<テクニカル分析判断>
●短・中期:週末の急落は単純に急上昇への速度調整とは断じ難いものの、堅調地合いは存続
■7/28週:「寄付147.75:147.27~150.93:終値147.36、前週比▲0.30円の円高)」
◇上昇モメンタムの向上から52週MAと21週MA+2.16%ラインを易々と突破し、週末にかけて3月下旬以来の150円台後半を回復
◆しかし、図中の緩やかな上昇バンド(エンジの小点線囲い)上限に接近してから急反落に転じ、結局「非常に長い上ヒゲを持つ小陰線」形成を余儀なくされた。小陰線は2週連続
◆3.2円にも及ぶ先週の非常に長大な上ヒゲは極めて稀な事象。直近では3.39円もの上ヒゲを記録した2022/10/17週の以来(下図(A)の足)となり、2000年以降では今回を含めて2回のみ
◆しかも今回の上ヒゲ部分は「週末の1日だけで形成」されており(後述)、それだけに短期的なインパクトはかなり大きい
〇なお、週間変動幅は先週3.66円(8/1だけの変動幅と同一)と、7/21週の2.80円から拡大
<⇔>
◇ただし、既述の事象は図中の緩やかな上昇バンド内での展開であり<テクニカルな堅調地合いや『中期上昇トレンド』が崩れたとまでは言えない>
=>直近15週の「上昇サイクル」(図中:エンジの破線囲み)は、急伸すると必ず速度調整を伴うものの『緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンド』を形成
=>52週MA未満ではあるものの、明確に21週MA(145.80@8/1)超の水準を上回っている
◇また、既述の「週足では非常に稀な3円超の上ヒゲ」は2022/10/17週の場合 <21週MA+7.41%の“上昇の過熱”水準を大きく超えただけでなく、同+9.87%水準に迫るほど“上昇の過熱”を観測>
◇しかし、今回は(ストキャスティクスにピークアウトの兆候が若干窺えるものの)中期時間軸における“上昇の過熱”は全く見られない
=>『中期トレンドは4/21週に下落から上昇に転換し、現在も緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンドを形成中の可能性が高い』との認識を依然として維持
■上図:既述の中期時間軸と同様に
◇日足においても、7/31迄は6連続陽線を形成しつつ3/28以来となる150円台後半を記録。この間、RSIやストキャスティクスも着実に上昇し地合いの強さを示唆
◆しかし、直後の週末8/1には3.33円もの長大陰線を形成した上、7/7以来維持していた21日MA超の水準を終値で下回ったことで、テクニカルな堅調地合いにも重大な懸念が台頭
⇒今週147.70近辺に上昇する21日MA超の水準へ早期の回復なるかに注目
◆また、8/1に瞬間的に70超を記録していたRSIは(ストキャスティクスと共に)引けにかけて急反落の様相を強めた
<⇔>
◇ただし、上記事象は図中の緩やかな上昇バンド内での展開であり(中期時間軸と同様に)<テクニカルな堅調地合いや『中期上昇トレンド』が崩れたとまでは言えない>
=>直近15週の「上昇サイクル」(図中:エンジの破線囲み)は、急伸すると必ず速度調整を伴うものの『緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンド』を形成
◇また、RSIは依然として上昇余地を残しつつ緩やかに反転上昇。前週来調整的反落傾向にあったストキャスティクスは僅かながらも上向きへ転じた
=>『中期トレンドは4/22に下落から上昇に転換し、現在も緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンドを形成中の可能性が高い』との認識を依然として維持
以上より<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り
□既述の通り、『中期トレンドは4/21週に下落から上昇に転換し、現在も緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンドを形成中の可能性が高い』との認識を依然として維持
<⇔>
◆ただし、週末8/1には3.33円もの長大陰線を形成した上、7/7以来維持していた21日MA超の水準を終値で下回ったことで、テクニカルな堅調地合いにも重大な懸念が台頭
⇒今週147.70近辺に上昇する21日MA超の水準へ早期の回復なるかに注目
=>中期上昇トレンド継続の判断に著変はないものの、先週末に台頭した短期時間軸での懸念を念頭におきつつ、中期/長期/超長期のトレンド判断においては「中立」スタンスを基本として分析に臨む
□以上を踏まえ、引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を維持した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目している
① 150.24円=21週MA+3.09%
② 149.34円=21週MA+2.46%
③ 148.89円=21週MA+2.16%
④☆148.47円=21週MA+1.86%☆
⑤ 146.76円=21週MA+0.69%
⑥☆145.74円=<21週MA> ☆
⑦ 144.75円=21週MA▲0.69%
⑧ 143.94円=21週MA▲1.23%
>>>上記④(上方)と⑥(下方)が「抜けると加速する」と思われる水準
~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2025/8/1のNY市場終値をベースに実施) ~
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等
短期(1週間~1か月)の方向性:長大陰線に懸念台頭も、堅調地合いは存続
〇上図は直上掲載分の期間を倍に拡大。コメントについては既掲のものをご参照下さい
◇7/31迄は6連続陽線を形成しつつ3/28以来となる150円台後半を記録
◆しかし、直後の週末8/1には3.33円もの長大陰線を形成した上、7/7以来維持していた21日MA超の水準を終値で下回ったことで、テクニカルな堅調地合いにも重大な懸念が台頭
⇒今週147.70近辺に上昇する21日MA超の水準へ早期の回復なるかに注目
◇「一旦調整を挟んでもなお上昇モメンタムの加速が再開する展開」が継続中
=>『中期トレンドは4/22に下落から上昇に転換し、現在も緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンドを形成中の可能性が高い』との認識を依然として維持
>>> 想定レンジ=今週:145.80~149.25、今後2週間:145.80~150.30 、(来週は休載のため2週分も記載)今後1ヶ月:144.00~151.80=
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等
中期(1か月~半年程度)の方向性:上値の重さを再確認も、堅調地合いは依然存続
◇上図は冒頭2枚目に掲載分(期間3年)と同じ。コメントについては既掲のものもご参照下さい
◆図中の緩やかな上昇バンド(エンジの小点線囲い)上限に接近してから急反落に転じ、結局「非常に長い上ヒゲを持つ小陰線」形成を余儀なくされた
◆3.2円にも及ぶ先週の非常に長大な上ヒゲは極めて稀な事象。直近では3.39円もの上ヒゲを記録した2022/10/17週の以来(下図(A)の足)となり、2000年以降では今回を含めて2回のみ
◇ただし、2022/10/17週の場合 <21週MA+7.41%の“上昇の過熱”水準を大きく超えただけでなく、同+9.87%水準に迫るほど“上昇の過熱”を観測>
◇一方、今回は(ストキャスティクスにピークアウトの兆候が若干窺えるものの)中期時間軸における“上昇の過熱”は全く見られない
既述の事象は図中の緩やかな上昇バンド内での展開であり
=>直近15週の「上昇サイクル」(図中:エンジの破線囲み)は、急伸すると必ず速度調整を伴うものの『緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンド』を形成しており<テクニカルな堅調地合いや『中期上昇トレンド』が崩れたとまでは言えない>
=>『中期トレンドは4/21週に下落から上昇に転換し、現在も緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンドを形成中の可能性が高い』との認識を依然として維持
>>>今後6か月間の想定レンジ = 139.60~154.20⇒ 139.45~153.90=
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンドに曙光の一方、懸念も残存
◇3ヶ月連続で下値を切り上げた7月は、一気に20ヶ月MA超を回復する大陽線を形成。陽線は3ヶ月連続となり、懸念が広がっていた数年単位の「超長期上昇トレンド判断」に再び明るさが見え始めた
◇緩やかに上昇に転じたRSIに続き、下降中だったストキャスティクスが上昇サイン点灯。依然として懸念は残るも「超長期上昇トレンド継続」に曙光
<⇔>
◆8月初日から大きく急反落し、再び20ヶ月MA未満と地合いの改善は確認できず。依然として、上値が重いとの懸念は払拭できない
>>> 今後1年間の想定レンジ = 138.60~156.75 ⇒ 138.60~156.75 =
<ファンダメンタルズ分析判断>
□先週の日米金融市場の変化(下表右端):週末、リスクオフ展開が急加速
◆米国:週末の雇用統計を契機に株/金利急落のリスクオフ展開が急加速
◆日本:時差の関係で、欧米の「リスクオフ加速」は免れる
◆USD円:米金利急落を受け、堅調だったUSD指数・USD円も急反落
前半のテクニカル分析では、引き続き<『中期トレンドは4/21週に下落から上昇に転換し、現在も緩やかな(秩序ある)中期上昇トレンドを形成中の可能性が高い』との認識を依然として維持>との結論にしました。
ただし、以下の留意点を新たに掲げています。
<先週末8/1には3.33円もの長大陰線を形成した上、7/7以来維持していた21日MA超の水準を終値で下回ったことで、テクニカルな堅調地合いにも重大な懸念が台頭
⇒今週147.70近辺に上昇する21日MA超の水準へ早期の回復なるかに注目
=>中期上昇トレンド継続の判断に著変はないものの、先週末に台頭した短期時間軸での懸念を念頭におきつつ、中期/長期/超長期のトレンド判断においては「中立」スタンスを基本として分析に臨む>
一方、ファンダメンタルズにおいては、週末にかけて大波乱の状況が出来し、金融市場で「雇用統計ショック」ともいえるリスクオフ展開が急加速しました。
具体的には、労働市場の急減速を示した米7月の雇用統計をきっかけに「FRBの早期利下げ観測」が盛り返し、政策金利の影響を受けやすい米2年物国債利回りは1年ぶりの低下幅の大きさを記録。これに呼応するように統計発表までは150円台で堅調だったUSD円相場も3円を超す急落が進んでいます。
これを受け、前週まで最高値更新に沸いた海外株式市場では、MSCIコクサイは前週末比▲2.4%と3週ぶりに反落、MSCI新興国市場は同▲1.6%と9週ぶりのマイナスを記録しました(いずれも現地通貨建て:米雇用統計発表前に引けていた東京市場は、TOPIXが前週末比▲0.1%の僅かな下落)。
この大波乱を呼んだ先週末にかけての米国の状況については、今週の安田佐和子氏のWeekly Reportに詳細にまとめられておりますので、一部を抜粋してご案内させて頂きます。
それでは、以下、安田氏の8/4付Weekly Reportからの<抜粋>をご覧ください。
< ―7月FOMCでパウエルFRB議長はタカ派姿勢維持も、米7月雇用統計は利下げを促す内容
米連邦公開市場委員会が7月29~31日に行われ、市場予想通り5会合連続でFF金利誘導目標を4.25~4.5%にて据え置きを決定した。声明文では、トランプ関税による駆け込みの影響を受けて、「純輸出の変動が引き続きデータに影響を与えている」として、「上半期は緩やかな経済活動を示唆」との文言を追加した。また、経済見通しへの不確実性は「減退」との文言を削除。パウエルFRB議長は、会見で不確実性は前回と変わらなかったとして、「特別な意味はない」と説明した。
チャート:7月声明文、前回からの主な変更点
(出所:Nick Timiraos/Xより、ストリート・インサイツ作成)
投票結果は、事前観測通り、ボウマンFRB副議長とウォラーFRB理事の2人が0.25%の利下げを求め、反対票を投じた。FRB執行部のうち、反対が2人となったのは、1993年12月以来となる。約32年ぶりの反対票数となったが、1980~1988年のレーガン政権時代を彷彿とさせる。当時、政権の意向とボルカーFRB議長のインフレ抑制的な金融政策が衝突した結果、政権が送り込んだFRB理事が議長に反対、1986年2月は、ボルカー氏が据え置き票を投じ少数派に転じる場面も見受けられた。今回も、トランプ1期目に指名された2人が反対にまわっており、レーガン政権時代のように、政権とFRB議長との意見対立を反映したものと捉えられよう。その他、クーグラーFRB理事が欠席したため、投票を見送った(注:8月1日に辞任を発表)。
チャート:FRB正副議長・理事の反対票
パウエルFRB議長は、記者会見で9月利下げを判断する上で、データを重視する姿勢を示しつつ「インフレと雇用の双方が重要で、それらの総合的な内容と、「リスクの均衡分析」に基づき、政策判断を下すと発言した。また現在の政策スタンスは「適度に引き締め的」だが、失業率やインフレを踏まえれば、不適切に抑制していないとも言及。据え置きの正当性を強調した。
関税の価格転嫁について、ほとんど川上部門で吸収、CPIに一部の影響が現れているが、「どれだけの範囲・時間軸で価格転嫁が行われるか」を学んでいく必要があると述べた。さらに、「今のところ転嫁のペースは当初の想定よりも遅いことが分かったが、理解が進むまでには時間が掛かる」と発言。日本や欧州連合(EU)など、主要貿易相手国・地域と関税協議で合意したが、「状況が安定するまでにはまだ時間が掛かり、依然として多くの不確実性が残されている」とも付言し、インフレ警戒姿勢を貫いた。
トランプ政権の利下げ圧力が強まるものの、「先進国の政府は、(金融政策の)意思決定と政治的な直接統制との間に、ある程度の距離を置くことを選択してきた」と説明、中銀の独立性の必要性を繰り返した。
全体を通じてタカ派的と解釈でき、利下げに急がない姿勢をあらためて、明確に打ち出した。
チャート:パウエルFRB議長、会見の主なポイント
(出所:Federalreserve/YouTubeより、ストリート・インサイツ作成)
米7月雇用統計は逆に、Fedに利下げを促すかのような予想外に弱い結果となった。非農業部門就労者数の過去2カ月分は、25.8万人もの衝撃的な下方修正を記録。労働参加率が低下し、職探しをする失業者が減った可能性があるにもかかわらず、失業率も四捨五入前では4.248%と年初来で最も高い水準に振れた。黒人の失業率は2021年10月以来、大卒以上の失業率も2021年8月以来の高水準へ急伸した。今回のポイントは以下の通りで、全面的にネガティブな結果がそろった。
(労働市場にポジティブ)
・平均時給の伸び、市場予想を下回る
・民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)、前年比と前月比は再加速
・週当たり労働時間は改善(ただし、企業の採用抑制を労働時間でカバーしている可能性)
(労働市場にネガティブ/ニュートラル)
・NFPが10万人割れを維持
・NFP、過去2カ月分は大幅下方修正
・失業率が上昇
・労働参加率は2022年11月以来の低水準
・就業率は2021年12月以来の低水準
・失業者のうちレイオフと新規の労働市場参入者が押し上げ
・フルタイムと複数の職を持つ者が減少
・不完全雇用率が上昇
・完全解雇者の労働力人口の割合が2021年11月以来の高水準近く(労働力人口の減少に伴う)
・長期失業者の割合が上昇
チャート:米7月雇用統計の主な内容

ただし、8月1日にインタビューに応じたウィリアムズNY連銀総裁や、クリーブランド連銀総裁は、米7月雇用統計・NFPの伸び悩みは、移民の流入減が背景で、喫緊の利下げが必要との見解を表明しなかった。Fed高官の発言に反し、FF先物市場では、9月利下げ開始の織り込み度が80.3%へ急伸しただけでなく、年内の利下げも前日の1回→3回へ傾く。マーケットが催促相場、つまり米株安・米債高(米金利低下)・ドル安に向かうリスクに留意したい。
―「影のFRB議長」就任なら、FRBの勢力図は利下げ方向へシフトか
今週、発言を予定するFed高官は、バイデン前政権で指名されたクックFRB理事や、年内1回利下げ予想を唱えるアトランタ連銀総裁、セントルイス連銀総裁など、タカ派寄りの面々が並ぶ。ドル円の買い戻しにつながりそうな一方で、トランプ政権がクーグラーFRB理事の後任に「影のFRB議長」を指名する可能性がある。
ベッセント財務長官は、トランプ政権発足前の2024年10月、トランプ氏が大統領に返り咲けば、パウエルFRB議長が退任を迎える2026年5月の1年前から、「影のFRB議長」を擁立し、レームダック化できると主張していたことで知られる。クーグラー氏の辞任により、新たな人物をまずFRB理事として送り込み、次期FRB議長として指名すれば、その人物が「影のFRB議長」と目され、パウエル議長のレームダック化が進むこと必至だ。新たなFRB理事が加わったとしても、FRB正副議長・理事7名のうち、トランプ氏指名によるメンバーは3名にとどまり多数派に転じるわけではない。とはいえ、メディアや市場は「影のFRB議長」の発言に反応する傾向が強まれば、FRB執行部、並びに輪番で投票権を持つ4人の地区連銀総裁の勢力図に変化が生じてもおかしくない。
加えて、ベッセント氏は7月22日、FOXビジネス・ニュースとのインタビューで金融政策以外と限定しつつも、FRBの「見直し」が必要と主張する。次期FRB議長の有力候補、ケビン・ウォーシュ元FRB理事は7月17日、CNBCインタビューで新たな「米財務省―FRB協定」を進言した。
ウォーシュ氏は、①米連邦債務の急拡大する現状、②借り入れコストを抑制したい米財務省と、利下げに急がないFRB間の相反関係――が1951年と類似していると指摘。当時は、第2次世界大戦中の戦費調達と財政赤字拡大抑制を狙い、イールド・カーブ・コントロールを導入、戦後の復興とインフレ加速を受けて、1951年に撤廃で合意した。
しかし、ウォーシュ氏は1951年と違い、FRBの量的引き締め(QT、償還された保有証券の元本を再投資せず保有資産を縮小すること)過程で、米財務省と連携を強め、借り入れコストの引き下げを図るべきと主張する。
ベッセント氏はヘッジファンド出身で、ウォーシュ氏はモルガン・スタンレー出身と、共にウォール街でキャリアを築いてきたことから、ウォーシュ氏いわく両者は懇意であるという。翻って、ベッセント氏はアベノミクスで約10億ドル稼ぎ上げた実績もあり、安倍元首相の信奉者だ。トランプ氏は1期目で、安倍氏と蜜月関係にあったことで知られ、財務長官にベッセント氏を指名したのも、安倍氏への尊敬が一因だった可能性がある。
以上を踏まえれば、トランプ氏とベッセント氏は、安倍氏がアベノミクスを導入するにあたって結んだ「政府・日銀アコード」をモデルに、米財務省とFRBの連携を模索してもおかしくない。仮にウォーシュ氏が次期FRB理事に指名されれば、新たな「米財務省―FRB協定」観測から、「米金利低下→ドル安」の思惑が強まりそうだ。
チャート:ベッセント財務長官とウォーシュ元FRB理事、インタビュー内容の主なポイント
(出所:FOXビジネスやCNBCなどより、ストリート・インサイツ作成) >以上、抜粋
上記WRでも紹介されていましたが、先週のFOMCにおいて、パウエル議長は「雇用は底堅い」として「予防的利下げに消極的な姿勢(タカ派)」を示しました。しかしながら、くだんの雇用統計で過去分が過去最大規模の大幅な下方修正を施されたことで、このタカ派スタンスを変更してくる可能性が充分にあると考えられます。
特に、8/21~23に開催予定のジャクソンホールシンポジウムでのパウエル議長講演、更には、その他のFOMCメンバーの発言機会には要注目だと考えています。
なぜなら、先週末のように、ショックといえるほどの米国の雇用指標悪化を受けてリスクオフが急加速し、株式市場が調整する展開は、昨年のこの時期の急激な調整局面と共通しているからです。
昨年は、その後のジャクソンホールシンポジウムの講演でパウエル議長が「政策を調整する時が来た」・「強い雇用を守るためには何でもやる」と発言し、利下げ開始を事実上予告しました。その上で、9月FOMCでは0.5%もの大幅な利下げを実施し、その後の株価反発を後押ししたのでした。
(昨年のこの時期は、バイデン民主党政権下であり“TACO”的なカンフル剤も無かったため、FRBがその役割を担わざるをえなかった?)
なお、FRBの人事については、先週クーグラー理事が突然「来年1月の任期を前に8月8日付けで辞任する」と発表(理由は不明)しました。これを受け、パウエル現議長に異常なほど批判的なトランプ大統領は、クーグラー理事の後任に「(腹案の)次期FRB議長候補」を指名するとみられます。
しかし、その場合、現FRB議長と次期FRB議長が異なる見解を示し混乱が生じる事態も想定されます。
少なくとも、現在のような形で「コンセンサスを形成」することは非常に難しくなってくるのではないかと懸念を抱いており、今後の成り行きを注視したいと考えています。
いずれにせよ、トランプ氏の言動による「今後の不確実性要素がまた一つ増える」ことは間違いなさそうです。
さて、来週は我々市場分析チームの都合により当weekly reportを休載させて頂きます。そのため、短期見通しも「今後2週間の想定レンジ」を追加しています。
既述の通り、トランプ氏の言動による今後の不透明要因は増加しています。トランプ氏お得意の“TACO”カンフル発動の有無も注目されるところですが、今後とも「過度に予断を持たず変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続」して金融資本市場全体を引き続き注視してゆこうと考えています。
お知らせ:今週も引用させて頂きましたが、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム(※)為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOMユーザーの方々はサイト内で是非ご参照下さい。
なお、来週は月曜日が祝日にあたるため、休載とさせていただきます。平素よりご愛読いただいている皆様にはご不便をおかけし、誠に申し訳ございません。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
<(※):ジーフィット株式会社は2024/10/1より「トレーダム株式会社/TRADOM Inc.」に社名を変更しました> 2025/8/4
ようこそ、トレーダムコミュニティへ!