変動幅が大きい通貨(ポンド)
金 星
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。
外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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イギリスの通貨、ポンド(GBP)はかつての基軸通貨であり、世界で4番目に取引量が多い通貨です。

ポンド概要

ドルが世界の決済通貨として使われるようになる以前は、イギリス帝国の経済力を背景に、国際的な決済通貨として使われました。大英帝国時代から第二次世界大戦直後までは世界の基軸通貨でしたが、その後の英国経済の衰退とともに、基軸通貨の地位を米ドルに取って代わられました。

イギリスの欧州連合加盟に伴い、ヨーロッパの共通通貨であるユーロにイギリスが参加するかどうかが焦点となったが、イギリス国内に反対が多く、通貨統合は見送られました。

イギリスは2016年6月の国民投票でブレグジット(イギリスのEU離脱)を決定され、3度の延期を伴いながらも2020年1月31日に正式にEUを離脱しました。

ポンドの特徴

ポンドはユーロや円に比べ、流動性が低下するため、これらの通貨と比べると値動きが荒くなる傾向があります。日本人トレーダーにポンド円の通貨ペアが人気なのは、このボラティリティ(変動率)の高さに魅力を感じる人が多いからかもしれません。ボラティリティが高いのは大きな利益を狙うことができるため、メリットではありますが、逆方向に進んだ場合のリスクも大きくなるため、注意が必要です。

ポンドは地理的にユーロ圏と近く、政治的、経済的に深い関係とうこともあり、ユーロとの相関性が強い通貨の一つです。また、英国は北海油田を有していることもあり、原油価格の影響を受けることもあります。

ポンドの動き

・1975年6月、現在のEU(欧州連合)の前身にあたるEEC(欧州経済共同体)からのイギリス離脱か残留の可否を問う国民投票が行われ、残留となったが混乱が嫌気されてポンドドルは1975年3月の2.4ドルから1976年9月の1.6ドル前後まで大きく下落しました。

・1980年代に入り、ドル高によりポンドドルは大幅に下落し、1985年3月には1.05ドル台まで売られました。ただ、1985年9月のプラザ合意によりドル高が調整され、1988年には1.9ドル近辺まで持ち直します。

・1992年ポンド危機により、1992年9月の2.0ドル近辺から1993年2月に1.45ドルまで下落します。イングランド銀行(BOE)は欧州為替相場メカニズム(ERM)から離脱し、変動相場制に移行します。

・2000年代に入り、ドル安を受けてポンドドルは買いが先行するも、リーマンショック直後(2008年10月-2009年3月)は2.0ドル近辺から1ポンド=1.45ドル近辺まで大きく下落します。

・2016年6月にEU離脱是非を問う国民投票で離脱が決定され、離脱をめぐる不透明感が不安材料となり、同年10月には1.18ドル台に下落しました。

・2017年に入りポンドドルは反発するも、2018年4月の1.43ドル台を頭に戻りが一服します。

・2020年3月からはコロナ相場となりますが、今年に入ってドル独歩高が強まっていることや、トラス英新政権の財政政策をめぐる不安で、今年の9月には1.03ドル台まで史上最安値を更新しました。

今年のポンド

今年は為替相場全体でドル高・円安となり、ポンドドルは下落した一方で、ポンド円は堅調な動きとなりました。イングランド銀行(BOE)はインフレ抑制のため、2021年12月から利上げに踏み切り、11月会合まで8会合連続で利上げを実施し、政策金利を0.10%から3.00%まで引き上げました。

ポンドドルは年明けの1.37ドル半ばを高値に下落が継続しました。9月にはトラス新政権が打ち出した減税を柱に打ち出した経済政策が金融市場の不信をかい、英国債やポンドが急落し、ポンドドルは一時過去最安値となる1.03ドル半ばまで下落しました。

変動幅が大きい通貨 ポンド chart 1

円全面安の流れを受けてポンド円は買いが先行するも、9月のトラス政権の減税案を背景としたポンド急落の局面では一時148円後半と今年の安値をつけたが、政権交代によるポンドの買い戻しを受けて、10月には2016年2月以来の高値水準となる172円台に上昇しました。

変動幅が大きい通貨 ポンド chart 2

本記事は2022年11月12日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。

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