「ドル円、パウエル発言伝わると急落」
中村 知博
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。
外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

為替の仕組み

当コラムでは「IG証券」のデモ口座で株価指数・FX・コモディティなどをトレードし、売買のタイミングや結果などを公開。証拠金は各100万円スタート。「IG証券」は「FX口座」「株価指数口座」「商品口座」「個別株口座」「債券先物口座」「その他口座」と多様な資産クラスがワンストップで提供されています。



今週のドル円は週末22日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の米カンザスシティー連銀主催のシンポジウム(ジャクソンホール会議)での講演を控えて、しばらくはもみ合い。22日の東京市場では148.78円まで買われる場面もありましたが、パウエル氏の発言が伝わると急落。今週の上昇分を全て吐き出す格好となりました。

パウエルFRB議長はジャクソンホール会議で、「労働市場の安定により、政策を慎重に進めることができる」「関税は長期的なインフレを誘発する可能性がある」「インフレリスクは上昇傾向、雇用は下振れ傾向」と発言していますが、「政策が引き締め的な領域にあるためリスクバランスの変化が政策調整を正当化する可能性がある」とも指摘。市場では「利下げ再開を示唆した」との受け止めから、ドル売り・債券買い(金利は低下)・株買いが広がりました。ドル円は一時146.58円まで急落する場面がありました。

*Trading Viewより

なお、市場では「想定以上にハト派的で9月に動くお膳立てをした」「この状況がとん挫する可能性があるとすれば、9月第1週に発表される米雇用統計が過度に好調となる場合だろう。ただその可能性は低いとみられる」との声が聞かれています。

なお、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利下げを予想する確率は前日の75.0%から84.0%まで上昇しています。一時は90%を超える場面もありました。

*CME FedWatch Toolより



米商品先物取引委員会(CFTC)が8月22日(日本時間23日早朝)に発表した8月19日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対ドル持ち高は7万7581枚の円買い越し(ドル円のショート)となり、前週から3347枚増加しました。

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

投機筋の円のポジションは昨年7月2日には18万4223枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録していましたが、そのあとは一転して円買いポジションを構築する動きが優勢に。4月29日には17万9212枚と過去最大を更新しています。ただ、これ以降は円買いポジションを縮小する動きが続いており、ドル円にはポジション調整目的の買いが入りやすくなっています。19日時点でこそ、若干増えていますが、いまだ7万枚を超す円買いポジションがあるだけに、「燃料は十分」とも言えます。



ドル円の一目均衡表チャートを見ると、週末の終値(146.94円)基準線(148.39円)転換線(147.49円)を下回っていますが、雲の上限(146.70円)がサポートされて、下げ止まっています。8月に入って方向感に乏しい展開が続いていますが、テクニカル的にもトレンドが出にくい状況です。

*Trading Viewより

なお、重要なポイントである200日移動平均線が149.12円に位置していますが、今後ここをしっかりと上抜けてくるかどうかがポイントとなりそうです。200日移動平均線は重要な中期線として、機関投資家など多くの市場参加者が注目するポイントになっています。テクニカル的なサポートやレジスタンスとしてだけではなく、ここを中心に投資家心理も大きく変わってくると言われています。ここを上抜けた場合は上サイドへの期待が高まりますが、7月末から8月初めにかけて頭を抑えられたときのように今度もレジスタンスとして機能した場合は下サイドへの懸念が高まりそうです。

また、現在のポジションであるドル円ロング@144.235円。一時はポジションを切るかどうかの瀬戸際にきていましたが、現時点ではプラス。しばらくは上サイド突破を期待しながらポジションを維持していきたいところです。

*IG証券より


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2025年8月23日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


関連記事
【ドル円・豪ドル円】「まさか」の2連発

「イチオシ」内ではテクニカル分析を始めと Read more

ようこそ、トレーダムコミュニティへ!