「小さな波に乗るために大きな波を逃してやってはいけない」
松井 隆
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットを担当。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたる事業に従事する。

為替の仕組み

小さな流れを取る有効性


市場には大きな流れと小さな流れがあります。

私が初めて入ったディーリングルームで小さな流れをとるのが非常に上手なディーラーがいました。

特に上手だったのは、ギャップ(窓)埋めを取るディーラーでした。

細かくつけたノートには、どの通貨のどこに窓が開いているかということをメモし、その窓埋めを狙って数十銭(もしくは数十Pips)の利益を得るのが非常にうまい方がいました。

個人投資家の場合は、仕事もあれば、なかなか相場にそこまで張り付いていられないことで難しいでしょう。

このようなディーリングスタイルに徹するのは、特異な例ですが、一芸に秀でて、小さな流れを取る有効性があります。

しかし、危険なのは売り遅れで売れなかったことで買いから入る、逆に買い遅れで買えなかったことで売りから入る、という逆張りのポジションを持つなどの小さな流れを取ろうとすることです。



4月2日にトランプ政権が相互関税を発表した以後はドル売りのセンチメントが多くの通貨ではっきりとした流れ(トレンド)として出ています。

意外にもスピードが速いことで「この水準ではドル円は売れない」「ユーロもここでは買いたくない」という声が多く聞こえました。

売り遅れ、買い遅れとなると、その悔しさから流れが速く、一度巻き戻しが入るからという期待で逆張りをする人がいます。

例えば、商品先物取引委員会(CFTC)いわゆるシカゴIMM筋が先週発表した主要な円先物のポジション状況では、円ロングが過去最大となりました。

このことで、IMMの円ロング(ドルショート)が多いから、これは一度ドル円は上がると、跳ね上がるという考えを持ち始めます。

ここで良くないことは、自分のポジションが大きく儲かるという「妄想」をしてしまうことです。

明らかに本人も流れとしてはドル円は下がるということを認識しているにもかかわらず、売れていなかった悔しさからまともな思考にならなくなってしまうのです。

このように、大きな流れがドル売りにもかかわらず、自分に都合の良い言い訳で小さな波(小さなトレンド)を取ろうとし、大きな波に乗れないままになるのが、一番やってはいけないことでしょう。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2024年4月28日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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