「ハセット次期FRB議長候補」マーケットはドル売りで反応
関口 宗己
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

1987年商品取引会社に入社、市場業務を担当。1996年、シカゴにて商品投資顧問(CTA)のライセンスを取得。
市況サービス担当を経て、1999年より外国為替証拠金取引に携わり、為替ブローキングやIMM(国際通貨先物)市場での取引を経験した。2006年2月にマネーアンドマネー(現・DZHフィナンシャルリサーチ)記者となる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CTMA2)。日本ファイナンシャルプランナー協会AFP。

為替の仕組み

「ハセット次期FRB議長候補」の議長就任が有力との見方から、ドル売りの動きが強まっています。利下げに前向きな同氏の就任を見据え、金融緩和への期待が高まる一方、物価上昇が続くなかでの利下げを警戒する声も聞かれます。政権の意向とFRB独立性のバランスが問われる局面となり、投資家の視線は正式発表やその後のマーケットの反応に集まっています。



先月25日、「ハセット米国家経済会議(NEC)委員長が次期米連邦準備理事会(FRB)議長人事の最有力候補」との報道が伝わって以降、ドル相場は重い動きが続いています(図表参照)。12月3日にはトランプ米大統領が「次期FRB議長は来年早々に発表」と発言して決定が間近に迫っていることを示唆。ハト派(金融緩和派)とされる「ハセット次期FRB議長候補」の議長就任を見据えたドル売りの思惑が高まっています。

ハセット氏は先日のインタビューで、金利はより低い水準にあるべきと述べ、利下げに前向きな見解を示しています。この発言は欧米メディアを中心に市場へ伝わり、FRBが政権の意向に沿う形で政策を転換する可能性が意識されました。「もし自分が議長であれば直ちに利下げに動く」との発言も聞かれ、金融マーケット参加者の米早期利下げの思惑を強めました。

一方、米銀大手や機関投資家などから、物価が依然として上昇傾向にあるなか、利下げの加速がいき過ぎるのではとの懸念も聞かれます。トランプ政権の意向に沿っただけの金融政策運営は、FRBの独立性への疑念につながり、その面でドル安圧力を高めた一因とも考えられているようです。



FRB人事の行方を巡り、トランプ政権内部での体制再編案も検討されています。関係者筋の話として、「ハセット次期FRB議長候補」の議長就任が決定した場合、ベッセント米財務長官がNEC委員長を兼務する案も協議されているようです。実現すれば、ホワイトハウスと財務省の連携がより強化され、経済政策の一元化が進む可能性があります。

ベッセント長官は、人選が最終局面に入っていることを認めつつ、発表時期について「クリスマス前の可能性もある」と述べていました。トランプ大統領自身も「候補者は一人に絞った」と発言し、正式決定が迫っていることを示しており、マーケットの動きを加速させそうです。

最終候補にはFRB現職理事や元理事、金融機関幹部とされる人々の名前も挙がっていますが、マーケットはすでにハセット氏の優位を折り込み始めています。正式発表は2026年初頭へややずれ込みそうですが、マーケットは既に政策の方向性を先取りする形で動いています。

FRBトップ交代で、利下げペースや政策運営の優先順位が変わる可能性があり、投資判断にも大きく影響します。FRB独立性と政権の政策意図のバランスをどう取るのか、注視が必要な局面です。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2025年12月3日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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