年ほど偽装の口座に送金していました。

タイのサイバーポリスで事情聴取を受けたり、関連書類をタイ語に訳したりして捜査に協力したこともあり、無事犯人は捕まりました。しかしお金は戻ってこず、いまも事後処理が残っています。取引先とは長年の取引で信頼関係もありますし、トラブルを乗り越えて今後もお付き合いしていきます。

2020年頃ぐらいには、ブランドを広げ過ぎ在庫過多になってしまったこともありました。事業拡大に向けた投資として取り扱いブランドを広げたのですが、振り返ると判断が早すぎたと思っています。回転数でS、A、Bとランク付けし、ランクごとに3カ月の在庫量を管理していきました。昨年1年かけて整理し、現在は正常に戻っています。

適切な情報収集で為替変動対策

輸入商品の国内卸・販売がメインのため、現在の円安相場の影響を大きく受けています。相場が安定していたらあまり考えずにすみますが、急激に変動するとコストに直接響くため、経営は大きく左右されます。

135円まで下がった時点で想定価格を値上げしていますが、今後の相場によっては利益を確保するために追加値上げも必要になります。しかし、これ以上円安に振れるとおもちゃの価格帯を超えてしまいます。

過去にも円安が進んだ時期があり赤字を出してしまいましたが、値上げを実施した翌月ぐらいにリーマンショックで円安が一気に戻りました。大変だった期間が短かったので、そのときはなんとか耐えることができましたね。

為替リスクは、自社レートを設定して利益確保ラインを確定させ、そのレートで売れるように為替予約やデリバティブで年間必要なドルの25%から50%を予約することでコントロールしています。円安に進むと予約する割合を高めていたほうがいいことになりますが、円高の場合だと競合が円高セールなどを仕掛けてくることもあり、必要なドルを予約する割合は慎重に決めます。

為替リスクについての情報は、輸入業を営む友人の経営者や、取引のある地銀の為替担当者から他社の参考事例を聞いたりすることで入手することが多いです。為替の大きな流れを掴むために、日々のニュースをチェックしつつ、ドル円為替に詳しい専門家の友人の意見も参考にしています。各地のサプライヤーとは年に2回ほどミーティングの場を設け、現場の生の情報を仕入れるようにしています。

円安対策として、中国への工場移管も実施しました。タイもベトナムも、コストが高くなっています。これまで中国製品にはクオリティの問題があり、痛い目にあった会社も多く見てきたので避けていました。日本の商社経由で信頼できる取引先を見つけることができたため、移管を決意しました。

今後のドル円相場がどうなるかわかりませんが、事業に直接大きく影響するため、今後も間違いなく注視して、できる限りコントロールしていかねばなりません。

外貨を稼ぎながら日本の少子化対策にも貢献できる事業に

短期では、ドルで稼げる企業を、中長期では業界ナンバーワンを目指します。

円安に振れる5年ほど前から、国内製品を海外輸出する計画も進めていました。少子化に伴う国内市場の縮小は避けられないため、世界に輸出できる日本製品を事業の次の柱に見据えています。

2019年の夏に、国内でプラスチックブロックを作っている会社を買収しました。話があってから45日で買収を決めるほどのスピード感に乗り、具体的に進めていこうとしていたところ、新型コロナの感染拡大がはじまったのです。

2年ほどは、想定していたような動きが取れずもどかしさを感じましたが、アメリカのAmazonで直売できる体制を作ったり、中国で会社を設立し、現地での販売準備は進めてきていました。今後新型コロナの状況をみながらも、積極的に展開していきます。

利益をあげることも大事ですが、それだけでなく、加速する日本の少子化を食い止める一助になりたいとも思っています。抜本的に大きくマクロで動かすような国の政策ももちろん大切ですが、行政ができない役割、自社だからこそできる役割があります。

その役割は自社の理念である「感動子育て応援カンパニー」そのものです。子どもを産む選択をした家族に、楽しさや感動を発信し提供していくことで、よりよい社会の実現に貢献していきます。

この記事の著者
フリーランスライター

鹿児島県出身。PR代理店にてPRコンサルタントとして活動後、楽天株式会社の広報部にて新規サービスの広報に携わる。その後freee株式会社に転職しスタートアップの広報を経験後、独立。企業や団体の広報活動支援や、ライティング業務などを行っている。

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