• Weekly Report(5/13):「ドル円、パウエルFRB議長発言や米4月CPIで方向感を見定める展開に」
    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は5月6 日週に3.13円と、その前の週の8.37円から縮小した。週間ベースでは、反発。4月29日と5月1日(NY時間午後4時過ぎ、日本時間5月2日の午前5時過ぎ)、約9兆円もの大規模介入観測に伴う急激な下落の反動で、米重要指標を予定しないなか、買い戻しが入った。植田日銀総裁や4月25~26日開催の日銀金融政策決定会合の「主な意見」で、早期追加利上げや国債買い入れ減額に関する指摘があったものの、影響は限定的だった。
    • とはいえ、今後については日銀金融政策決定会合の「主な意見」で、「金利のパスは、市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性」との文言を確認したほか、内閣府からの意見として「世界経済の不確実性や円安による家計購買力への影響には注意が必要」と明記されていた。岸田政権として、一段の円安を望んでいない姿勢が示唆されたと言えよう。6月に取りまとめとなる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」でのレパトリ減税導入を含め、政府・日銀が一枚岩となって、円安是正に取り組む可能性について、留意しておきたい。
    • 今週は14日の米4月生産者物価指数(PPI)やパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演、15日の米4月消費者物価指数(CPI)や米4月小売売上高を受け、ドル円が上昇トレンドへ向かうのか否か、方向感を試しそうだ。
    • テクニカル的に、ドル円は強気のパーフェクト・オーダー(21日から200日など移動平均線が全て上向き)を維持する半面、三役好転が消滅し強い地合いに陰りがみえてきた。前週、ドル円が買い戻されたものの4月高値と5月安値の半値戻しに当たる156円を回復できず、トレンド分析指標のDMIのうちADXが5月10日に32.71へ低下し、方向感に乏しい点は気掛かり。4月29日と5月1日(日本時間の5月2日)に約9兆円もの介入が行われたと推測され一部で介入限界説が聞かれる半面、根拠に乏しく、ここから一気に買い上げられるか不透明感も漂う。
    • 以上を踏まえ、今週のドル円の上値はボリンジャー・バンドの2σがある157.60円、下値は足元のサポートとなっている心理的節目の152円と見込む。

    1.為替相場の振り返り=ドル円、日銀がタカ派へ傾斜も介入観測を背景とした急落の反動で155円回復

    【5月6日~10日のドル円レンジ:152.82~155.95円】

    (前週の総括)

    ドル円の変動幅は5月6 日週に3.13円と、その前の週の8.37円から縮小した。週間ベースでは、反発。4月29日と5月1日(NY時間午後4時過ぎ、日本時間5月2日の午前5時過ぎ)、約9兆円もの大規模介入観測に伴う急激な下落の反動で、米重要指標を予定しないなか、買い戻しが入った。イエレン財務長官が5月4日、「比較的短期間にかなり動いた」と述べつつ、「こうした介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される」と付け加えるなか、介入をけん制したとの思惑も買い戻しにつながったとみられる。

     5月7日、岸田首相と会談した植田日銀総裁が「最近の円安については日銀の政策運営上、十分注視していくことを確認させていただいた」と発言、4月26日の日銀金融政策決定会合後の記者会見で、足元の円安が基調的インフレへの影響として無視できる範囲内かとの質問に「はい」と回答したが、その火消しに動いた。5月8日も、衆院財務金融委員会で、「過去の局面と比べて為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている」と言及。同日に行った講演でも「為替の変動を「経済・物価に影響を及ぼす重要な要因」だと指摘し、動向を注視していく考えを示した。加えて、日銀金融政策決定会合後の会見で発言に沿い「見通しに沿って(可能性が)高まっていけば、緩和度合いを調整していくことになる」とも言及したほか、国債買い入れの減額が適当と述べた。

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