米国株10月月間回顧
羽土 美幸
この記事の著者
国際金融情報部 アナリスト

富山県出身。国内証券で株式等の営業、仏系証券でポートフォリオ分析、転換社債、エクイティ・デリバティブの分析・開発・営業などを担当。

2014年からDZHフィナンシャルリサーチにおいて米国株式、金融市場レポート編集、海外ETF業務を担当。

為替の仕組み


10月の米国市場では、ダウ平均が1164.98ドル高(+2.51%)、S&P500が2.27%高とともに6カ月続伸し、ナスダック総合は4.70%高と7カ月続伸となりました。

例年下落することが多い10月としては異例の好調月となりました。年初来では、ダウ平均が11.80%高、S&P500が16.30%高、ナスダック総合は22.86%高となりました。

上旬は、政府機関の一部閉鎖が続き経済への悪影響が懸念されましたが、AI関連株の上昇が支援となり、S&P500とナスダック総合の堅調が続きました。

中旬はトランプ米大統領が中国のレア・アース輸出規制を理由に、中国からの輸入品に対して大幅な関税を課す方針を発表したことで米中貿易摩擦懸念が強まり、ハイテク株を中心に利益確定売りが強まりました。

しかし、トランプ米大統領がその後、中国との関係は良好だと発言したことで米中貿易摩擦懸念が和らいだほか、発表がスタートした第3四半期決算が総じて良好だったこと、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長などのFRB高官のハト派的発言を受けた利下げ期待が支援となり、ハイテク株を中心とした下落は一時的でした。

下旬は米中貿易摩擦懸念が和らいだことや、米9月消費者物価指数(CPI)が予想を下回る伸びにとどまったことで利下げ期待が高まったことが支援となりました。

ダウ平均は月初から連日で史上最高値を更新後、10日に9月末日で約2%下落しましたが、21日に再び史上最高値を更新すると、下旬もほぼ連日で史上最高値の更新が続きました。S&P500とナスダック総合も月初と下旬にほぼ連日で取引時間中の終値の史上最高値を更新しました。



10月中旬からスタートした第3四半期決算発表はS&P500採用の302銘柄が発表を終え、そのうち85%の256銘柄で調整後一株当たり利益が市場予想を上回りました。

半導体およびロボット工学向けテスト・メーカーのテラダインは予想を上回る決算や強い見通しが好感され月間で32.05%高と急伸しました。建機大手のキャタピラーとロボット手術機器のインテューイティブ・サージカルも予想を上回る決算を発表し20%超上昇したほか、時価総額上位のアルファベットとアマゾン・ドット・コムも好決算を発表し、それぞれ15.67%高、11.23%高となりました。

一方、利益が予想を大幅に下回ったフィサーブが月間で48.27%安と急落し、決算やガイダンスが嫌気されたアレクサンドリア・リアル・エステート、F5ネットワークス、モリナ・ヘルスケアも20-30%安となりました。



S&P500の11セクターは6セクターが上昇、5セクターが下落となりました。

騰落率上位はITが6.2%高、ヘルスケアが3.5%高、一般消費財が2.4%高、公益が2.0%高、コミュニケーションが1.7%高となり、資本財も0.4%上昇しまし。

上昇率トップのITと2位のコミュニケーションはともに7カ月続伸。年初来でもITが29.3%高とトップ、コミュニケーションが25.8%高と2位となりました。

一方、騰落率下位は素材が5.1%安、金融、不動産、生活必需品も2%超下落しました。



ダウ平均採用銘柄は、10月月間で15銘柄が上昇し、15銘柄が下落しました。

上昇率トップのキャタピラーは、AI向け大規模データセンター建設需要の高まりを追い風に売上高と利益が予想を上回り、株価は月間で20.98%高となりました。

AIトレードの中心銘柄のエヌビディアも8.53高となり、初の時価総額5兆ドル企業となりました。

一方、ディフェンシブ銘柄のベライゾンが9.58%安となり、ナイキ、ボーイング、ホーム・デポも6-7%安となりました。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2025年11月11日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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