
片山財務相が、日米財務相会談では具体的な為替や金融政策の議論は行われなかったと説明したことで、金融マーケットの警戒感はいったん和らぎました。しかし、翌日以降の米財務省声明や米財務長官のSNS発言を受け、ドル円は151円台へ下振れ。「米財務省見解」が、日銀の利上げ実施に高市政権が影響を与えることをけん制したと、マーケットは受け止めています。
「米財務省見解」片山氏が火消しもドル円は下振れ
日米首脳会談の前哨戦ともいえる日米財務相会談が10月27日に行われました。片山さつき財務相はベッセント米財務長官と初の対面での会談で「今後も両財務省間で緊密に協調していくことを確認した」と述べています。
また、「日本の金融政策は直接的な話題にはならなかった」「日米の為替共同声明は特に機微にわたる話はなかった」と説明。同日のドル円は152円半ばへ下押す場面を挟みつつも、152円後半へ持ち直すなど、円安・ドル高水準を維持しました。
しかし翌28日、米財務省はホームページで「インフレ期待を安定させ、為替レートの過度な変動を防ぐ上で、健全な金融政策の策定と対話が果たす役割を強調した」との声明を発表。為替の話題が会談で取り上げられたことが警戒感を高め、ドル円は一時151円後半へ下振れています(図表参照)。

これを受け片山財務相は、「会議では為替に関する具体的な議論も行われなかった」ほか、「(ベッセント米財務長官は)中央銀行のルールをよく理解しており、日銀に金利引き上げを促したわけではないだろう」「金融政策の方向性について直接協議はなかった」などと述べ火消しに回り、マーケットの警戒感を緩めました。
しかし公式な「米財務省見解」がより信頼性が高いとみなされ、ドル円の上値を抑える材料になりました。さらに29日、ベッセント米財務長官が自身のSNSに「日本が日銀の政策余地を認める意思が鍵になる」などと投稿したことで、日本政府が日銀の利上げ実施をけん制することなどないようにとの圧力が感じられました。
求められる本邦金融政策の調整
こうした状況から、高市政権はアベノミクスのような緩和的な金融政策状況をともなう積極財政路線に振り切れないとの思惑が高まりました。ドル円は一時151円半ばまで下押しましています。
アベノミクス下の異次元の金融緩和をきっかけに、すでにデフレからインフレへ現況は変化しています。米財務省声明や財務長官発言など「米財務省見解」にけん制された状況において、高市政権が日銀の利上げ判断に歯止めを掛けることは難しいでしょう。
「米財務省見解」で「健全な金融政策の必要性」が求められるなか、為替マーケットは「政策調整(この局面ではインフレを意識した日銀の利上げ)」を織り込みに動く可能性が考えられます。輸入インフレの抑制にも効く、円高が促されやすくなるでしょう。
「米財務省見解」を背景とした為替の方向づけは、足もとの根強い円安地合いを一気に巻き戻すような勢いでは進まないかもしれません。しかし、利下げ方向にある現状の米金融政策との差異が次第に意識され、円高へ傾くリスクは念頭に置いて臨むべきかもしれません。
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※本記事は2025年10月29日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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